勝敗の理
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
戦争ものの映画、ざまぁ系とジャンルこそ違えど、敗者は勝者に従うしかないんですよ。
戦争ものの映画を見た。侵略者が原住民を配し、爆撃を仕掛ける話だった。そこで争いが生まれた。最終的に勝利したのは原住民の方。侵略者は追放され、見せしめに何人もの輩が虐殺された。
彼女はそれを片手間に見ていた。ある時は端末に目を寄越し、ある時はヘッドホンを片手に曲を聴く。それから何かを書き込む様に指を動かす。集中力のない子供のような見方をしていた。
「……それで内容入ってんのか?」
「入ってるよ。寧ろ考えさせられるから自然と思考が飛躍を繰り返す。当たり前だけど映画館ならこんな事しないから安心してね」
そうして彼女はもの物憂いげにテレビを見た。何かを考える様に視線を動かす。
「歴史は勝者が作るものだよ。敗者はそれに従うのみ。だから仮に敗者に成り下がったとしても、私は勝者を責める事は出来ないわ。だって私が勝者になったら、きっと全く同じ事をするから」
「何が言いたい」
「同じ穴の狢だと言いたい」
彼女ははっきりとそう明言した。それから侵略者が追放されるシーンまで巻き戻し、虐殺シーンを再生する。あまり気分の良くない描写が続いた。縛り上げられた人間が火炙りにされる様、切れの悪い鉈で何度も何度も肉を絶たれる様。人間の残虐性がこれみよがしに晒される。
彼女はそれを淡々と見ていた。目に色彩はなかった。虚空な穴があった。
「もし仮に侵略者が勝利していたとしても、この歴史は変わらない。同じ様に原住民を見せしめに痛ぶって、見るも無惨な行動を起こすでしょう。それは何も映画の中だけではない。現実だって起こり得る」
彼女が口に出したのは、余りにも人間として生々しい一言だった。なんせ否定しようにも、否定出来ないから。きっと俺も勝者になったら、全く同じ事を行うのだろう。そこに何の罪悪感もなく、ただ己の京楽に酔って。
「こういう映画を見ていると、とある曲を思い出すの。タイトルは『正当的虐殺』。あれは勝者の視線を歌った曲。本当に上手いと思っただけ」
そう言うと、彼女はヘッドホンと端末を俺に寄越して去った。
渡されるがままに、曲を聴く。アップテンポなリズムに任せて酔狂な声音が鳴り響く。歌詞は彼女が称した様に勝利が敗者を弾圧するという内容。
人の思想は、本質は、様々な部分に溶け込んで、剥き出しにされる。フィクションを面白く感じるのは、潜在的に反映されているからだろう。
旅系の動画見るのが凄く好きなんですけど、本日は胸が締め付けられました。
それが例え形式ばったものだとしても、思いを伝えて下さっただけで切なくなりました。
そこからふと浮かんだのは、とある映画と曲。
どちらが勝敗を決めるかはあまり問題じゃないんです。
強い人が勝とうが、弱い人が勝とうが、そこは大事じゃない。
結果論で勝者だけが、思うがままに振る舞えるんです。
戦争の映画だけじゃないですよ。
馴染み深いのだと、ざまぁ系ですかね。
あれも特定の人物だけが完全な勝者じゃない。
勝者、敗者の立場が二転三転しますから。
心地のいい言葉と居場所は勝者にだけ与えられた権限ですよ。
ただ勝つしかないんです。