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ジョーサンで話し合い

 今日は土曜日、休日だ。

 しかし俺たち中学生は暇じゃない。

 くっそ忙しい中日程をやり繰りしているのだ。

 何故なら、宿題てんこもりな上、塾もあるし予習復習もある。

 おまけに部活を発足させようとしているわけで。

 更に習い事までやってる奴もいるわけだ。

 そして……今日は全員時間を合わせてジョーサンに集まる日。

 俺も今到着したばかりだ。


「うぃーっ。佐々木ぃー」

「流駆、早いな」

「まーな。家に帰って荷物置いてから走って来た」

「お前ん家遠くなかったっけ」

「今から鍛えておかねーとな!」

「本当にいいのか? 運動部じゃなくて」

「運動部に入ってただ運動するのなんて俺には合わねーって。先輩にへこへこしてる時間

あったら自分の動きを観察した方がよっぽどためになるだろ」

「それ、高校に入ったら通じないんじゃね?」

「そーでもないぜ。新しい部活入りました! って方がよっぽどすげーことだろ」

「それもそうなのか? 俺には分からない。ただやりたいことに巻き込んでるみたいで若

干気が引けるんだ」

「何言ってんだお前。嵐も琴宮もすげー乗り気だったじゃんか。誰かがきっかけくれない

と動けねえもんだよ。だからお前はすげえ」

「お待たせ。二人とも早いね……」

「ご免、遅くなっちゃった? 走って来たんだけど」

「おう、琴宮に嵐も来たか。あれ、阿川は?」


 くいっと指でジョーサンの窓を示す。

 中に入って何かを必死に描いている阿川の姿が目に止まっていた。

 真剣な表情……きっと絵を描いているのだろう。

 俺も作業中はあんな表情してるのかな。

 人のあんな顔、中々見れるものじゃない。

 ここに呼んで正解だった。


「みんな忙しいだろうし早く入ろう」


 近所のジョーサン。

 ファミレスだけど人は多い。

 ドリンクバーがあるし、長くいられるいい店だ。

 先に入店していた阿川の席へ向かうと、こちらへ気付いたのか慌ててスケッチブックを

しまった。


「悪い待たせた」

「別にいいわ。それで、部活の話なのよね。琴宮も誘ったの? 意外。お嬢様って気がし

てたから」

「……私、お嬢様なんかじゃ」

「えっ? ご免よく聴こえなかった。大丈夫? あんまり体調良さそうじゃないけど」

「うん……大丈夫」

「ジョーサンて賑やかだからな。琴宮は声小さいから聴き取り辛いししょうがねえ」

「……ご免ね」

「流駆に謝る必要なんてないって。こいつ、こういうズバっと言ってさっぱりしてる性格

なだけだから。何も考えて無いっていうか」

「……うん。有難う佐々木君」

「酷っでぇな。まぁそうなんだけどよ。それで、部活内容は決まったのか?」

「それぞれのやりたいことを聞いただろ? 俺は三Dモデリングがやりたい。阿川はアニ

メ絵を描きたい。嵐は物作りがしたくて、琴宮は声優になりたい。流駆は……なんだっけ?」

「俺は武道の最先端を行く!」

「……はぁ? あんただけ全然噛み合ってないじゃない」

「分かってねえな。武道も今やパソコン技術で凄いところまで行けるんだぜ。あの映画の

ようにな!」

「ばっかじゃないの。映画はCG使ってるんでしょ」

「それを俺は再現してみせる」

「はぁ。あんたね……」

「おい阿川。俺さ、お前の絵見て何か足りないものがあるって感じたって言っただろ」

「それと長谷川の言ってることと何か関係あるの?」

「考えたんだけどさ。お前の絵、表情とかあるけど、動き出しそうな感じがないんだよ」

「それは……静止画描いてるんだから当然じゃない」

「絵ってさ。例えばだけど猫の絵があるとするだろ? その絵を見てふーん、猫だ上

手いなって思う絵とさ。今にも動き出しそうな絵……これは別にリアリティがあるって

いうんじゃなくて。漫画絵でもそうなんだけどまるで動いているような感覚に陥る絵っ

てあるだろ?」

「それは……そうかも」

「僕もそういう絵、好きだよ。長谷川潾二郎さんていう凄い猫の絵とか見たことある」

「つまりそれが流駆の話にどう繋がるの?」

「流駆は武道をやってるだろ? 武道って一連の流れの積み重ねだったりするから。動

きを静止画としてとらえて見たら面白い絵が描けるんじゃないかなって」

「あの。私も……阿川さんの絵に合わせて声を出してみたい……かも」

「もしかして私の描いた絵の声役をやってくれるの!?」

「私、声優になりたいから……」

「琴宮……さん。ちょっと嬉しいかも」


 さっきまで呼び捨てだったのに言い直したぞ。

 しかも尊敬の眼差し……でも阿川の目つきはやっぱり怖い。


「俺と嵐でモデリングをやろう。物作りしたいならまず最初に簡単な建物は嵐が調整して

みるといい」

「僕、上手く出来るかな。うちのパソコンじゃとてもじゃないけど出来ないし」

「何とかなるって。国がサンプリングとして自由に商用として使っていい凄い建物がある

んだ」

「お前、そんなことまで勉強してんの? 学校の勉強しながら?」

「ああ。親に無理してパソコン買ってもらったから。うちの母さんなら将来返せって言う

だろうし」

「あはは……それは大変そうだね。僕もお願いしてみようかな」

「ねえ! それより……恥ずかしいけどあんたたちになら見てもらいたいかも。絵、見てく

れる?」

「おう、見せろ見せろ……何だ女絵じゃねえか。ガチムチの男筋肉絵見せろって」

「はぁ? 何で私がそんなの描かなきゃいけないの? 男の筋肉なんて……全然見たこと無

いし」

「ん? ほれ、こういうのだ」

「うわ、長谷川君凄いね……僕のなんて全然だよ」

「嵐、お前もうちょっと鍛えろ。男は筋肉がありゃ大抵何とかなるもんだぞ」

「ならないわよ。脳まで筋肉で出来てるんじゃないの?」

「何だと? お前、絵師目指すなら男も描けなきゃダメに決まってるだろ」

「はいはいストーップ。琴宮さんが苦笑いしたまま硬直してるから。でもさ、全員でこうや

っていろんな意見出し合えるってのはいいんじゃね? 各自足りないとこ見えて来るだろ。

朝霧先生も良く言ってたし」

「そーいや欠点を補えあえる関係を築けるのが理想的だのなんだのって言ってたな」

「朝霧先生は……優しいです」

「うん。僕もこのクラスで本当に良かったと思ってるよ。小学校のとき、少しいじめられてた

から」

「いじめ? そんなだせーことする奴まだいるのかよ。クズだな」

「それよか話決まったなら紙に書かなくていいの?」

「やべっ。週明け提出しないとなんだった。それじゃ全員、部活入ってくれるか?」

『おー!』


 こうして俺の母親が命名してしまったクリエイター部に五人揃うこととなった。

 まだまだ分からないこととか多いだろうけど、内容を五人で話し合い、上手くまとめて先生に

提出しよう。

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