第六十三話(49~50の途中まで)
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「それ、ボクのせいですよね…い、いったいどうおわびすれば!」
「だから、そういうのはいいんだって。
乾貨を払ったのはオレなんだから、オメーは、ただ、いたたた!」
「だ、だいじょぶですか!?」
「ほら、湿布貼ったげるから、じっとしてなさい。
まあ、アンタにはそのたんこぶの方が良い薬なんでしょうけど。
これにこりたら、もう無駄使いとかしないでお父さんお母さんの言うことをよく聞くことね」
反論したかったが、たんこぶが痛すぎて、ロクにしゃべれなかった。
あの時、勢いよく駆け出したまでは良かったのだが、半日もしないうちにオヤジに見つかって殴られたからだ。
他にも、しばらくのこづかい無しと今日の食事抜き、オヤジの手伝いに料理勉強の増量と罰は多いんだが、今のところこの痛みが一番こたえるなぁ……
と、痛みにうずくまっていたところ……
ボロきれ、改め元奴隷の…ええっとハシバミ?がなにやらしゃべりだした。
「ぜ、全部ボクが悪いんだ!
今すぐ奴隷商人さんのところへ行って、奴隷に戻ってきます!
そうすれば、商人さんもテツモリくんの乾貨を返してくれるかもしれ…」
「ふざけんじゃねぇ!」
「ふざけるんじゃないわよ!」
あまりにふざけた発言に、オレはもちろんブチ切れた。
だが、オレより更にブチ切れたヤツがいるようだ。
あーあ、ナギサを怒らせちまいやがって。
もう、どうなってもしんねーぞ。
「良い?
あなたが責任を感じるのも分からなくもないわ
けど、だからって、そうやって自分を犠牲にしても、何の解決にもならない」
「で、でもボ…」
「話は最後まで聞きなさい。
たとえアレが間違いだったとしても、それはテツがやった失敗よ。
あなたのせいじゃない。
アイツの失敗はアイツの責任、罰はアイツが受けるべきだし、それをあなたが代わりにやるのはお門違いというものよ。
だから、この話はこれで終わり。
それにおじさんも、テツのお父さんも、そういうことで契約を済ませちゃったから、もうあなたが戻っても払った乾貨は戻らないわ。
だって、あなたもまだ子どもじゃないの。
契約は大人がするもの。
確かに、コイツが勝手にやった無駄使いは無効に出来る。
だけど、大人のおじさんがやった取引までは、そうはいかないわ。
おじさんは、この村一番のモリ漁師で信用もあるし、なにより、村長とうちのパパまで契約の保証人として担ぎ出しちゃった後だもの。
もう、地獄から暴君メクセトが蘇ったとしても、どうにも出来ない。
たから、自分を『返品』しようとか、そういうことは諦めなさい」
「い、いや、だっ…」
「返事は?」
「は、はい…」
ずいぶんとまあ、長い話だ。
結局、“オレたちがカタをつけたから納得しろ。いいな?”しか言ってねーじゃねえか。
二、三発殴るなりして、もっと短く済ませらんねーもんかなぁ?
まあともかく、“説得”は終わった。
となれば……
「よし、話は終わったし、遊びに行こーぜ!」
「良いわけないでしょ!アンタは、もっと反省してなさい!」
殴られた……
なぜだ?
まあともかく、オレたちは、そんなふうにハシバミのヤツを受け入れ、アイツも少しずつ村になじんでいった。
ああ、最初の目的だったアイツの陸の話?
まあ、それなりには物珍しくて面白かったが…すぐに飽きちまったよ。
娯楽が少ないこの村のことだ。
村じゅうの人間がアイツの話をねだりもしたんだが……
それも、アイツが貧乏で、ロクなもんを食ったことも見たことも無いことが分かるまでのことだ。
そうした熱意も、すぐに冷めちまった。
結局ハシバミは、子どもがいない家にもらわれていき、オレたちの遊び仲間に加わった。
それからしばらくは、なんてことのない毎日が続いていたと思う。
ただ、それでも少しは記憶に残るような出来事も、いくつかはあったっけ。
たとえばそれは、度胸試し(どきょうだめし)のときのことだ。




