第六話(3~4の途中)
巨大な影が、岩島へと迫る!
そこにあるのは、妻か子を殺された恨みか、それとも自らの縄張りを守らんとする単純な本能か。
突然の怪物の襲来に対して、動揺する北辺島の人々。
だが、またしてもそこに冷静さを保つ人物が居た。
その一人は、言わずもがな"神を食った料理人"邪苦。
そして、もう一人は…
「今度こそ!ワタシは今度こそやるのだ!」
それは、飛び出した"包丁王"ブラーサームであった。
その左手には、当然、魔包丁【コルセスカ】が握られている。
「待て、まだケガが!」
「待って下さい!あの【オルカ】の鱗は!」
「待つんじゃ!」
人々が、口々に止めるものの、"包丁王"は止まらない。
ブラーサームは、左手に氷色をした包丁を引っさげ、いざ【北辺海の主】を調理せんと目前の北辺海へと飛び出したのだ!
先程の邪苦の煽りが効いたのか、誰が見ても危険な魔獣へと向かう傷ついた料理人。
煽った邪苦当人は、相変わらず宙から見下ろしていたが、それを気にもせず、というより気にする余裕もない必死の形相で駆け出していく。
狙うはただ一つ、【北辺海の主】
その目的は一つ、ただ己の腕を証明するために。
ブラーサームは、海中の巨大な影目掛け、迷わず飛びかかった!
伏せろおっさん!」
けれど、その突撃は、突如として突進してきた八助によって防がれた。
彼は、ブラーサームに体当りして、その跳躍を防いだのだ。
「な、何をする!ワタシは今度こそ料理人として…」
抗議する"包丁王"に対して、八助は親指で背後を示して答えた。
「漁師の爺さんたちが何かやらかす!今飛び出したら、巻き込まれるぞ!」
八助の指の先では、顔を青くしてうろたえる商人と散らばり乱れる彼の荷物、そして…いつの間にか小舟に乗った老漁師とその孫娘たちが居た。