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クリエイター部!   作者: 紫電のチュウニー


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21/36

農園のタコパは一味違う?

 嵐と流駆の喧嘩。

 それは無事解決出来たんだ。

 あの後激昂する阿川を鎮める方が大変だった。

 阿川は着火すると止まらない。

 

「あんたの言い方、前々から気に入らなかったのよ!」

「お前だって言い方悪いだろうが!」

「もう止めて! お願い、止め……」

「琴宮さん!?」

「……もういい」

「おい阿川!」

「今度は阿川さんが出てっちゃった……」

「あ、あ……」


 俺は阿川の背中を追おうとしていたが、琴宮の異変に気付いた。


「琴宮? おいしっかりしろ!」

「やばい、過呼吸だ! 先生! 先生ー!」


 タイミングが良いといえるか分からないが、朝霧先生が夕飯の支度を告げに

来る時間だった。


「どうした!?」

「琴宮さんが!」

「急いでそこにあるビニール袋をかぶせてくれ!」

「えっ?」

「早くするんだ!」

「は、はい!」


 琴宮の顔にビニール袋を被せると、心無しか落ち着いたように思える。

 これは……ストレスだろうか。

 

「何があったんだ」

「嵐と流駆が喧嘩しちゃって。俺が嵐を見に行って、その間に流駆は阿川に任せたんですけど、今度は阿川と流駆が大喧嘩になってしまいました。それで止めようとしてたら琴宮さんが……」

「阿川はどうした?」

「出て行っちゃいました」

「私は琴宮を見なければならない。佐々木、頼めるか」

「分かりました。行ってきます」

「佐々木、君……」

「琴宮、今は喋るんじゃない」

「……」


 外へ再び出ると、丁度成香さんとすれ違う。

 やれやれまたかといった顔で肩をポンポンと叩かれた。

 これには苦笑いで応じるしか出来なかった。


 成香さんは、今度は林ではなく、畑の奥の方を指し示していた。

 ――丁度プレハブが見えなくなるくらい歩くと、畑の間にある小道にポツンと阿川は立っていた。

 何してるんだ、あいつ。

 そう思っていたら、歌が聞こえた。

「でも、許せないから。私は、あなたのものじゃない。それでも――」

「お前、歌も上手かったんだな」

「……」

「続けろよ」

「あんたに頼まれたこと、出来なかった」

「そういう歌なのか?」

「違うわよ。さっきの話」

「お前が怒ってるのってさ。流駆にじゃないんだろ」

「だから嫌なんじゃない」

「そうか?」

「はぁ? 私はそんな私が嫌いなの。自分のことで悩んでるのに、そのイライラを他人の口実にぶつける。そんな女なの。だから嫌なの。嫌いになったでしょ」

「別に。うちの母さんそっくりだし」

「は?」

「うちの母さん、お前に似てるんだよな。たまに父さんが可哀そうに思えるわ。今も一人で旅行いってるし」

「それは何か理由があるんでしょ」

「ああ。父さん急に仕事入っちゃってさ。でも俺が母さんの立場だったら別日に変えるか取り止める」

「どうして?」

「父さんが可哀そうだと思うし、一緒に行った方が楽しいと思うから」

「あんたは父親が好きなだけでしょ」

「母さんだってなんだかんだ言っても父さんのこと好きさ」

「私は違う。私は嫌い」

「嘘だね」

「あんたに何が分かるのよ!」

「分かるさ。さっき言ったろ?」

「……」

「そーいうとこだけ素直なのも似てるな」

「……私、私酷いこと一杯言っちゃった。もう、戻れない。戻せない」


 はぁ。本当、嫌になる。

 ここにも母さんがいるわけで。

 こんな時、母さんにもこうしなきゃならない。

 頭を撫でて、こういうんだ。


「大丈夫、俺が何とかするから」

「あは……あはっ……あはっ……うぅ、もう、もうダメ……うえーーーん、ご免なさい……ご免、なさい……」

「お前も母さんと同じ、不器用な奴だなぁ。ほらよ、母さんに無理やり突っ込まれたハンカチ」

「ぐすっ、ぐすっ、ちーん」

「汚っ! お前……」


 ハンカチで全力で鼻をかんだのを注意しようとしたら抱きつかれた。

 俺はそのままその場でしばらく動けずにいた。


「少しだけ、少しだけこうさせて……」

「……分かったよ」


 そして落ち着いた阿川を連れ部屋に戻る。

 すると――「はーい二名様追加ー! らっしぇいらっしぇいー!」

「ひな先生、何してるんですか?」

「タコパに決まってるっしょー、しょいしょいしょいしょいーー!」

「うおー、美味いぜー! もっとくれー!」

「あんたって本当単純ね」

「こっちも追加お願いしまっす!」

「……私ももう少し食べようかな」

「ふふふ。さ、二人も座って」

「ああ。琴宮、大丈夫か?」

「奈々、どうかしたの?」

「ううん、大丈夫。何でもないよ」


 精一杯阿川に心配掛けないよう笑ってみせる琴宮。

 顔を覗き込んでみるが、笑顔をこぼすことは無い。

 ……どいつもこいつも、他人のことばかり気に掛け過ぎだろ。

 制作はまだまだあるんだ。合宿も折り返し部分まできてる。

 気を取り直して頑張らないと。

 流駆の方は成香さんが面倒をみてくれたようだ。

 俺も後で少しフォローしとかないと。


 しかしながらこの人数で既に大変なのに、クラス全員見なきゃいけない担任ってどれだけ大変な仕事なんだよ。

 俺には到底出来そうにない。そう考えていると……「佐々木君って学校の先生とか似合ってるよね」

「私もそう思いまっす!」

「それ言えてるかも。朝っちと似たトコあるし? 将来朝っちみたいになるくね?」

「朝っちと呼ぶなと言っているだろう、櫛切」

「お互い様だかんね。ひなだってひなのことひなって言ってくれないらほっほっほっ熱美味し」

「さぁたーんとお食べひな!」

「あちゅいから! そんな絵里っちにはこうしてやるんだかんね」

「ちょ、何処触ってるのひな!?」

「おいお前ら。生徒の前でそういう相応しくない行動は控えろ!」

『はーい……』


 それはそうだと思う。

 というか何故農園に来てタコパしてるんだ俺たちは。

 こういうのは野菜尽くしの料理とかじゃないの? 

 まぁ食べるけど……って中に入ってるの野菜!? 


「へっへーん。驚いたか! 中身は全部野菜なのだ!」

「ふふふっ。そういうタコパもあっていいってひながね」

「その発想には驚かされるわね。これ、文化祭でも当たるかも!」

「うちの女子高で提案してみようかしら」

「女子高でたこ焼きならぬヤサヤキ! イイネ! ひなも食べに行く女子高行くー!」

「お前はただ遊びたいだけだろう……」

「違うもんね! 制服着たいだけだかんね!」

「確かにひな先生なら制服着て紛れても分からなそう……」

「それはさすがに無理だろう。年齢が……ぐはっ」

「あんたはだーってなさい! さっき怒られたばかりでしょうが!」

「す、すみません……」


 賑やかなメンバーだけど、どうにか落ち着いてくれたようで良かった。

 さて、俺は……「佐々木君、何処行くの?」

「ん、トイレだよ、トイレ」

「……」


 一人抜け出すと、少し案をまとめつつソフィアさんからのメッセージを確認する。

 物語の構成に加える要素が提案されているが、良い出来だ。

 台詞も完成してきている。

 後は……俺がキャラデザとモーションをどこまで作り上げられるかに掛かってる。

 阿川が作り上げた姉と妹の絵をじっくり見て、瞬きの回数や所作の違いなどを検討。

 身長さと体形の違い、それから目鼻立ちの調整。

 人ってのはどれだけ似てると言われても異なるものだ。

 それを表現出来るかどうかは俺次第なんだ。


「姉が金髪で妹が黒髪……かな。そして姉の方が少し怖い雰囲気に、か。よし」

「おーい佐々木君ーー!」

「あれ、嵐か。悪いちょっと考え事してた」

「夜だから遠くに行くと危ないよ。花火やろうってさ」

「直ぐ戻るよ。なぁ嵐」

「なぁに?」

「家に戻ったらちょい家電屋行かね? バーベキューの日の午前中とか」

「うん! 僕も佐々木君見習って宿題終わらせてあるから」

「やるな。あの量をやり切るとは……」

「それ、先に終わらせてた佐々木君が言う?」

「はっはっは。死ぬかと思ったぜ」

「あはは……分かる。そういうとこ朝霧先生鬼だよね……」

「全くだ。真面目で優しい? いや違う。奴は鬼であると俺は思っている!」

「ほう。私は鬼か」


 ……聞いてらしたんですか? 

 花火中じゃなかったんでしょうか? 


「じゃ、じゃあ僕先に行くね」

「おおい待ってくれ友よ! 俺を置いていくなー!」

「おい佐々木」

「は、はい何でしょう先生」

「今日は助かった。喧嘩を仲裁したのがお前だと聞いて」

「ああ。一応リーダーですから」

「何も出来ないリーダーだっている。本当に感謝している」

「そうしたいと思ったからそうしたんです。それにあいつらじゃ無かったら俺も仲裁なんて出来なかったし」

「あいつらといっても、親しくなったのは本当に最近の話だろう。私は……」

「おーい朝っちー。迷子の朝っちー。ピンポンパンポーン」

「戻りましょっか、先生」

「……そうだな」

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