誰でも寝れる寝方
今日の夜も蛙が鳴いている。
両手で持っている光る画面では人が動いている。
野球バットを振った彼はたくさんの人から歓声を浴びている。ナレーターが彼の名前を大きな声で叫ぶ。指を上に動かした。
両手で持っている光る画面では人が動いている。
6人くらいの綺麗に飾られた女性たちが踊っている。互いに場所を入れ替わりながら滑らかに動く。右手で光る画面の側面を押す。
両手で持っている黒い板には人が写っている。
画面の人と目が合う。
目が合った彼はこちらを見ているが何か変な顔をしている。
辛いことがあったか、特別に楽しいことがあったのか、今日はどうやって過ごしていたのか、冷蔵庫のアイスを食べて幸せなのか。いや、結構どうでもいいな。
顔が冷たくなってきた、暑いのに。そのまま気化して熱を奪ってくれるのを待つしかないか。
さっき見た時に時計は0時半だっけか、うーん。
蛙の鳴き声はまだ聞こえる。
耳をすませば秒針の音も聞こえた。
画面は蛙の顔に降ってきた。
蛙は明日を迎える。その明日もまた夜に蛙は鳴いているだろう。
どこにでもいる、何の変哲もない蛙の話。
蛙になるな。