ありふれた日常を兄と妹、時々母に
まず初めに本作品を開いてくださり、ありがとうございます。
R15というわけではありませんが、人によって不快な文章が見受けられることが無きにしも非ずといったところでしょうか。
短編は初めてな為、オチが薄いのでそこは寛大な目で見ていただければと思います。
私の作品が初めてな方
◇の部分で視点が変更しているので注意くださいませ。
ではごゆっくりどうぞ
「起床!!」
目を見開き、布団から出る。
ふむ、6時ピッタリとは完璧じゃないか。
我ながらすばらしい。
私がこのような時間に起きたのには二つ理由があるのだ。
「ふむ、まだ妹は起きていないようだ」
昨日、妹の就寝時間は23時09分22秒083(以下略)。
今までの統計から11分57秒225(以下略)遅い時間に寝たようだ。
お肌に悪いぞ、妹よ。
よって妹の起床時間は今までの平均から計算し、07時01分42秒508(以下略)になると思われる。
「だがしかし!!平均から取ったのでは起床時間が早まる危険性がある!!」
よってこの時間帯に起きたのだ。
それに妹が寝ている判断材料はまだある。
「私は妹の衣擦れの音ならば壁を挟んだとしても500mは余裕で判断が可能なのだよ!!」
・・・私は一体誰に向かって説明しているのだろうか。
「まぁ、そんなことはいい。妹が寝ているということは・・・ふっふっふっ」
第一ミッションが進行可能ということ。
すなわち、『最近ほっぺたをぷにぷにさせてくれないので寝ている間にぷにぷにしよう作戦』の発令だ!!
「ふっふっふっ、待っていろ私の天使よ!!」
私は足早に部屋を出る――前にしなくてはいけないことを思い出した。
「おっと、忘れていた。可愛い我が妹に会うのだ。身嗜みはきちんとせねば」
愛する妹にだらしが無い姿など見せれるものではない。
髪をセットし、学生服を身につけ、ネクタイを締める。
「ふむ、ネクタイは緩めていれば直してくれるだろうか?」
妹が背伸びをし、ネクタイを直してくれる姿を頭の中に思い描くと、それは何ともすばらしいことである。
しかし、私はあの風光明媚な妹に相応しくてはならない。
よってこの案は血の涙を流すような気持ちで却下だ。
「完璧だ」
姿鏡で最終確認をする。
勿論、妹に相応しき男がそこにいる。
「いざ参らん妹の部屋へ!!」
私は足早に尚且つこっそりと妹の部屋に向かう。
妹の部屋は私の部屋から右斜め前である。
直線距離にして5mほど。
音がしないため妹が起きている様子は無い。
「よし!!」
最近フランス語を勉強しているせいか思わず出てしまった。
・・・4m、・・・3m、・・・2m、・・・1m。
ドアノブの音で起きないようにゆっくり回し、中に顔を覗かせる。
「・・・お邪魔しま~す」
「おはよう、兄さん」
「ガッテム!!」
なんてことだ!!
妹は椅子に腰掛け、本を読んでいた。
「はぁ~、やっぱり何か企んでいたんですね・・・」
「だってだって!!最近妹が冷たいんだもん!!」
「思春期なんで当然でしょう・・・」
やれやれと首を振る妹も可愛い!!
「可愛い!!」
「うるさいですよ、兄さん」
「妹冷たい・・・」
妹は本を閉じてこちらを向く。
妹の可憐さを後世に残すにはどうすればよかろうか。
「ふむ、いっちょノーベル賞でも取って妹の愛くるしさを世間に知らしめるか」
「やめてください。兄なら本当に取れそうなんで洒落になりません」
妹がそういうなら仕方ない。
後で画集ぐらいは作るとしよう。
それなら大丈夫なはずだ・・・たぶん。
「それより兄さん」
「何だ妹よ。部屋に忍び込んだのは謝ろう」
「それはいつものことなのでもういいです。それより今日は兄さんが食事当番でしたよね?」
我が家は妹と私の食事当番制だ。
一週間ごとに交代している。
「そうだが?」
「料理・・・失敗しました?」
「そんなわけがなかろう」
妹に栄養の偏りがあってはいけないので、今日の朝食はご飯に焼き魚、味噌汁にほうれん草のおひたし、ひじきの煮物も用意して、デザートにヨーグルトにりんごも完備する予定である。
早起きした理由のもう一つはこれだ。
「でも、なんか臭いません?」
鼻をヒクつかせる妹可愛い!!
というよりも確かに何か臭う。
「・・・もしや」
「・・・兄さんも気が付きました?」
「・・・朝からあれはきついのだが」
「私もですよ・・・」
私と妹は覚悟を決め、一階に下りていく。
一階に下りるとその臭いは鋭さを増し、鼻を捻じ曲げ、目から涙が出てくるほど異臭である。
私たちはこれを知っている。
恐る恐るキッチンに顔を覗かせると―
「~♪~♪」
鼻歌を歌いながら魔女のように悪臭漂う鍋をかき回している母の姿があった。
「母よ・・・」
「あら、おはよう。どうしたの二人ともそんなに泣いて!!」
「いや、にお・・・なんでもない。それより今日は早いではないか・・・」
「そうなのすごく早く目が覚めちゃってね、久々にご飯作ってあげようと思ったの」
「そ、そうなんだ・・・」
こう言っては何だが、母は料理音痴だ。
出てくる料理の殆どが食べれた記憶が無い。
更に母はそのことを自覚していない。
つまり、料理音痴の味音痴だ・・・。
「そ、そうだ!!私は今日日直だった気が・・・」
「え・・・食べて・・・くれないの・・・?」
涙を溜め、上目遣いの母。
そういうのは父にしてあげて欲しい・・・。
「・・・」
「食べてくれないの・・・?」
「気のせいだったようだ・・・」
「そうよね!!」
「兄さんの意気地なし」
妹が後ろから小突いてくる。
「し、仕方ないではないか。妹は母に勝てるのか?」
「・・・ごめんなさい。無理です」
母の凶器をどう受け止めるか。
悩んだところで答えは出ない・・・。
「覚悟を決めるしかないようだ」
「兄さん、頑張って!!」
「・・・妹よ」
「何ですか?兄さん」
「椅子に座るんだ」
「・・・はい」
「~♪~♪」
地獄が刻一刻と近づいているようだ。
母の鼻歌が恐怖の足音に聞こえるのは私だけではないだろう。
「出来たわよ♪」
ダイニングテーブルに並べられたのはお椀に入ったスープだ。
香りは悪臭(生肉の臭いがする)。
見た目は真っ黒(深淵である)。
「・・・母よ」
「何かしら?」
「お母さん。なんですか、これ」
「見て分からない?」
わ・か・る・か!!
「・・・教えてくれないか?」
「見ての通り味噌汁よ♪」
「・・・」
もう一度言おう。
わ・か・る・か!!
「へぇ~・・・そうなんだ・・・味噌汁なんだ・・・」
やばい、妹が遠い目をしている!!
何とか回避できないか!?
「ん~♪おいし~」
・・・母は相変わらず味音痴だ。
「兄さん・・・」
「・・・何だ妹よ」
妹が耳元に小さな声で呟く。
あぁなんと可憐で美しき声なのか。
これを録音して寝る前に流すことは出来まいか。
「一生のお願いを発動してもいいですか?」
「・・・内容による」
「私のも食べてください」
私を食べてくださいならどれだけよかったことだろうか。
いや、兄妹だから何もしないが・・・。
「幾ら妹の頼みであったとしてもそれはむr・・・母に失礼であろう?」
「・・・一口だけ食べます。あ~んしてあげますよ?」
くっ、なんと魅力的な提案か!!
「・・・だ、だめだ」
「私の食器で」
「よし乗った!!・・・はっ!?」
「・・・変態ですね。ではお願いします」
「仲が良いわね~、ふふふっ」
母は大半の内容を聞いていなかったようだ。
私が妹との約束を違えるなど在り得ない。
故に食べると約束してしまったものは仕方なし。
しかし―
「間接キスになるが?」
「・・・はっ!?」
気づかないほど追い詰められた妹可愛い・・・。
「洗います、勿論」
「洗わなくてもよいが?」
「ド変態ですね」
「お椀は洗えんが?」
「・・・」
反応がないとお兄ちゃん泣いちゃうぞ?
そんなことを考えたところで妹に伝わるはずもなく。
妹が箸で具を取り出す、そして―
「・・・」
「ど、どうだ?」
「・・・きゅぅ~」
「妹~~~~~!!!!!!」
―倒れた。
結局私は妹にあ~んをしてもらえず、妹が口をつけた部分を避け、妹の分まで飲み干したのであった。
妹の嫌がることはしない主義なのだ。
ちょっとぐらいご褒美があってもいいと思うが・・・。
その後、学校でお腹が痛くなったのは仕方のないことであろう。
妹は何とか無事だったようで、それが何よりの救いである。
◇
「起床!!」
扉の外からくぐもった兄さんの声が聞こえてきます。
さすがにあんな大声では私が寝ていたとしても起きてしまうでしょうに・・・。
「兄さんは馬鹿なんでしょうか・・・?」
地が馬鹿なんでしょうね・・・。
兄さんは正直、秀才です。
私は兄さんの努力を知っているので天才という言葉で表したりは出来ません。
勉強も運動も校内一。
顔については家族なので何ともいえませんが、周囲の友達からは大人気です。
「でも・・・」
「・・・待っていろ私の天使よ!!」
私が好きすぎるんですよね・・・。
だって兄さんの努力の原動力は―
「完璧な妹に相応しい兄であるためには努力を惜しまない!!当然であろう?」
らしいのだ・・・。
私はそこまで完璧ではないのに。
重度のシスコン、これが兄さんの本性。
というか学校でも変わらないから裏表の無い人なんだろうけど・・・。
「はぁ~、兄の愛が重い・・・」
いや、確かに助かる部分はあるのだけれども。
例えば、勉強を教えてもらったり、私が風邪を引けば家事全てをしてくれたり。
・・・告白された時、兄を盾に使った事もありますし。
それを本気で嫌がっていないあたり私も・・・考えるのはやめましょう。
「・・・お邪魔しま~す」
こうやってこっそり部屋に入ってこようとするのが玉に瑕の兄です。
「おはよう、兄さん」
「ガッテム!!」
ガッテムって・・・。
「はぁ~、やっぱり何か企んでいたんですね・・・」
「だってだって!!妹が冷たいんだもん!!」
・・・だもんって。
「思春期なんで当然でしょう」
因みに昨日何か企んでいるのは予想できました。
兄さんは私に対してやましい事があればちょっとした癖が出ますし。
学校で休み時間全て仮眠に費やし、睡眠時間を調節したのです。
えっへん。
「可愛い!!」
何ですかいきなり・・・、まぁいつものことですけど。
「うるさいですよ、兄さん」
「妹冷たい・・・」
よよよと崩れる兄さん。
今日もネクタイはきっちり締まっている・・・。
ちょっとは着崩れていてもいいのに・・・。
「ふむ、いっちょノーベル賞でも取って妹の愛くるしさを世間に知らしめるか」
何を思ってそう考えたんですか・・・。
「やめてください。兄なら本当に取れそうなんで洒落になりません」
本当に洒落にならない。
たぶん私が頑張ってといえば普通に取りに行くでしょう、この人は。
そんなことを考えていると何だか異様な臭いが私の鼻を掠めます。
「それより兄さん」
「何だ妹よ。部屋に忍び込んだのは謝ろう」
「それはいつものことなのでもういいです。それより今日は兄さんが食事当番でしたよね?」
先週は私だったので今週の当番である兄さんが料理をするはずなのですが。
兄さんがこんな臭いの料理を作るでしょうか?
というよりも先ほど起きたばかりですし。
「そうだが?」
「料理・・・失敗しました?」
「そんなわけがなかろう」
完璧な兄さんは何でも出来ます。
正直ちょっと女として悔しい気分です。
「でも、なんか臭いません?」
くんくんと鼻を鳴らし、臭いの原因を探ります。
「・・・もしや」
私はこれに覚えがあるのですが・・・。
兄もこれに気が付いたようです。
「・・・兄さんも気が付きました?」
「・・・朝からあれはきついのだが」
「私もですよ・・・」
あぁ・・・、一週間ぶりに兄さんの料理が食べれると思ったのに・・・。
私と兄さんは覚悟を決め、一階に下りていきます。
だんだんと臭いがきつくなり、涙が出てきました。
兄さんも涙目です・・・。
恐る恐る扉の中を覗き見ると―
「~♪~♪」
―お母さんが料理をしていました・・・。
あれを料理と呼べるのか分かりませんが。
「母よ・・・」
「あら、おはよう。どうしたの二人ともそんなに泣いて!!」
「いや、にお・・・なんでもない。それより今日は早いではないか・・・」
「そうなのすごく早く目が覚めちゃってね、久々にご飯作ってあげようと思ったの」
「そ、そうなんだ・・・」
6時半なんていつも寝ているのに・・・。
三ヶ月前の記憶が思い出されます。
確かそのときは夕食で肉じゃがが出てきたのです。
色は黄色の蛍光色で臭いは洗濯物の生乾き臭がしていたような気がしましたが。
そんなことを考えていると兄が何とか回避しようとしていたようです。
頑張って!!兄さん!!朝食の平和は兄さんに懸かっているのですよ!!
「・・・」
「食べてくれないの・・・?」
「気のせいだったようだ・・・」
「そうよね!!」
「兄さんの意気地なし」
駄目でした・・・。
「し、仕方ないではないか。妹は母に勝てるのか?」
「・・・ごめんなさい。無理です」
よくよく考えてみれば家の中でお母さんに勝てる人っていないような気がします。
お父さんはお母さんにベタ惚れですし、兄さんはこの通りボロ負けですし、私もお母さんにはなぜか逆らえませんし・・・。
「覚悟を決めるしかないようだ」
「兄さん、頑張って!!」
「・・・妹よ」
「何ですか?兄さん」
「椅子に座るんだ」
「・・・はい」
避けられない運命なようです。
兄さんの声がどことなく強張っているような気がします。
「~♪~♪」
暢気に鼻歌を歌う母。
顔色が悪い兄。
寒気がする私。
「出来たわよ♪」
出来ちゃったみたいです・・・。
「・・・母よ」
「何かしら?」
「お母さん。なんですか、これ」
「見て分からない?」
わ・か・り・ま・せ・ん!!
「・・・教えてくれないか?」
「見ての通り味噌汁よ♪」
「・・・」
もう一度言いましょう。
わ・か・り・ま・せ・ん!!
「へぇ~・・・そうなんだ・・・味噌汁なんだ・・・」
味噌汁ってこんなに黒くて臭かったですっけ?
あぁ、兄さんの味噌汁が恋しい・・・。
「兄さん・・・」
「・・・何だ妹よ」
こういう時、頼れるのは兄なのです!!
「一生のお願いを発動してもいいですか?」
「・・・内容による」
「私のも食べてください」
これだけは使いたくなかったんですが、今から学校ですし・・・。
ごめんなさい、兄さん。
「幾ら妹の頼みであったとしてもそれはむr・・・母に失礼であろう?」
「・・・一口だけ食べます。あ~んしてあげますよ?」
もう一押し!!
「・・・だ、だめだ」
「私の食器で」
「よし乗った!!・・・はっ!?」
「・・・変態ですね。ではお願いします」
「仲が良いわね~、ふふふっ」
今日だけ特別ですよ?
何時もなら我慢してでも食べますよ?
本当ですからね?
し、仕方なくですからね?
「間接キスになるが?」
「・・・はっ!?」
・・・指摘しないでください、気が付かなかったんですから。
「洗います、勿論」
「洗わなくてもよいが?」
「ド変態ですね」
「お椀は洗えんが?」
「・・・」
し、仕方ないです、使わせてあげましょう。
「・・・」
「ど、どうだ?」
喉にどろりと流れるのが分かるぐらい固形物っぽいです・・・。
それに空気は吐く度に胃から漏れ出る臭いに私は―
「・・・きゅぅ~」
「妹~~~~~!!!!!!」
兄の声が遠くで聞こえます・・・。
あぁ、さようなら兄さん。
また後で・・・ガクッ。
その後兄さんに背負われ学校まで行きました。
死ぬほど恥ずかしかったのですが、ちょっとだけ兄さんの背中の温もりを感じる時間があったのはお母さんのおかげでしょうか。
・・・料理は二度とご免ですが。
◇
「~♪~♪」
あの子達にいっぱい栄養つけさせなくちゃ!!
お母さんがんばちゃうぞ☆
「味噌と~♪納豆と~♪牛肉と~♪混ぜてこねて~ぐ~るぐる♪」
あの子達が喜んで食べる姿が目に浮かぶわ♪
きっとお母さんありがとう!!って言ってくれるよね?
あっ!!でもでも!!
味見しなきゃ完璧かどうか分からないわよね。
「ん~♪完璧!!」
我ながら最高においしい味噌汁の出来上がり!
今までで一番の自信作よ!!
「後はこの匂いに誘われた可愛い子供達が起きてくるのを待つだけね。ふふふっ」
私は頑張っているからあなたも単身赴任頑張ってね。
愛しているわ、あ・な・た(はぁと)。
ここまで見てくださった勇者様!!
ありがとうございます!!
執筆総時間4時間ですが、こんな感じになりました。
イメージと違った?
ふざけんな?
ふふふ、あとがきは私のターン!!
そしてずっと私のターン!!
そんな攻撃効きませ~ん(うぜぇ
まぁそんなことは置いといて
ファンタジーばっかり書いているとこういう日常系、書きたくなるのですよ。
仕方なし
今回、短編という形で書かせていただきましたが
もし、面白い!!と感じてくださった方がいらっしゃいましたら(いるかどうか分かりませんけど・・・
感想や活動報告、ツイッターで「長編化希望!!」と書いて頂けると
色々、考慮いたしまして、長編化しようかと思っております(まぁ増えない
もしそのような希望がありました場合、兄と妹のお名前を一緒に書いて頂けますと
採用させて頂くかも?
まぁそんな感じでいつも見てくださっている方。
初めて見てくださっている方。
感謝感謝のあめあられでございます。(古い?
読者様の心にほんわかした感情を芽生えさせる事が出来たのなら幸いでございます。
感謝を胸にではでは~