ひまわりと太陽 ~ひまわりは太陽を見つめている~
【12】疑心 にて登場するサブキャラ、馨民を主体とした一人称。
元々は詩のみのものを「坂道」「太陽」「天然」というお題を絡めて短編小説にしたものです。
【ジャンル】恋愛
【タグ】日常、ほのぼの、片想い、幼なじみ
さんさんさん
太陽のように光を放っている あなた
さんさんさん
あなたの やさしい光が好き
何でも 包み込んでくれる あなたが好き
太陽のあなたは たまに とても遠くに感じて
でも
わたしに気がついて
いつも そばにいてくれる
そんな やさしい あなたが好き
悲しいときにも 微笑んでいて
独りで 無理に飲み込んで
淋しい笑顔を浮かべる あなたも好き
そんなときでも
わたしは あなたのそばにいたい
さんさんさん
太陽さん
降り注ぐ光は
さんさんさん
太陽さん
みんなを幸せにしている
あなたを幸せにしたいと願っている私は おこがましいですか?
あなたの幸せがわたしの願いです
なのに
あなたがそばにいてくれることも
わたしの願いです
ひまわりは いつも太陽を見つめています
さんさんさん
さんさんさん……
いつからだろう。
自分を『ひまわり』と自覚したのは。
にこにこ笑う太陽のような彼を、気づけばいつも目が追いかけている。
でも、彼は。
いつも私の方を向いてくれているわけではなくて。
森を抜けて坂道を登る。背後でさわさわと風と話をする木々は、この先に彼がいるよと言っているようで。
そうだよね。だって、行き先は検討がついていたもの。
坂道の頂上にひとつのお墓が見える。
その前に座って、両手を合わせている濃い緑色の上着を着た人。思った通り、彼はここにいた。
「忒畝!」
ふと頭が上がって、こちらを振り向く白緑色のツンツン髪。
上着と同色のくっきりとした縁の眼鏡の奥の瞳が、私を捉えて細くなっていく。
「ああ、馨民」
知っているんだ、彼が生まれつきの弱視で眼鏡をしているのに更にコンタクトもしていること。
知っているんだ、本当は人の名前と顔を一致させるのが苦手で人と関わるのが不得意なこと。
だから、私はそばにいた。
私がみんなを覚えて、さりげなく名前を呼んで。
私だけの秘密にしておきたいの。ずっと一緒にいた、私だけの秘密に。
この天然の笑顔が、私だけのものになってくれたら……なんて、思うだけなら自由だよね?
「ほら、そろそろ帰らないと。また充忠が怒るよ?」
彼が楽しそうに笑う。
「心配性じゃないのにね。ありがとう」
そう、親友の充忠が心配性なんじゃない。私が心配性なんだと、彼は知っている。
光を吸収するように輝く白緑色の髪が透き通ってキラキラと輝くけれど、私が眩しいと感じるのはそれだけのせいじゃない。
ねぇ、知っている?
ひまわりは太陽を見つめているの。




