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6話 家事手伝い

お待たせしました!!


本日も空には雲一つない快晴。


涼やかな風が吹く昼頃。

俺は汗だくになっていた。


汗でベタついた髪が邪魔だ…モーラさんにお願いして切ってもらえないかな?

あれ?ハサミなんてあったかな??

おっと、手がお留守だ。


斧を振りかぶり、柄を握る手に力を込めて……

降り下ろす

ガツン!と手応えがあった瞬間、パッカンと割れる爽快感。

そこそこ慣れた手付きで次の準備に取り掛かる。

あの夜から1ヶ月、毎日の日課の薪割りと十分な睡眠、そして食事。


自分でもわかる…俺の体は回復していっている。

真っ白と言うよりは真っ青だった肌は健康的な色を取り戻したし、骨筋張っていて細い枝のようだった手足は、そこそこ筋肉質に…それは自惚れか。

まぁ、斧を振れるようになった。


「これ!それでは肩を壊すぞ。

薪割りに余計な力は不要と、何度言えばわかるんじゃ?」


そう言って、後ろで注意してくれているのはモーラさんだ。

あの夜、飯を腹一杯に食わしてもらい幸福感と情けなさが一段落した後、やはり俺は異世界召喚をされたのだと言うことを教えてもらった。

誰が何の為に召喚したのかは追々わかるものなんだそうだ。

別に元の世界に未練なんてないが、問題は今後だ…。


「ふん!どうせ行く所なんてないんじゃろ?

…あ~!しょうがないのぉ……居たいだけ居るがいいさ」


モーラさんはぶっきらぼうに言って俺の肩を叩いた。

只の居候では申し訳なくって、仕事をくださいとお願いしたところ…。


「ふむ、そうかぃ…仕事がしたいかぃ。

う~ん……なら、毎日水汲みと、たまに薪割りを頼もうかね」


と言ってくれた日からずっと、後ろでジィっと仕事を見られている。


最初は見張られているのかと居心地が悪かったが…。

それは違うと、人の頭の上でロデオごっこをしている妖精が教えてくれた。


「モーラはね。

ふふふ、ショウが心配で見守ってるんだよ」


と言う事らしい。

頼りないと言う自覚があるだけに、申し訳なさでいっぱいになってしまう。


「そいつを割ったら一息入れようじゃないか!」









お昼のハムエッグサンドに舌鼓を打ち食後のお茶を飲んでいると、おもむろにモーラさんが話し掛けてきた。

「この後お前さんには、もう一つ仕事を頼みたいんじゃが、どうじゃな?」


「な、何でもします!

何しましょうか?」


恩人の珍しい頼みだ。

何だろうか?


「そんなに気張らなくても良いよ。

なに、地下室の掃除を手伝って欲しいのさ。

もぅ、何年も放置してしまっとるでな、この際じゃ、男手がある内にやってしまおうかなと思っての」


「お安いご用ですよ!」


俺は即答して腕捲りをし、やる気をアピールしてみた。


「あ~ぁ…安請け合いしちゃって!」


パフの意味深なこの一言は敢えて無視する。



この時、モーラとパフは意味深な視線を交わすが、ショウは見ていなかった。



「じゃあ、用を足したら早速取り掛かろうかね!」


あ、この一ヶ月でわかったことがある。


「じゃ、お花積みに行って来ます」


「は、花??なんじゃいきなり?」


「モーラ!お花積みってのはね…ゴニョゴニョ」


「あぁ…って!

さっさと行って来んかい!バカモン!!」


彼女にはこの手の冗談が通じない…とりあえずトイレに行ってこよう。









モーラさんが向かった先は、地下室へ降りる階段や扉ではなく玄関…外だった。

そして、外側から玄関扉のドアノブを弄っている。


「モーラさん、地下室の入口は外にあるんですか?

それとも掃除道具を取りに行くんですか?」


「うんにゃ?この扉から地下へ行くんじゃ」


モーラさんはドアノブを引っこ抜くと、別のドアノブを差し込み固定金具を嵌めると勢い良く開け放った。


「は?え?…えぇ??」


そこは、石造りの部屋だった。

なんで?あれ?なんで?うーん…うわっ!埃っぽい……。

じゃねぇ!


「な、なん、何がどうな…」


「おや?

見せるのは初めてじゃったかの?」


「これは一体何が…?」


「空間の入れ替えだよ。ドアノブを換えると館の中が入れ替わるの」


狼狽える俺に、ドウドウと頭の上でパフが説明してくる。


「て、手品なのか?ニンジャカラクリか??」


「テジナ?カラクリ??

全然違う、違うよ。

これも立派な魔法だよ!」


なぜか得意げに立派な胸を張るパフさん。

いいへ、それはケフィ…ゲフン!

バカやってる場合じゃない!


「マホウってあの魔法か?」


「どの魔法の事を言っとるのか知らんが、立派な転移魔法具を用いた魔法じゃわい」


ど、ど●●●ドア……マジスカ。


成る程、汚い店内が手を洗う僅な時間で綺麗な食卓に変わるカラクリがこれか!


「すっげー!!

魔法!流石異世界!!」


「モーラは空間の魔法が得意だからね~」


「煩いのぉ。

さっさと入らんか!」


急かされるように中に入ると石造りの部屋に2つの立派な扉が並んであった。


一つは赤い鉄製の扉で、もう一つは緑色をしたこれまた鉄製扉だ。


「これ、お前さんや」


並んだ扉を見ていたら、モーラさんに呼び止められた。


「ワシは外で草むしりに興じるでの、悪いがここは任せたぞ」


「じゃあ、掃除道具を持ってきます」


「いや、その扉の奥にある″モノ″を外に出しとくれ。

扉の鍵はどれも外れておるでな、錆びて開け辛いかもしれんが、好きな扉から始めるがいい」


「わかりました。

…中には何が入ってるんですか?」


俺の質問にモーラさんは肩越しに振り返り言った。


「なに、非売品のガラクタさね。

…パフィリカ、頼んだよ?」


「うん。おまかせあれ♪

じゃあ、やっちゃおうか!」



パフは張り切って俺の頭から飛び上がり、あの扉と扉の間で滞空している。


「どっちから行こうか…」


「ショウの好きな色はどっち?」


「俺は…うーん。

まぁ、赤かな?」


「え!?

赤なの?」


何かおかしな事を言っただろうか?

パフは動揺したように上下に揺れだした。


「パフは嫌いか?…赤?」


「い、いや…そうじゃないけど」


何だろうか?いつにも増して歯切れが悪い。


「じゃ、開けようか」


と言って俺は緑色の扉に手を掛ける。


「あ、え?緑の扉??」


「好きな色は最後に取っておくのさ」


ドアノブを引くと耳障りな金属音が鳴ったが、普通に戸が開いた。

「ふむふむ…月の部屋に入れた。

と言う事は………」


「ここは月の部屋って言うのか?」


「ふみゅ~……」


パフは再び俺の頭の上に乗るとブツブツ言い出して思考の彼方に行ってしまった。


中から流れて来るカビ臭いに、顔をしかめながら扉を潜る。

中は六畳程の空間があり、天井は低い。

部屋の中央には宝箱が置かれていた。


「へ?」


宝箱である。

RPG等でよくある木製の木箱だ。

大きさもそこそこあり、かなりの重量ではなかろうか…。


「あれ、引き摺って行って大丈夫だろうか?」


「あ、箱の中身を外に出して!

多分あれにも鍵は掛かってないから大丈夫大丈夫!

さー!一気に開けちゃおう」


「鍵が掛かってない?

…いくらなんでも無用心じゃね?

てか、箱の中身は一体なんなんだ??」


「さあ?」


マジスカ…。

俺はおそるおそる箱に手を掛ける。

だってここは異世界だぜ!

ミミックモンスターだって普通に居そうじゃんか?

覚悟を決めて箱をそっと開ける…。

確かに鍵が掛かっていなかった。きぃっと、軋んだ音を立てて箱が開く。

はたして、その中身は………。



次回

やっとこさ変身予定ですが…挿し絵ってどうやって張ればいいのか?

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