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朝霧紫水と櫛切ひな。二枚の部活申請書

本日分はここまでとなります。

明日も投稿いたします。

 朝霧紫水、今年で二十八になる彼は悩んでいた。

 生徒から提出された新しい部活の立ち上げ要望が二枚手元にある。

 一枚は佐々木凛が提出したクリエイター部。

 もう一枚は一ノ瀬帆乃実が提出した教養推進部。

 どちらも非常に魅力的な部活だが……これを二つ同時に出せばどちらかの部活は却下さ

れる可能性が高い。

 というのも担当顧問がいないと部活は立ち上げられないからだ。

 どうしたものか悩んでいたところ、隣のクラス担任である鈴木優斗に声を掛けられる。


「朝霧、眉間にしわ寄ったままだぞ。怖いって……なぁ今夜位付き合ってくれよ」

「合コンは行かないとあれほど言ってるだろう。教員として相応しくない」

「合コンじゃなければいいだろ? な? 頼むよたまには」

「ふう……分かった。それならこちらの話も聞いてくれるか」

「勿論! ってことで水木先生も来ますよね?」

「えっ? 私? うーん。まぁ朝霧先生が一緒なら大丈夫かな。ひなも来てくれる?」

「もっちー。行くから絵里っち場所メよろちくー」

「その話し方だと分からないってば」

「えー? うちの子だいたいこんなもんよー。生徒に合わせるのなんて当たり前っしょ。

ねー朝っちー」

「……朝っちは止めてくれないかな」

「いーじゃんしわしわとかかたぶちゅとかより百倍いいっしょ?」

「え、じゃあ俺は俺は?」

「スケコマダメ男のマダオちん?」

「苗字すら入ってないとか……」

「忙しいし近場でいいだろう?」

「あんまり近いと生徒がな……」

「見られても別にやましいことなど無いし構わないだろう。十九時に九兵衛で予約を入れて

おこう」

「さすが、朝っちマジ有能戦士(せんち)。使えるそういうとこ好コーー」

「本当に生徒ってそんな喋り方なのかしら……」


 職員会議オフの本日は教員も早めに帰宅せねばならない。

 そのため十九時に問題無く飲み会を開始出来た。

 部活で遅くまで活動していた生徒に一部目撃されるも、朝霧先生が一緒であるからか何の冷

やかしもなく目的地に辿り着く。


「……生徒にどれだけ真面目に思われてるんだよ」

「朝っちかたぶちゅで有名だからね。イケテンなのに浮いた話も無いしー」

「かたぶちゅは堅物だよな。イケテンて何だ? イケメンのこと?」

「知らんのマジうけるんだけど。イケてる点数多いメンズのコト。ただのイケメンなんて

今時はやんないし。整形すれば一杯いるし」

「初耳だ……そうじゃなくて、早く注文しよう」


 ――そして一通り注文をし、食事を終えてから暫く。

 今回新たに部活を二つ立ち上げる要望が出たことを伝えた。


「うちのクラスはそういうの全く無いな」

「うちもー。一年だから仕方無いけどさー」

「私のクラスでも無いわね。やっぱり朝霧先生のクラスだからかな」

「たまたまやりたいことがある生徒が集まっただけだろう。とても良いことだが少々困っ

ている」

「予算、だよねぇ。一年クラスの予算もってけー!」

「無理に決まってるだろ。出来るならうちのクラス分も持ってってもらいたいよ」

「そうね……教頭が良い顔はしないわ。聞いた? あの話」

「あの話って何何ー? 絵里っちのコイバナー?」

「馬鹿なこと言わないで。ほら、今野球選手が凄く流行ってるでしょ? メジャー

に行って。うちの中学校も全面的に野球を支援するぞって意気込んでるのよね。校

長も教頭も野球好きで」

「何それつまんないー。野球より音楽推しだもん、ひなはー」

「ああ、あの選手の。かなりまずい事態になってるけど」

「でもね。それって結局他の中学と同じことでしょ? うちの学校って何の特色も

ないところで終わるんじゃないかって、他の先生同士でも評判なの」

「流行りにのっておけばいいなんて、老人たちの考えそうなことだねぇ。全く。だから

うちの学校は文化部系が少ないんだよ」

「でもさでもさー。うちの学校って野球ちょー弱っちだよ?」

「機材を揃えればどうにかなるって思ってるんじゃない? 高い機材を買おうとしてる

から。中学校野球で大事なのはそういうところじゃないと思うんだけど」

「バッカなんじゃね? もー飲む! ひな、もっと飲む! おねーたんお酒追加ー!」

「……部活申請をどうしても二つ通してやりたい。三人の意見を聞いてよりはっきりした

ことがある」

「なにーなになにー? ひなの話がちょー役に立った?」

「いや。校長にしろ教頭にしろ、生徒のことを理解していない。野球に興味があるのは校

長と教頭の考えだろう。我々は生徒を育てるために教員をしている。そして、その結果そ

ういった選手が生まれることがある。つまり生徒の要望を叶えてやることが世界的成功者

を産み出す可能性のある鍵なんだ」

「その通りだと思う。私も全面的に協力するわ」

「俺もだぜ。何せ凄く面白そうな部活じゃないか。この国がアニメで世界に向けて、どれ

だけ稼いでるかを教えてやるべきだ」

「えー、そんなに稼いでんの? ひな良く知らないけど」

「知らないのか? 日本のアニメ市場は国内外合計三兆円規模だ。あの選手一人の経済効果

は確か五百億円程って推定だったな。一人でそれは凄いことだが、規模が違う」

「ちょー熱いじゃん。歌アニメ好きだち。あ、これ朝っちのだった飲んじった。えへへ」

「……追加で」

「ひな、お下品よ。でもそうね。私も好きなアニメあるわ。ジブリとか、凄く好きよ」

「そしてそれらはクリエイトする技術者がいて初めてなせるものだ。中学から学べれば、その

価値はとても大きいだろう。スポーツも当然素晴らしいものだが、多くの中学が手掛ける中で

うちの学校が同じ道を進んでいては、生徒の数が減っていくばかりだろう」

「もう一つの教養推進部というのはどうなの?」

「これは主に三味線や琴を奏でたり、茶を点てたりする部活だ」

「え? ひながそこの顧問やりたいかも」

『えっ?』

「だってーひなはこーみえても和楽器ちょー熱くねって感じで好きなんだよね」

「和楽器がメインじゃないんだろ? 吹奏楽部あるし」

「吹奏楽部で三味線は引かないわよ。すみわけ出来るんじゃない?」

「まじ三味線とかやば。そのクリエイター部とセッションしよーしよー」

「俺も陸上部顧問じゃなければ女子生徒に茶を点てて欲しかった……」

「本音だだもれまじキモイんですけど。ひな通報しまっす」

「おいおい、冗談だって。中学生に何かするわけないだろう。しかし楽しそうでいいなぁ」

「ふっ……はっはっは。そうか、いいヒントをもらえたよ。有難う櫛切(クシギリ)

「イケテンに褒められちった。でもでも櫛切はまじ勘弁。ひなって呼んで嫌いなのその名

前結婚して変えたい結婚しよ?」

「ちょ、ちょっとひな。何言ってんの、あんた飲み過ぎよ!」

「絵里っちが怒ったぁ。ひなもう泣くもん」

「もう!」

「先生同士でその呼び方は相応しくないだろう。悪いが先に失礼してもいいか。急いで報

告をまとめたいんだ」

「かたぶちゅ! もう帰っちゃうのーやーだーこれからでしょ二件目ーー!」

「嘘でしょ!? 明日も仕事なのよ?」

「ダメー。絵里っちは朝までひなと飲むのーー」

「なぁ、朝霧。あんまり思いつめるなよ」

「ああ。今日は来てよかった。誘ってくれて有難う、お金置いてくぞ」

「あ、ああ。って多いだろ、これ」

「気にするな。貴重な情報代だ」


 ――同僚との飲みを早めに切り上げた朝霧は、部活立ち上げによる報告書を次々書き上

げていく。

 初年度は部費が出ないが、必要となる機材は買い揃えられる。

 佐々木のクリエイター部に必要な費用が百万円以上。

 一ノ瀬の教養推進部に必要な費用が推定四十万円。

 クリエイター部が現在五名。教養推進部は現在三名。

 佐々木の方は部活として申請が可能で一ノ瀬の方は同好会としての申請。

 担当顧問はただのサービス残業となるので給料はその間出ない。

 そのため一ノ瀬の方の顧問をどうするか考えていたが、櫛切ひなのお陰で解決出来た。

 

「後は、教頭を説得するのにこれを書く必要があるか……」

櫛切先生っぽいキャラは私の作品としては初登場かも!? しれません。

実際にモデルいるの? と言われるとうーん。紫電はかなり多くの方と話をする接客業を

昔からずっとやり続けているのと、人との会話を半永久的に記憶してしまう、そのスキルジャナイ! 

スキルがあるので、併合した人格を構築している気もします。

どうせなら肉を食うと能力を吸収してしまうremonsterのような能力が良かった……! 

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