第十三話(8の途中まで)
もはや島の誰もが知るように、彼は、ただの変人料理人ではない。
半機械料理人の邪苦は、ついさっき、これまで誰も倒せなかった【北辺海の主】をあっさり倒しただけでなく、いとも容易く海底の金脈を加工し、【主】を捌いて壮大な料理を成し遂げたのだ…!
料理の実力はもとより、その戦闘力も隔絶した存在であることは明らか…!
彼は、"神を喰った"と豪語するに相応しい強者なのだ!
その男の気分が少しでも悪くなれば、無礼な少年など、一瞬で灰にされてしまうに違いない…!
北辺島に、再び緊張が走った…!
その時、ある者は、たとえ不可能でも八助を守ろうと身構え、またある者は少年の不作法をとりなそうと邪苦に向き直った。
戸惑い続ける者や、思わず逃げようとした者までいる。
そんな中、嵐の中心である当の邪苦が示した反応は、意外なものであった…!
「ジャークックックックックックッ!」
そう、それは笑い。
八助によって、またとない機会を邪魔されたはずの料理人は、彼の言葉に笑いを誘われていたのだ!
そして、彼が続けて放った言葉と行動に、北辺島に集った人々は、更なる驚愕を抱くことになるのであった…!
「良いだろう!ならば食べ比べと行こうか!吾輩としても、せっかく作った料理を食べてもらえないのは悲しいのでな!」
そして半機械の料理人は、指を鳴らした!
その音は、暗色の天と地で挟まれた北辺島に響き渡り、そして…!
島の人々は、三度驚愕することになる…!
その時、北辺島に激震が走った……!
比喩ではない。
実際に、大地が揺れ、人々は思わずよろめいたのだ!
「な、なんだこれは…!」
「地震!」
「あわわ…タタリですぞ!邪神を食べたりなんかするからバチが当たったのです!」
「邪神食あたりですね…!」
そして今回の変異においても、その正体をいち早く見抜いたのも、また異世界人の少年・八助であった。
彼は、再び水平線の彼方を指差す。
「見ろ!皿が動き出したぞ…!」
そう、それこそ地震の正体であった!
先程その正体を解説されたばかりの巨大な"黄金の皿"が、その製作者の指示に従ってひとりでに動き始めたのである…!
沖合から北辺島めがけて波しぶきを立てながら移動してくる"黄金の皿"は、どう見ても豪華な客船かあるいはこの世界に存在しない空母のようであった。
その外見は威圧的だが、"皿"が人に向けて移動するとなれば、どのような世界でもその理由は限られるだろう。
すなわち…
「どうやら、食事の時間ということか」
"皿"を見た老漁師が、そうつぶやいた。
そう、そういうことになったのである。




