対談企画
この作品は、お題を元に書きました。
その対談企画は、副編集長の提案だったが、僕は初めから乗り気になれなかった。
三流の月刊雑誌『奇天烈』は創刊号だけは当たった。
だが、二号・三号は不評で売れなかったのだ。今回の企画がダメなら廃刊になるだろう。
今回の企画は、文化人類学の研究者、大口太郎氏と社会科学の研究者、宛庭那嵐氏の対談だった。
対談が開始されると同時に、デジタル録音のスイッチを押す。
「経済が低迷すると、人心が荒れますな。こうした社会状況になると、振り込め詐欺や怪しげな商売が横行します」
「そう、その通り。儲かりまっせと、まことしやかな広告で出資者を釣り、巧妙に金を巻き上げては逃げてしまう悪質な商法や業者が増えます」
「魔法ではあるまいし、出資金が二倍も三倍もに、なる訳がない。どうして、そんな幼稚な手口に騙されてしまうのか?」
「愚かしくも嘆かわしい日本の現実です。恥ずかしい国になってしまった」
駄目だ! この企画は失敗だ。だから、あれほど対談のテーマを限定すべきと言ったのに……。これは載せられない。
僕は、就活を覚悟した。
なぜなら……この雑誌を支える広告の一番のスポンサーが、まやかし商法の業者だからだ。
―了―
お題
対談
魔法
研究者
から書きました。