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第九話(5~6の途中まで)

「へ、変形した!?」

「驚くべきは、まだまだこれからだッ!」


身体から大砲を生やした奇怪な料理人は、地上からの驚きの声に応えると、更なる変化を起こし始めた。

すなわち、それは二門の大砲を用いた……


「砲撃せよ!ペレケテンヌル【柳刃】および【骨スキ】!」


砲撃である。

邪苦の命令と共に、右の大砲からは赤い閃光、左からは雷撃が放たれた。

二つの光は海を貫き、轟音を周囲に響かせた。


その瞬間、海は二つに割れた。

そして膨大な熱量は海を蒸発させ、もうもうと湯気を立ち昇らせたのだ。


そうしてむき出しになった海底には、上からの光を反射する照り返しがあった。


黄金の輝き。

水底に眠っていた黄金の鉱脈である。


「なんという威力だ…」

「だが、アレでもまだ【オルカ】を仕留めきれていないぞ!派手に海底を掘ったところで、これでは意味がない!」


島の人々が騒ぐ中、話題の中心人物である半機械のコックは冷静だった。


「これは単なる下ごしらえに過ぎんよ。まあ、もう少々待つんだな」


まず、邪苦の脚に生えている銀の回転翼がさらなる猛回転を起こして疾風を巻き起こし、その身体を遥か空の高みまで持ち去った。

続けて、背中から突き出した二本の金属棒が、それぞれ変形。

二種二門の大砲へと変化したのだ!


そう、その輝き、それこそが希少なる水晶【チリー・クリスタル】の刃を持つ伝説の包丁【コルセスカ】であった。

水平に伸ばされた邪苦の右腕に握られたその刃は、あたかも彼の右腕の延長であるかのように見えた。


「おい、やめろ!さっきの話を聞いてなかったのか!」

「そうです!その包丁を使うのは危険すぎます!」

「そうだ、それは私がビックビジネスで大金を稼ぐための大事な資本なのだぞ!」


島に集った人々が口々に叫んだが、宙に浮く半機械の料理人は、全くの無反応であった。


わずかな静寂がその場を満たす。


そして


「フッ!」


鋭い吐息と共に、邪苦は眼下の【オルカ】目掛けて飛びかかったのだ!

それはさながら、鋼鉄の隼であった!


一瞬。


それは一瞬だった。

鋼鉄に身を包んだ料理人が影となって飛びかかるや否や、

青い閃光が、天地を走ったのだ。


その青い光は、黒い影と紺碧の海をつなぐ細い糸であり、まるで救済のために神が創り出した天に至る道のようであった。


雷鳴か!?


それを目撃した者たちは、誰もがそう思い、閃光の後に続くはずの轟音を予想して身構えた……


だが、一瞬の閃光が消えた後に残されたのは、ただただ、静謐な空間だけであった。


世界は、沈黙していた。

あまりの衝撃に言葉を失ったかのように。


「な、なにが起こったのだ!」


商人たちがうろたえる中、陸の上ではただ一人だけが、その一瞬に何が起こったのかを把握していた。


その彼は、真っ直ぐに天を指さした。

いつのまにか、そう彼以外誰も気づかないうちに、そこからは、何か、巨大なモノが降ってきていたからだ。


それは、最初は巨大な一つの大きな黒い影だった。


先ほどの料理人か?

いや違う、彼は気づけばその大きな影を見据えて、もっと手前に浮いていた。


では、何が?


島の人々が事態を見守る中、大きな影はさらなる変化を遂げる。


割れた。


いや、増えたのか。

それまで一つの大きな固まりであった影が、いくつもの欠片に分かれて、その身を裂いたのだ。


その分断は『割れ砕けた』というには、あまりに異様だった。

離れ、千切れたその断面が、どう見てもきれいな直線だったのだ。


それは、『割れた』というよりも、もっと適切な表現があった。

そう、あれはまさに……


「斬ったんだ」


異世界人・橋本八助は断言した。


「あれはさっきのオルカだ。あの機械のおっさんが、さっきの一瞬でオルカを無数の欠片に斬って、そうしてあそこまで跳ね上げたんだ」


それが、島の上に居た人々の中で、少年ただ一人だけが目撃した真実であった。

優れた動体視力を持つ彼の目だけが『その瞬間』を目撃することが出来たのだ。


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