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第八十九話(その2の11の途中まで)

「…ハハ、おかしいな。

暴力は昔からオレの担当だったのに、いつの間にか立場が逆転してるとはな…」


「…貴方は、昔から思考や交渉の担当でしたよ。

ガドの時も、その後の『商会』結成の時も、暴力担当のふりをして、いつも最善の方策を考えたり、酷いことにならないように交渉しようとしてたじゃないですか!

あの、ボクの初めての飛び込みの時だって!」


…舟の中、仰向あおむけに倒れながら、なんだか照れくせえな、と思っていたら、急に雨が降ってきやがった。


しかも、この雨、なんだか生暖かくて…塩辛い。

コイツは……


「泣いて、いやがるのか、ハシバミ?」


「悪いですか!

ええ、泣いてますよ!

どうせボクは昔から泣き虫です!

貴方のようなすごいヒトでも、周囲の圧力に負けたり、罠にはめられてこんなことをさせられるなんて…!

それが悔しくて、悲しくてたまらないんです!

悪いですか!?」


「…いや、そうは思わねえよ」


どうしてこうなった……


なんで、殴られたオレじゃなくて、殴ったアイツの方が泣いていやがるんだ?


あまりに意外な展開で、オレはしばらくあっけに取られたままだった。


…だが、いつまでもそうしているわけにもいかねえ。


オレはヤツに、やぶれかぶれで、ある提案をしてみることにした。

ヤツを殺せない以上、取れる選択肢は一つしかない。


「逃げろ、ハシバミ」

「…!?」


困惑するヤツに対し、オレは説明を重ねる。


「亡命しろ。

西の国あたりが良いだろう。

あそこは北方とつながりが薄いから、『長老衆』の手がおよぶ心配もねえ。

『商会』の長という名目を活かして、自分を売り込んで守ってもらうんだよ…!」


「で、でもそんなことしたら…!」


「まあ、間違いなく戦争の火種になるな。

『商会』の握る利権は、もはや国際情勢を動かすレベルだ。

交易ルートや無数の取引先とのコネに加え、石炭に新開発の石油の採掘、武器や兵器にインフラ、そして食生活を大いに向上させる調理家電や新型冷蔵庫の研究!

今や、戦火で失われたメクセトの技術を、一番再現出来ているのは、お前たち『北方商会』だろうさ。

そして、その長が東西どちらかの一国と結びつくとなると…それは世界を制覇出来る“メクセトの後継者”の誕生すら意味するだろうよ。

そんな優位なポジション、他国に許すヤツは皆無だろう」


「つ、つまり、ボクが亡命すると…」


急激に青ざめた親友の顔を見ながら、オレはうなずいた。

コイツも頭は良いんだが、どうにも自信不足で、自分のことを軽く見る癖があるからな。

生来のお人好ひとよしもあって、今、自分がどれだけ危険な立場にいるのか、気づいちゃいなかったんだろう。


だから、まずここではっきり教えてやらねえとな。

これは、これからコイツが覚悟するべき、確度の高い未来予測なんだから。

それが、親友に渡してやれる最期の贈り物って、ヤツだろうさ。


と、いうわけでオレは断言した。


「『世界大戦』だ。

お前が東西のどこかに亡命すると、その国をめぐって『世界大戦』が起きる」


「なっ!?」


「だがまあ、そう心配するこたぁねえ。

大丈夫だ」


そう、オレは別にコイツを不安がらせるためにこんな話をしたわけじゃない。

安心できる材料はちゃんとあるんだ。


「えっ!?」


「北方の盟主になりそうなウチの領主様は、元々専守防衛派だし、反メクセトの『長老衆』も参戦はしねえ。

だから、お前が故郷と戦うようなことは、絶対にねえよ。


せいぜい、北を除いた残りの三方が、全力で殺し合い、暗殺者や工作員を送り合うくらいだ」


「…え?」


なんだか呆然ぼうぜんとしたままのハシバミに、オレは説明を続ける。

もちろん、話し相手を安心させるために、笑顔を作ってみせることも忘れない。


「たとえ国際情勢がどれだけ混乱していても、お前個人としては、どこかに引きこもって毒にさえ気をつけていれば問題は無い。

いやー、お前が貧乏育ちで、粗食好きなのが幸いしたな!

珍味だと騙されて毒を盛られるようなおそれは無いし、料理が毒味で冷めてもだいじょ…ぶべらっ!?」


そこでオレは再び殴られ、船底にうずくまった。

あれ?

オレなんか悪いこと言ったか?


「自分を切っ掛けに世界中を混乱に巻き込んで、そのどこが“大丈夫”なんですか!

それだったら、『長老衆』の方々が命令したように、ボクを殺すのが正解ってコトになっちゃうじゃないですか!」


「そ、それなら…南へ逃げろ。

それならたぶん…いや絶対、『世界大戦』は起きない」

「…なんでそう言い切れるんですか?」


「南は元々、スパイスやナッツの交易で十分豊かだからだ!

東西の大国も、【南方大帝国】には手を出せないし、無数にある島々へ逃げ込んじまえば、暗殺される心配もない!」


「…へえ?

けどそれなら、なんで最初からそっちの案を言い出さなかったんですか?」

「そ、それは…」

「なんでですか?」


ええい、コイツ、相変わらず余計なところでばかり頭が回りやがる!

とはいえ、ここで黙り込むわけにもいかないので、解説してやることにする。


お前が聞いたんだから、覚悟しておけよな!

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