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第四話(2~3の途中)

「ラム!薬草と包帯だ!爺さんとイサナは焚き火を頼む!とにかくあっためないと!」


一方、八助の行動は迅速であった。

料理勝負がどうであろうと、まずはケガ人の治療をするのが先だ。

他のことは、後で考えれば良い。


「は、はい!」

「イサナ、薪を集めてきてくれ」

「わざわざ探すより、そこらにあるものを使った方が早いよ!商人のおっさん!祭壇壊しても良いよな?どうせもう役に立ちそうにないし」

「は、え?ええ」


他の人々に指示を出すと同時に、八助自身もブラーサームに駆け寄り手当を試みていた。

だが、その容態は酷かった。

凍てつき砕け散った右手は言うまでもなく、何より傷ついていたのは、その精神であったのだ。


「なぜだ…私は【コルセスカ】に選ばれたはずなのに…なぜだ」


興奮したその口は同じ問いを何度も繰り返し、にもかかわらずその意識は半ば朦朧としている。

ロクな医療設備など無いこの島でこのまま気絶してしまったら、もはや助からないに違いない。

そう考えた八助は、うろたえ続けるケガ人の疑問に答えることにした。

会話を続けていれば、容態が安定するかもしれない。

それは、そうした試みであった。


「角度だ…」

「なに?かく、ど…?」

「そうだ角度が悪かったんだよ。あの刺し身を斬ったとき、最後に包丁が【オルカ】の硬い骨にぶつかっただろ?あの時に、ほんの少しだけ包丁の角度がズレたんだよ」

「そんな…そんなことで…?」

「ああ。その包丁からは常に冷気が出てるだろ?たぶんあの時に角度がズレて、一瞬だけその冷気がアンタの手に触れたんだ。選ばれたとか選ばれてないとかそんな話じゃあない。アレはただの事故だったんだよ」

「そうか…」


衝撃の真実に、”包丁王”はかえって納得して落ち着いてきたようだ。

この会話の最中にも、周囲の人びとは治療に力を尽くしていたこともあり、その容態は安定を見せ始めた。

漁師の老人と孫娘がおこした焚き火、ラムと八助の手当、悪徳商人が渋々出してきた『血液を増やす食材』など、その治療が適切で迅速だったのが功を奏したのだろう。


だが、落ち着き始めた”包丁王”とは真逆に、興奮し始めた者もその場には居た。

皆がブラーサームの治療に奔走するなか、ただ独り虚空にたたずんでいた男。


「ジャークックックッ!アレを見抜くか。少年、よくぞ見抜いた!」


言わずと知れた人物。

"神を食った料理人"邪苦である。


「オルカを解体した斬撃を見抜いたのみならず、負傷の原因をも推理するとは!治療の迅速さや周囲の者への指揮も見事である!」


「ブラーサームさん、さっきのオルカの骨と商人のおっさんの【増血コンブ】でスープを作ってみたんだ。ありあわせの砂糖と魚醤で味付けしたからマズいかもしれないが食ってくれ」

「とっさにそれだけの調理をこなすのも悪くない。料理の質自体はまだまだだが、その調理法は実に的確だ」

「今アンタの身体からは血と体温が失われているんだ。なにより先に、栄養をつけて身体をあっためないとな」


"神を食った料理人"は、ほがらかに八助に語りかけたが、その言葉は見事に無視されていた。

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