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第二十八話(20~21の途中まで)

そして、半機械の料理人は、高圧的な態度で見下ろし。言い放った。


「では、早速君の実力を見せてもらおうか」


それこそが、ついに告げられた、決戦開始の合図。

張り詰めた島の空気が、更に緊迫の度合いを高める。


だが…それに返されたのは、なんとも気が抜ける返答であった。


「その前に、ちょっと聞いていいか?重要なことなんだが」


決戦直前、この張り詰めた空気の中で、なんと質問である。

あまりにも、今更過ぎる言動アクション


思わず、腰砕けぎみになる【北辺島】の一同であったが、それでも気を抜かない者もいた。

言わずとしれた質問の対象者、半機械の料理人、邪苦である。


「なにかね?質問に質問で返すとは、君もまた…」

「なあに、大したことじゃない。すぐ済むよ。」


厳しく咎めるようなその発言を遮り、八助は口を開いた。

この期に及んで、一体、なにが語られるのか。

【北辺島】の人々のまなざしは、否応なく一点に集中せざるを得ない。


異世界人の料理人、橋本八助。

唐突に現れた"異物"(ヨソモノ)である邪苦に対抗できるかもしれない彼は、まさに今、この【島】における英雄、希望の星なのであった。

だが、そうして高まった期待は、当の"希望の星"の発言によって、一変することになる。


「料理勝負なんだが……延期にしないか?」

「ハァ!?」


その発言に、商人は思わず叫び、漁師の老人とその孫娘はあんぐりと口を開け、半機械の料理人は片目を不気味に光らせた。

そして、突然突き飛ばされたのようによろめいた【羊人】の娘――ラムは、反射的に問いを投げかけた。


「は、八助様、どうしてそんなことをおっしゃるのですか!?」

「なあに、相手がこれだけ大物なら、もっとちゃんとした舞台で戦った方が良いんじゃないかと思ってな。それに、ここは【コルセスカ】の試練の場所なんだし、別の勝負をするなら、場を変えて仕切り直した方が良いだろ?」


「そ、そんなことで・・・」

あまりに気楽な返答に、さらによろめく羊娘。

だが、異世界から来た少年は、長旅を共にしてきたパートナーのそんな姿に構うことなく、ただ不敵に笑っていた。


その姿はまさに異邦人のものであり、それは、彼もまたこの【食卓界】に属さない"異物"であることを、一同に改めて思い起こさせるものであったのだ……!





……実のところ、その時、八助は、密かに大量の冷や汗を流していた。


(プレッシャー、すげぇキツイ……これでなんとかごまかせていれば良いんだが……)


不敵で"異物"な"英雄候補"それが、今の少年が演じるべき役柄である。


外面からは不敵に見える少年だが、その実、彼の内部には、余裕などカケラも存在していなかった。

彼にあるのは、ただ焦り、不安、そして……


(ラムの親父さんやマトマトンの兄ちゃんから託された以上、なんとしてもラムは…ラムだけは守らないとな)


ただ、その誓いひとつであった。


そんな八助には、わずかだが計略があった。


あの邪苦という料理人は、絶対に自尊心プライドが強いタイプだ。

さっきから、やたらと挑発したり、自分のことを話したがったりするのは、その現れであろう。


強すぎる自尊心、あるいは、劣等感や屈辱感の裏返しとしての誇り高さや闘争心。

すなわち、それらは少しでも"弱者"や"臆病者"と見られることを、激しく嫌悪するような性質に、他ならない。


八助が見るところ、半機械の料理人は、間違いなくそんな人間だ。


なぜ、少年がそんなことを確信出来るのかと言えば……


(なぜなら、俺だって、わりとそんなタイプだからな!)


つまり、そういうことであった。


その推測が正しいなら、八助ならどうしても動かされてしまうような振る舞いを見せれば、同類である邪苦を思うように動かすことだって出来る、そのはずである。


【刃の鏡】によって己自身の弱さと向き合った少年の、これが必勝の策なのであった。


(さーて、上手く行ってくれますように…)

少年は祈った。

こちらの動作アクションは終わった。

後は、相手の色良い反応リアクションを待つばかりである。


八助は、今はただ、目の前の脅威の観察に専念することにした。

その時、少年の背後からは、相方の羊娘がすごい視線で睨みつけていたのだが……それはそれ、これはこれである。


現状で下手なことをすれば、相手の不興を買ってしまいかねない。


(それを考えれば、こちらからは動けない。さて…どう返す?)


プライドを刺激された相手が、自分の思い通りに動くこと、想定された結果を、ただじっと待ち構える。

それは、一見最良のアイディアに思えた。


だが…少年のそんなスタンスの中に、知らず識らずのうちに油断が含まれていたことは否めないだろう。

結果として、少年は、すぐにその考えの甘さを痛感させられることになる。


最初にそれに気づいたのは、二人の対峙を見守っていた島の人々であった。

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