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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

花束を食む

作者: 野中 すず
掲載日:2025/07/25

 洋菓子職人の野原(のはら) 咲良(さら)は自宅マンションで飴細工を作っている。


 薔薇の花の飴細工。


 テーブルの上に置いた小さな薔薇の花をモデルにしている。

 十六才から趣味で始めたお菓子作り。趣味でやっていた時期も含めると咲良のキャリアは八年になる。

 そんな咲良にとって、テーブル上の薔薇そっくりに飴を生成することなど造作もない。サイズさえもモデルと変わらない一口大の薔薇の飴。


 電子レンジで加熱され、軟らかくなった飴。

 食紅で深紅に染まった飴。


 爪楊枝、スプーン、そして指によって咲良は薔薇の花を作り続ける。素人たちは「飴の硬化がタイムリミット! 時間が最大の敵!」と騒いでいるが、プロの咲良にとっては時間が余るほど簡単な作業。




 咲良は飴の薔薇を十個完成させた。既に最初に作った薔薇は硬化している。

 その出来栄えに、モデルにした薔薇と遜色ない美しさに咲良は満足した。

 一つ(つま)み、口に放り込む。

 非常に薄い花びら。

 非常に鋭利な花びら。

 舌で転がして味を楽しむ飴ではない。

 咲良は歯で噛み砕く。

 カシャリとした繊細な感触、その直後に口に広がる甘みを楽しんだ。


 鼻歌を歌いながら、職場から拝借してきたケーキ用の小さな箱に九個の飴を収める。円形に。

 最後に円のセンターへモデルにした薔薇の花を置く。

 飴の薔薇の花束。

 


「アハハハハハ」


 箱を冷蔵庫に入れ、咲良は笑った。




 明日、この箱を貴男(あなた)にプレゼントしよう。

 常連客だった貴男に。

 まだ私を騙せてるつもりの貴男に。

 ――「独身」だと。

 貴男、明日は十回目の結婚記念日らしいね。

 

 あのセンターの飴を噛み砕くのはどっちかな?

 貴男かな? 顔も知らない奥さんかな?


 あの――、モデルにしたガラス細工の薔薇の花を。



 

 

 最後までお読みくださり、ありがとうございます。

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 ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
食紅で深紅に染まっているのがなんとも不気味ですね...... さっくりと読めて満足感のある短編でした!
みつなつ花企画へのお申し込みありがとうございます! 【野中さん作品】ということで衝撃を覚悟してきましたが、見事にやられました(; ゜Д゜) 約700文字でこの破壊力!! 薔薇の花を飴細工で作るとなる…
ぐっじょぶなのです! でも咲良さんの心はどちらにあるのって先の展開が気になりました 冷蔵庫から箱を出せるのかなって。冷蔵庫を開けたところで手が止まり、じっと箱を眺める...... いろんな展開が脳裏…
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