三毛猫、人気者になる
とりあえず、俺の名前が「サクラ」に決まった。何か勝手に決められたが、致仕方なし。名乗る機会があれば(あるのか?)名乗っていこうか。
んで、三毛猫たる俺の名前を決めた後は、みんな夕ご飯を食べて(俺にはシチューが出てきた。めっちゃ美味い!)風呂入って寝た。
そして、エル宅で一夜を明け、今に至るわけだが……。
「サクラ~……」
めっちゃ抱きつかれてます。
「ん~っ……」
こら、スリスリすんな。毛並みが崩れんだろうが。
「エルー? ちょっと手伝ってくれないー?」
「はーい」
お母さんに呼ばれ、タタタッとかけていくエル。
「……」
そして、一人になる俺。元気なやつだなー。
「……にゃ(……はぁ)」
猫になったせいか、すぐに眠気が襲ってくる。
俺はその場で丸まり、寝に入った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「もふもふー」「ふかふかー」「柔らかーい!」「かぁいい……」「お持ち帰りぃ!」
「にゃあ……(なんか騒がしいな……)」
心地よい微睡みの中にいた俺だったが、ゴソゴソと話す声に意識の覚醒を余儀なくされる。
クワッ……と欠伸をして、顔を搔く。なんか流れでやっちゃったけど、なんの意味あるんだろこれ。
「立ったー」「起きちゃったー」「かわいー」「耳たってるー」「持って帰って良いかな……」
それにしても騒がしいな……んにゃ!?
「こっちむいたー」「かわいー」「尻尾ピンってなってるー」「かぁいい……」「お持ち帰りぃ……」
見ると、幼い子供達、およそ10人が俺のことを見つめていた。
「……うにゃ?(何で俺、子供に囲まれてんだ?)」
周りを見ようとするが、四方八方を子供で塞がれていた。
子供達の足の間を通り、包囲網から抜け出す。
「……にゃ?(……外?)」
周りを見ると、昨日ちょろっとだけ見た景色そのままだった。……おっかしいな。部屋の中で寝ていたはずなんだけど……あ!
俺を包囲した子供達の中に一人だけ見覚えがあった。
「あんまり痛くしないようにね。優しく優しく、だよ?」
「「はーい」」
お姉ちゃん貴様かーっ!
俺の心地良い睡眠を邪魔しやがって……許さにゃ!?
いきなり、お姉ちゃんに持ち上げられる。
「猫さんはねー、耳の後ろとか掻いてあげたら喜ぶんだよ」
そう言って、俺の耳裏を掻いてくる。……うわ、たまらんわこれ……。
俺が気持ちよさ(変な意味ではない)に浸っていると、
「あの……触って良い?」
一人の女の子が言ってきた。……さぁ、どうするお姉ちゃん。
「優しくしてね?」
ヒョイッと俺を渡した。
「ありがとー……フカフカ」
顔をこすりつけ幸せそうな顔をする。息を吸ってきたのはちょっと嫌だったけど、まぁ良いか。俺は猫だ。
「えっと……こうかな?」
女の子が耳裏を掻いてくれる。はふぅ……。
「あー! りーちゃんずるいー!」
俺の所に、他の子供達が寄ってくる。私も私もと子供は俺に触れてくる。悪い気はしないな、うん。
「あらあら、猫? 珍しいわねぇ」
騒ぎを見て、近くで井戸端会議をしていたおばさん達も近づいてくる。
「……」
無言で剣を振っていた、全身鎧の騎士も来た。
そして、あっちにこっちに渡され、撫でられ。
気がつけば、俺の周りには三十人以上の人で溢れていた。
俺って人気者?