表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

8話 レッドスパイダー

今、盛大に何かが弾ける音がした。

身を潜め中を窺うと、ほのかに血臭がするではないか…。


これは、もしや?


モーラの制止をあの手この手でようやく振りきり、今は月の部屋の前まで来た。

シュバルツは右の腰に帯た剣に手を掛けながら慎重に薄暗い部屋を窺う。


血と肉片にまみれた塊が横たわっていた。


「よかった…」



失敗だ



シュバルツは安堵の息を長々と吐き、ゆるゆると腰を落とした。

あの姿は鎧装着者が初装着に失敗した姿に見える。

月と太陽の部屋に封印されているのは、ソルジャーストーンと言う鎧を召喚するための魔宝石だ。

そもそも、ソルジャーストーンは扱いが非常に難しく、尚且つ大変な危険を伴う為、使用はまさに命懸けだ。

ソルジャーストーンを学も努力も無くいきなり使い、生き急ぎ全身装着を行うと、だいたいはこうなる。

ソルジャーストーンとの親和性も大事だ。

これが低いと装着時に鎧から拒絶され、確実にああなる。

守護の妖精王が選んだと言うからあせってしまったが、何の事はない…。

…あの惨状はどうしようか

神聖なあの部屋をあのままにしておくには忍びない。

モーラではないがソルジャーストーンを回収した後、魔法で焼き払うか…。


剣を抱えてシュバルツは再度部屋を覗き見てみた。



歪に輝く銀色が立っていた。



暗い部屋に産まれた光りの元…血霧を纏わせ、銀の装甲に包まれた立ち姿があった。


「な、なんだと!

あの状態から生還し、全身装着を成功させただと!?」


あの状態で生還した事例をシュバルツは知らなかった。


「し、しかも魔力が上昇をしているでわないか…」


魔力の上昇と比例するように鎧は輝きを増していき、斑に付着していた血肉は蒸発していった。

鎧の輝きが落ちつき、肉眼で視認出来るまでになるまでに、そう時間はかからなかった。


「な、何が、何が起こった…

いや、起こっているのだ?

…いや、ハッキリしているのは」


闇の者がソルジャーストーンを手に入れ、しかも適合してしまった。

このままでは何が起こることか…。

シュバルツの顔にはも早出血の気はなく、冷たい汗が流れるばかりであった。


「一刻の猶予もない…幸い立ち上がってから動こうとしない所を見ると、まだ鎧装着後の最適化ができていない」


ヤルなら今しかない。


「五感が戻る前に片付ける…」


腰の剣に手を掛け、ゆっくりと抜刀。

細身の両刃が鈍く輝く。

刀身に写る自分を見つめ、シュバルツは覚悟を決めた。


「不安分子は速やかに排除する必要がある…全ては民のためだ!」


声に出し、迷いを断ち切るとシュバルツは剣の鞘に飾られた真っ赤な宝石に指を這わせて呟いた。


「敵の肉を喰らえ!レッドスパイダー、カモン」


シュバルツの発声後、鞘に納まっていた宝石が赤く発光し、腰の鞘にも異変が現れた。

鞘の輪郭が崩れ、幾匹もの蜘蛛に分裂し、解き放たれた蜘蛛達はシュバルツの体へ殺到していった。

全身が隈無く蜘蛛で埋っていき、やがて歪な形ながらも、真っ赤な鎧姿となった。

装着(?)が完了し、各部をチェックし終えると、月の部屋を再度慎重に窺う。

銀の装甲を纏った者は腕を動かし、具合を確認しているようだ。



「行くぞ…先手必勝!」


赤く燃えるような光を放つ鎧を纏い、シュバルツは剣を握りしめ、災厄の芽を潰さんと走り出し、距離を一気に詰めると、躊躇い無くその無防備な背中に必殺の剣を突き立てた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ