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3話 見る者見られる者

全身が蕩けていくような、感覚や意識が広がっていくような…そんな感じ。


俺は走馬灯を見ていた。


レトロな映画のテープみたいに、一コマ一コマ流れていく…


幸せだった日々…裕福ではなかったが、両親がいて、友達の輪の中にまだ居た時代の映像。


あぁ、とうさん…かあさん…よっしーに、まえすけ…


優しいシーンは、あっという間…一瞬で終わる。


終わってしまう…幸せな日々…





俺の地獄が始まる


その映像は記憶がある…知っている、覚えている。


不幸の始まり…許しがたい記憶





両親が死んだ日…






そ、ソレだけは!ソレだけは見たくない!



友達との遊び帰り…やけに真っ赤な夕日が空を朱に染めていた…。


遅くなってはいけない…俺は家路を急いでいた。

道中、ご近所のおばさんががんばれと手を振ってくれた。

この角を曲がれば家は直ぐだ!


ヤメてくれ!見たくない!見たくないんだ!!


俺は目を閉じようとするも、目蓋が無いかのように、目の前の映像は途切れることなく俺の中に流れてくる…。


走る、走る、走る…玄関が迫る…




あぁ…ヤメてくれ…




血溜りに沈み、背中から刃物を生やしたとおさんが玄関で事切れていた。




「と、とうさん?…とうさん!!」




ゆすってもおきないとおさん…ゆするとさらにちだまりはひろがっていく…



「うぁああああ!!!!…かあさん?かあさん!!」



急げ!!早く!台所だ!急げ!急げ!!!



かあさんはいた…でも、くろいけものがおおいかぶさっている…

けものは、かあさんのうえでうごめうている…



何故、何故助けない!何で動こうとしない!!



うごめくけものは、みぎてで、かあさんのくびをしめあげている

かあさんは、けもののてをりょうてでつかんで、もがいてる…あしをばたばたさせてくるしそう…

けもののひだりてには、ぼくと、とおさんがぷれぜんとした、ほうちょうをつかんでいた



「待て!やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!!」



ひだりてのほうちょうは、かあさんのむねのなかにつきささる、ちが…ちがふんすいのよう……




かあさんのてあしから、ちからがぬけていく…





かあさんはうごかなくなった…





「ぐ、ぐぎぎぎぎぎ!!!ぐ、おぉ…おぁあああああああ!!!!!!」






映像は一旦切れる…


それからの映像はどうでもいいものだった


ヤクザな叔父の毎日行われる虐待…タバコの火、刃物…消毒に焼酎をかぶる俺


クラスメイトからのいじめ…集団リンチ、公開処刑、汚い物を見るような先生等の眼。


友達に裏切られた瞬間や優しかった大人達は、叔父を恐れ…俺を見るなり足早に去り、視線を合わせなくなった…


寂しさのあまり両親の墓の前で夜を明かしていたあの日々




そして人生に終止符を打つべく、学校の屋上に上がり…蜘蛛の糸を掴んだ映像…………



「………」




今は真っ白な映像が今は流れている…

俺以外、誰もいない白い世界…なのに何故か視線を感じる…深いではない…


「たいへんだったね…ごめんね、嫌なこと思い出させちゃったね…」


姿は見えないが、鈴の音のような、澄んだ綺麗な声がした…



「もぅ、苦しまなくていいんだよ?」



頬に暖かな雨が降る…



「パフがショウを守ってあげる!ずっと!一緒にいたげるから」



真っ白な世界は次第に色をもち、暖かな光りに俺は包まれていった……



意識が浮上を開始する…



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