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作品の構成を考えよう!

 今日は初めて部活動を行う予定の日だ。

 いつもより早く目覚めて支度をしている俺は、若干浮かれているようだ。


「母さん、今日遅くなるかも」

「ん? 部活ね。ご免ね。お母さんも早く帰れないかも」

「いいよ何か買って食べるから」

「本当ご免ねー。忙しくて、やんなっちゃう」

「ははは。暇よりいいでしょ」

「えー、暇の方がいいわよ。アニメだって見たいのあるのに」

「って言いながらいつも見てるよな」

「だって凛が掃除とかやっといてくれるんだもん」

「働かざる者食うべからずって教えたの母さんだろ?」

「えへへー。うちの息子は大変良く出来ていて満点!」

「調子の良いことを。お金だけおいといてね」

「うっ……はーい。物価値上がりしてて千円じゃ足りないかな?」

「足りるって。弁当屋なんだから」

「なんだ。部活の子たちとご飯行ってきてもいいのよ?」

「みんな忙しいの。中学生にそんな暇ありません」

「でもせっかく部活立ち上げたなら、ね?」

「まぁ、そういうのは打ち上げとかにしたいし」

「そっかぁ。じゃあそのときは奮発しちゃうんだから! お父さんのお小遣いから」

「可哀そうだから止めてあげて……」

「ふふふ。凛ったら部活始めようとしてから凄くいい顔してるんだもん」

「ん。それなりに楽しいしね。それじゃ行ってきまーす」


 親に分かる程楽しい表情してんのか、俺。

 恥ずかしいから隠すようにしないと。

 三Dモデルでやりたいこと一杯あるけど、授業もしっかり受けないと朝霧先生に睨まれ

るからな。


 ――そして放課後。

 今日の部活内容は決まってる。

 というのも今日は視聴覚室に生徒八人と教員二人がいるからだ。


「帆乃実も新しい部活立ち上げるとは思わなかったよ」

「奈緒が絵を描いてるってことの方が驚きなんだけど?」

「うう、恥ずかしいから見せたくなーい……こんなことになるとは思わなかった……」

「全員揃ったな。そんじゃ始めまーす。自己紹介からね。はい阿川から」

「何で私からなわけ? リーダーのあんたからでしょ?」

「佐々木君がリーダーなんだ? 意外だわ……」

「悪かったな。んじゃいいよ俺からで。佐々木凛だ。一応俺が部活立ち上げたことになる

かな。三Dモデリングが好きで毎日触ってる。次阿川」

「はいはい。阿川奈緒。将来は……漫画家になりたい」

「漫画家ってま……」

「ストーップ。茶々入れ禁止。次は嵐ね」

「伊吹嵐です。僕は設計業務とか建物のモデリングをやりたいと思ってます」

「次、流駆」

「長谷川流駆。俺は世界最強の武道家になる!」

「次、琴宮」

「琴宮奈々です。私……その。声優になりたい、です」

「そっちの三人、全員茶々入れたくてしょうがないって顔のままだな。こっちは終わり。

お前らの番ね」

「そりゃね……驚いた。うちって個性強い人多いって思ったけど、こんな個性派揃いだった

なんて」

「ほら、そういう茶々入れはいいって。時間押してるんだぞ」

「分かったって。もー。琴宮さんなんて絶対うちに欲しかったのに。一ノ瀬帆乃実です。将

来何になりたいなんて考えてないけど、うちは茶道とか琴とか習い事多いから。部活もそう

いうのじゃないとダメだって言われたの。次は大石さんかな」

「はい! 大石心海でっす! がさつな性格を直せって言われて入部決意しました!」

「声大きいよ大石さん。朝霧先生顔怖い……次は山本さん」

「山本千尋です……暗い地味だけな性格を変えられる場所だと思って入部しました」

「コホン。うちの三人は全員女子。以上です」

「部活自体は別々でやるけど、何か月かに一回はこうして全員集まって例の作品に向けて作

業合わせすると思う」

「私たち、良く分からないので教えて欲しいでっす!」

「んじゃ簡単に説明するよ。俺たちクリエイター部はモーションアニメを作り、それに声を

乗せて一つの作品にする予定。今のところは人型を作って歩かせたり、笑わせたりとか」

「本当に簡単に説明したわね……描く方の身にもなって欲しいわ。パンフレットも作るしそれ

に絵を沢山乗せないといけないのよ?」

「私たちは教養推進同好会だけど、本当は和楽器を中心にした演奏をしたいの。顧問はあちら

の……」

「ちょりーっす。櫛切ひなだよ。二ー二とか教科もちゼロでマジうけるんですけど」

「あの先生は!? 有名なギャル先生じゃねーか!」

「何ソレ。朝っちー。ひなってそんな風に呼ばれてんの?」

「その呼び方は止めてくれと言ったはずだ」

「朝っち……そんな風に呼び合う間柄なんだ……」

「うんうん。ひなと朝っちの仲だかんねー……あいたっ。出席簿で叩かないでよもー。

はげたらどうすんの!?」

「そうなっても|櫛切なら笑って生きていけるだろう」

「えっへっへ。褒められちった」

「なぁ、あれって褒めてたのか?」

「さぁ……」

「もっかいちゃんと自己ピーするね、櫛切ひなだよ年齢は若いからよろちくー。好きなタ

イプは朝っちみたいなからかうとおもちろい奴? 後はネイルとか美容とか熱くねーって

いうか聞いてよちゃんと!」


 話の内容が強烈過ぎて俺たち五人は若干引いている。

 しかし一ノ瀬たちは既に慣れているようだ。


「あの先生って一年生担当だよね。一年生大丈夫かな……」

「俺廊下で一年女子が全員片目ピースサインして歩いてるの見たことあるわ。あんな風

だった」

「全員毒されてるな……」

「朝っちもほらー挨拶してー」

「全員私のクラス生徒なんだが?」

「一人だけやらないなんてなしに決まってるじゃんーほら早くしないとひなが勝手にするよ?」

「……ふう。朝霧紫水だ。何処まで力になってやれるか分からないが、出来る限り協力す

るつもりだ」

「あれ? 朝っちって紫水って名前なんだっけ? 名前までいけてんとかずるくない?」

「それは俺も思った。ずるい」

「俺も紫水が良かったなー」

「流駆は流駆で良いと思うけど。俺なんて男の方の凛ですって言わないといけないんだぞ」

「なかなか個性的なぴっぴたちが集まってるじゃん。面白ー」

「自己紹介終わったし、そろそろ本題に入らないと……ってもうこんな時間じゃん!」

「わっ。何だよ自己紹介で終わりか?」

「いや。絶対決めないといけないことがあるんだ。それは……」

『それは……?』

「テーマだ! 一ノ瀬のとこが和って雰囲気だろ? だからさ、和っぽいのがいいんだよな?」

「いいね! 琴宮さん絶対和っぽいキャラの方が声の雰囲気合うし!」

「そう……かな?」

「そうすると、和装で武道を演じる女性とか?」


 流駆が今にも動き出したくて仕方が無い動作をする。

 しかし和装で武道か……いいな。


「良いじゃん良いじゃん。恰好良い動き入れてさ」

「そうすると、三味線や琴も合いそうですね……こちらとしても賛成です」

「でも肝心の音楽はどうしたらいいかな……作曲はしたことねーし」

「んー、ひなにお任せあれー。音楽だけでいんだよね? ひなバンドやってたんだかんね」

『えっ?』

「ひっどー! 全員全否定みたいな声出したしー。ひなの実力見せてやっからねー!」

「ギャルっぽい教員が作曲して和装の女性を琴宮が声入れして……やべえ。楽しそう」

「英語も使っていんだよね? 和と日のコラボって感じであちくね? ひな頑張るかんね」


 教員二名に生徒八名。

 これだけ揃うと大変賑やかだった。

 生徒と教員が一つになり、一つの作品に対して話し合う。

 こんな機会が設けられただけでもきっと良い思い出になるのだろう。

 

「やべ、時間オーバーしてる。お開きにしないと!}

「えーまだいいじゃんひな寂シー」

「教員が下校時刻を守らないでどうするんだ。片付けはこちらでやっておくから早く帰宅

するように」

「片付け位はしますよ。先生だって仕事まだあるんでしょう?」

「いや、今日はもう帰る。話を聞きながら仕事はしてたから」

「その能力ずるくない? ひなの仕事もやってよー」

「一年の教科分位しっかりこなすように。三年を受け持つとき苦労するぞ」

「きびちーよー。えーんいっちぃー慰めてー」

「あはは……本当櫛切先生って賑やかで面白いですね」

「自分好きでっす! 凄く元気でます」

「……私も櫛切先生みたいになりたいな」


 個性的な先生と厳格な先生。

 案外この二人お似合いな気がするけど。

 いや、無いか。朝霧先生だし。

 結局全員でさっと片付け終えて、その日は帰宅した。



 ――そして帰宅後。

 朝、母さんと話してたことをすっかり忘れてご飯が無いことに気付き、慌てて買いに行

くと……「あれ? 嵐?」

「佐々木君? 奇遇だね。佐々木君もお弁当?」

「ああ。今日は母さん遅くなるって。父さんとか毎日帰って来るの二十二時とかだし」

「大変だね。うちはお母さんしかいないから」

「そっか。嵐のところも大変なんだな」

「うん……あのね、佐々木君」

「何だ? 先に買っていいぞ」

「うん……って、そうじゃなくて。お礼が言いたかったんだけど。えっと海苔弁当お願いし

ます」

「礼? 掃除のこと?」

「ううん。部活のこと。僕、誘ってくれて嬉しかったから」

「ああ、そんなことか。俺も一緒に三Dモデリング出来る奴いるとは思ってなかったからさ」

「母さん、中古だけどパソコン買ってくれたから、毎日触ってみてるんだ。佐々木君が言わ

なかったら前に進めなかった気がして」

「なぁ嵐。今度うちに遊びに来ねー? 部活だけだと制作おっつかない気がしてきてさ」

「いいの?」

「ああ。って言ってもお互い塾が無い日だな」

「うん、そうだね。成績を落としたらパソコン取り上げられちゃうだろうし」

「全く何でこんなに忙しいんだろうな」

「ね。でも凄く楽しいんだ。ただ勉強ばかりしてたらこうはならなかったと思う」

「そーだな。勉強は社会に出るために大事だとは思うけど、それ以上に将来やりたいことを見つ

けるってのが大事だって。朝霧先生って面倒見良すぎだろ」

「僕、先生と少し深い話をしたことがあるんだけど」

「まじ? すげー気になる」

「お弁当、お待たせしましたー!」


 といいところで弁当に呼ばれてしまう。


「今度お邪魔したときにでも話すよ。それじゃ、また明日ね!」

「ああ。また明日……ってやべ、注文してなかった」

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