1. 勘違い系田口兄弟
初投稿です。よろしくお願いします
スカートと言う名の布の腰巻は膝上10センチ。
目立たない暗い茶色の髪は肩につくくらいで内巻きにブロー、唇に乗せるのは淡いピンクの色付きリップ。
自然なパッチリおめめには軽くブラウンのシャドーを乗せて。出来るだけ高校生らしさを全面に出し、しかしながらケバさは見せない清潔感のある女の子。
これが現在高校2年生の私、藤代小町である。
……いや、普段はこんな感じではない。
バリバリカラコンを入れて髪だってもっと明るい茶色だし長いし。ぐりんぐりんに巻いてたし。
でも今日からは心機一転だ!
なぜってそれは……年上のお兄さんに恋してしまったからです。
「小町っ、来たよ」
ヒソヒソ声でお知らせしてくれたのは親友の田中マリ。
そう。今日は一世一代の告白の日!
心機一転イメチェンを決めてから3週間後の今日、やっと決心がついたのだ。
「わ、わかってるって〜、髪ぐしゃぐしゃになってない?」
「大丈夫だから、早く」と言って背中を押される。
建物の角に隠れていたので、タイミングよく出てきた”その人”の真ん前に出される形となった。
バクバク心臓がうるさい。ちゃんと清楚系な感じに見えるかな……
勢いよく出てきてしまい引っ込みがつかなくなったのでええいと
「あのっ、好きです!」
告白したのである。
恥ずかしくて下を向いていた頭を上げるとすっごくびっくりした顔をした男の人が見えた。
そう、私の好きな人。サラリーマンの田口さん(35)です。
「はぁぁーーーーさいっあく」
一大イベントを終えた私とマリちゃんは近くのファストフード店で大反省会をしていた。本当に大反省だ。
あの後、顔を上げて見た田口さんはみるからにすっごくめんどくさそうな顔をしていた。
「あの、人違いですよ」
「へ?」
「後ろ歩いてる高校生の子でしょ、君が告白したかったのは」
と言ってその通り後ろを歩いていた高校生の手を引っ張って私の手と繋げた。
「おっと、めっちゃ時間取られたな。じゃあ、お幸せに」と言ってそのままどこかに消えてしまったのである。
「待って田口さーーーん!」と大声で叫んだものの、田口さんには聞こえてなかったようだ。
「いやぁ、しかし田口さんも一筋縄じゃいかないねぇ」とマリちゃん。
「俺も田口なんすけど。」
と先程まで手を繋いでいた青年。そうなのだ。こいつも田口なのだ。
びっくりなことにこの不機嫌少年は田口さんの弟さんなのだそうだ。
「兄貴になんか用っすか?」と言ったところで、立ち話もなんだからとりあえず店入ろう!と強引に連れてきたのだ。
「で、もう9時なんすけど。いつまで拘束する気ですか?俺学校あるんですけど。」
「え!?学校!?今日土曜日じゃん!」
「一高はそんな甘い学校じゃないんですよ二高生の皆さん。」
落ち着いて見れば田口くんの制服は一高の紺のブレザーだった。
「あ、そうなのかごめんよ。」
なんか若干バカにされてる感じがしたが一高と二高の偏差値のさは歴然としてるし、怒りとかよりも申し訳なさのが勝った。
「まぁ、もう授業始まってるし。いーよ、今日はサボったげる。」
そう言うとポテトを追加注文しに席を立った。
「ど、どどどどうしよマリちゃん!」
「なにがよ。これはチャンスよ!田口さんの弟なら色々情報を聞き出せるじゃん!ほれ、頑張るんだ藤代!てなわけで私はバイトへ行く!」
「ううう嘘でしょマリちゃん!置いてく気!?」
そう言い残して手を振って行ってしまったマリちゃん。そして戻って来た田口(弟)。
「あれ、マリちゃんとかいう人は?」
「ついさっき帰りました。」
ふーんと言ってジュースを啜る。
よく見れば田口(弟)は顔が整っている。
長い前髪を横に流してる軽めの7:3スタイルなのにやぼったくないし、まつ毛も長ければぱっちり二重。パーツの一つ一つがあるべきところに収まっていてまさに造形美…
田口さん(兄)も美しい顔立ちだが、おそるべし田口DNA...田口家は美人家系らしい。
しかし私は田口さん(兄)にしか恋心はない!なぜならおじ専だからだ!
なんて考えていたら田口(弟)がとんでもないことを言い出した。
「で、さっきのやつ、告白?みたいなのの返事。あれ、いいよ。付き合おっか。」
私の手からは掴みかけのポテトが落ちた。