OA-2
その時は、誕生日一緒なんだーそんなこともあるんだねーで終わった。
友人たちとはクラスが分かれたから、また私は授業が始まるまでは読書で時間をつぶすようになっていた。
けれど、それもあれ以来少し変わってきている。
近くを通りすぎる気配に、読書から意識を引きもどされる。
「皐月さん、おはよう。」
顔を本からあげて見上げた予想した通りの相手に、そう告げて、また本に目を落とす。
おはよう、と返す声を聞きながら、キリのよいところまで読んでしまおうと急ぐ。
しばらく机の近くでごそごそしていた彼女は、こっちに近づいて来て私の机の前でしゃがみ込む。
何も言わないのでしばらくほうっておく。
そうすると、机に顎を載せてきて、最後には本を覗き込んできて頭がぶつかりそうになる。
そこまできても何も言わないから、こっちから話すしかない。
「どうしたの。何か用?」
「…ねぇ、何読んでるの。」
「昨日の次の巻。」
「読むの早くない?」
「…だって、行き帰りも読んでるし…」
ここまでで、ようやくキリが付いて顔をあげて本を閉じる。
表紙を無意識に撫でながら、聞く。
「それで、どうしたの?」
その言葉に、皐月は立ち上がりながら私の手を引っ張る。
なされるがままに廊下へ向かう皐月に付いて行く。
「今日の、時間割はなんだっけ?」
「えっと…」
左手で胸ポケットから生徒手帳を取り出して読み上げる。
それを聞きながら皐月は廊下にあるロッカーから教科書やノートを取り出していく。
「あ、そういえば今日音楽もあったんだ。」
途中で私もロッカーから出さないといけないことに気づいて自分のロッカーを開ける。
私のロッカーは一番上で、身長の低い私の目線より少し上に下の段が来る。
上の段に至っては、手を伸ばしてようやく載せたものがとれるくらい。
使わなければいいのはわかっていたけれど、下の段に立てておくと倒れるような薄い教科書は上の段に倒して積んでいた。
で、音楽の教科書は上の段にあって。いつもはすんなり取れるのだけれど…
「あ。」
皐月のために読み上げながら出そう、というのは無謀だったようで引っ張りだすどころか逆に奥に押し込んでしまった。
こうなると上の段の底板を傾けるか板ごと取り出すしかない。
よし、と板と格闘するために気合を入れていると後ろから手が伸びてひょいと教科書を取っていった。
「ほら。」
「あ、ありがとう…」
振り向くと、私に教科書を手にした皐月が。
この身長が恨めしい。