OA-3
本を読んでる私のところに皐月が来るのはなにも朝に限った話ではない。
放課中でも、よく私の机の前に来る。
けれど、これといって用事もなく、何を話すでもなく私が本を読んでるのを眺めてるだけのことも多い。
そんな風にしていると、皐月に用事のある子は私たちのところに来ることになる。
その大部分が皐月のことを、皐月ちゃん、とかさっちゃん、とか呼んでいるのを見て私もそうするべきなのかな、なんて漠然と思い始めていた。
その日の朝も、いつも通り、本を読みながら皐月に挨拶して、いつも通りに皐月が私のところに来ていた。
「ねぇ、葵さん…じゃない、葵ちゃんって呼んでもいい?」
「んー?
全然構わないけど?」
「じゃあ、そうするね。」
これは、ちょうどいい。
「じゃあさ、私も皐月ちゃんって呼んでもいい?」
「えー。それは嫌だ。」
何故ですか。
「じゃあ、さっちゃん。」
「それもほかの子と一緒じゃない。
葵ちゃんだけの呼び方にしてよ。」
どういう要望ですか…それじゃあ…
「じゃあ、ツキ。」
「え?」
「皐月、だから縮めてツキ。」
「なにそれ。おかしいのw」
「なにってツキがほかの子と同じ呼び方が嫌だっていうから必死に考えたのに…」
「はいはい。ならそれでいいよ。」