三毛猫、飼われる
毎回、1000~1500字を目指していきます。
※2018.8.5:本文を校正&追加
さて。やっと着いたか。
気がついたら三毛猫になっていて、いきなり草原から俺のキャットライフはスタートしたわけども。内心とんでもなく動揺していたが、無事順応出来たのは猫になったからだろうか?
兎にも角にも、いきなりなにもない草原に投げ出されたのだから、たまったもんじゃない。人(居るかわからないけど)のいる所に行かなければ。
猫になったおかげで人間の頃よりも聞くようになった嗅覚を活かし、それっぽい匂いがする方へ歩いた。
そして1時間程。明かりが見えた。木製の屋根のようなものも見えるが、体高が低くなった今ではよく見ることが出来ない。
近くに向かうと、1人の少女が俺の姿に気づき、近寄ってきた。
……よかった。人居るところに着いて。これで化け物とかの村とかだったら危なかった。
「あー! ねこだー!」
ヒョイとつかみあげられる。
猫になって分かったけど、いきなり持ち上げられるのってかなりきついんだよな。視界が急にグラグラする、というかさ。
「柔らかーい……はぅ……」
持ち上げられた俺は、顔をなすりつけられる。……はぁ。折角舐めて毛繕いしたのに。
「エルー? なにやってるのー?」
「あ、お姉ちゃん」
ぐるっと視界が180℃回転。俺の視界に、髪を一つに束ねた茶髪の少女が入ってくる。ってことは俺を抱えてるのは妹か。お姉ちゃんって言ってたし、この人の方が頭一つ大きいし。
「あ、猫? 珍しいね。……触っていい?」
「だめーっ。ネコさんは私のーっ!」
いやいや、勝手に私物化しないでくれよ。俺だって生きてんだから。
ギュッと抱きしめられ、グエッと声が出る。
「ねえ、お姉ちゃん。このネコさん飼っていいかな?」
「んー……どうだろうね。お母さんに聞いてみよっか?」
「うん!」
そういって、茶髪のお姉ちゃんは「エル」と呼ばれた少女と手をつなぐ。仲がいいっていいね。
少女に抱きかかれられたまま、村(暫定的にきめた)を歩く。
村は全て木製の建物で統一されていた。三角の建物はなく、全て豆腐ハウスか、風通しの聞く屋台のような建物ばかりだった。
屋台のような所では、男の商人みたいな人が食べ物(恐らく)を指さして何かを話している。
ていうか、あの人、耳が横に長くないか?もしかして……。
「ただいまー」
「ただいまーっ!」
考えていると、木でできた質素なドアが目の前に。この2人の自宅だろうか。
「お帰りなさい……あら?」
ガチャっと、ドアが開き、恐らく二人のお母さんであろう人が出てくる。
髪を肩まで伸ばした黒髪の美人お母さんは、俺を見つめながら言った。
「どうしたの? その猫……」
俺の、耳の後ろを掻きながら言う。……あっ、そこそこっ! うにゃぁ……。
「ねぇねぇ、お母さん? この猫、飼っていいかな?」
「良いかな?」
姉妹が尋ねる。
お母さんは俺の耳裏を掻くのを止め(ちょっと残念だった)、少し考え込む。
「……ちゃんとご飯あげてくれる?」
「うん!」
「しっかり遊んであげる?」
「うん!」
「ちゃんと勉強する?」
「うん!」
「滝川ク○ステル?」
「「お・も・て・な・し!」」
「……分かったわ。飼って良いわよ」
「「やったぁ!」」
ハイタッチをする二人。うん、別に良いんだけどさ。最後の質問おかしくね?
「よかった……」
安堵の表情を浮かべるお姉ちゃん。よかったよかった。
そして、またもや俺の身体は180℃回転し。
「これからよろしくねっ!」
こうして、俺は少女「エル」の元で飼われることになった。