表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/294

第四十九話(37~38の途中まで)

「そうか、『引っかかり』は、やっぱりそこなのか。

なるほど、なるほどなぁ……」


気づけば、なんだか彼はやたらとしかめっ面をしている。

苦しそうだ。


「な、なんでしょう?どこかお体でも悪いのですか?」


事情が分からない私は、混乱するしかない。


ついさっき、この方が屋根から落ちてきて、それから今の話へと移ったばかり…そのはずだ。


ただ、なんだか軽い頭痛と違和感があるような気もするが……


きっと気のせいだろう。

つらい記憶の再現は、全て終わったのだ。

だからもう、嫌なことは何も無い。


神々は、私の祈りに応えて、奇跡を起こしてくださった。

暗い過去は終わり、一度は見捨てられた【里】の伝統工芸にも再び光が当てられたのだ。


だから、もう何かあるはずもない。

何かがあっては、いけないのだ。


そんなふうに私が考えこんでいたのは、ほんの少しの間だった。


けれどそのわずかな間に、偉大なる『神の使い』様はすっかり落ち着かれたようだ。

その目には、決意の光がある。


「繊細な問題だから、じっくりと時間をかけたいところだが、『前例』を見るにそれじゃ効果は薄そうだしな…。

仕方ない。

どうやら、荒療治あらりょうじをするしかないようだな」


はて?

彼は一体、何をおっしゃっているのだろうか?

何か分かったのなら、一人で納得していないで、教えて欲しい。


それは、別に不安になるからではなく、はっきりしないのが嫌だからだ。

決して、不安なわけではない。


私は強いのだから。

強くなければ、いけないのだから。


「あの、あなたさま?」

「それで良いのか?」

一体何のことを…?


「まだ『心臓』を誰かに食べさせて、自殺するつもりなのか?

やめる気はないのか?」


なんだ、そんなことか。


「……それが私の、私の家系の約目ですから」


「まあ、そう答えるよな。

さて、本題だ」


え?

そこであっさり退くのですか?


「一度だけ聞こう」


はて、彼は今度は、いったい何をおっしゃっるつもりなのだろうか?


「俺を見ろ

お前には俺が、どう見える?」


どうと言われても…

そんなの、子どもの姿に決まっている。


彼が変身したのは、一度だけだったはずだ。

彼は一度、特殊なスパイスの力で若返ったが、そんな特別なことが何度も起きるわけがない。

それともまさか、時間の経過とかなにかのはずみで『元の姿』に戻れていたり……するのだろうか?


私は、目を凝らした。


するとなんと、


「きゃああああ!」


私は、思わず悲鳴をあげてしまった。

改めて見た彼の姿は、ひどいものだったのだ。


まず、目に入ったのは、酷いやけどだった。

彼の身体は、赤く焼けただれ、それは顔から肩に至るまで大きく広がっている。


しかも、それだけではなかった。

それは、まだ『軽い部位』だったのだ。


彼の正面の部位は、夕日のように『赤』かった。

だが当然、夕日は沈む。

その燃えるような『赤』には、明確な境界線があった。


それは、夜が訪れる証。

夕から夜へ、『赤』を『黒』が侵略している国境線だった。


そう、彼の身体の大半は、『夜』の領域は、を占めていたのだ。

彼はまるで、黒い影のようだった。


全身は見えない。

けれどあれはきっと、いいや絶対に、ひどい火傷を負っているに違いなかった。


さらに、それは焼き過ぎた肉のように煙をあげ、ひどい匂いを出していて…


「焦げ、焦げ、焦げて!」


こんなこと、起きてはいけない!

私は、激しく目をしばたかせた。

そうすれば、こんな『現実』、いや悪夢など否定できるような気がして、まばたきを何度も繰り返したのだ。



あれ?まだ焦げて



もう一度!



な、何度でも!





だが、何度まばたきしても、目の前の光景は一向に変わらなかった。


どうしてだろう。

今までは、上手くいっていた。

そのはずだったのに……


疲れ切った私は、そのまま手で顔を覆い隠そうとして…彼に手を掴まれた。


「待て、とりあえず落ち着いて…」


思わず、叫ぶ。


「ひどい!こんな黒焦げじゃ、料理として出来損ないじゃないですか!食べられません!」

「指摘すんの、そこかよ…」


がっくりと肩を落とす彼があまりに気の毒だったので、あわてて声をかけた。


「す、すみません。

でも!やっぱりそれが一番重要と」


だが、その呼びかけもまた、


「まあ、予想の範囲内だけどな」

遮られた。


「え?」


「まずは、ちょっと話を聞け。

現状の確認は出来たんだろ?」


「で、ですが…」


「いいから聞け、焼き加減を心配するのは、料理人である俺だ。

それは、お前の仕事じゃあないだろ?」

「そ、それはそうですが…」


混乱する私をよそに、彼は、あくまで自分のペースで話を進めていく。


「ラム!」


「ひ、ひゃい!」


今度は、両手で頭を挟まれてしまった。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ