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第百話(その2の19の途中まで)



その時ーー私は、思わず声を上げていた。


「どうして!どうしてそうなるんですか!」


映像が止まり、視点が離れる。

そこで私たちは、現在に立ち返った。


なおも叫び続ける私の言葉だけが、その変化によって時間の流れを作り出していく。


「事情は分かります!

私だって、名誉を第一に考える英雄の家系の娘ですから。

テツモリさんの想いも分かるつもりです。

大切な人を守れなかった後悔も、果たすべき義務の重みも、誰よりも知っている自負はあります。

けど…」


そこで私の話は、思わぬ言葉によってさえぎられた。


〈なぜ止めようとする?

お前さんは、この時のオレと同じじゃないのか?〉


「えっ!?

そ、それは…」


〈またそうして口ごもるのか。

ラムのお嬢ちゃんは、こういうとき死んででも義務を果たそうとする側じゃないのか?


そういうふうに決めていたから、今死のうとしてるんじゃないかって、オレは聞いてるんだよ〉


“テツモリさん”は、なんだか怒ったような口ぶりだ。


それも仕方ないかもしれない。

私自身、こんな自分がほとほと嫌になっている。


けど、それでも。


「死にたいわけがないじゃないですか…」

こんな私にだって、言いたいことの一つや二つはあるのだ。


〈んん?

もっとはっきりいってくれ。

悪いが、ジジイは耳が遠いもんでなぁ〉


このヒトは全く… ここまで厳しくされるのは、久しぶりだ。


まあ、その理由は全部私の方にあるから、非難する気にはなれないけれど。


もういい。

こうなったら、勢い任せでいいからなんでも言ってやろう。

論理的じゃないかもしれないし、不条理ではあるかもしれないが…私だって怒っているのだ。


「私は!

目の前で次々と大切なヒトが亡くなっていって!

ずっと大事だって言われてきた一族の使命も、ある日突然なくなって!

どうしたらいいか全く分からなくて!」


ひたすら叫ぶ。


「ついに神々が願いを聞き届けてくださって!

私の重荷を引き受けてくれる救世主様が、いらっしゃったと思ったら、また私のせいで…私を守ろうとして…亡くなってしまって!」


〈おい、嬢ちゃん。

 ハンカチいるか?〉


いりません。


涙が出てきてしゃべりづらいのは否定出来ないが、今はただひたすら全てをぶちまけたい。


ただ、そろそろしんどいのも確かなので、最後は一息で一気に語りきることにする。


「しかも、救世主様は幽霊だかなんだか分からないけど、私に今更自由に生きろとか投げやりなことをおっしゃるしーー」


大きく息を吸い込んでーーぶちまける。


「もう何も分からないしどうにもならないけど、テツモリさんが自分の子供を捨てていくところなんて絶対見たくありません!

そんな場面、飛ばしてください!

あと、まだ間に合うならすぐにお家に帰ってください!

嫌なものは私がどうだろうと絶対に嫌なんですーー!」


それが、追い詰められ、私が吐き出しきった本心だった。

ふう、すっきりした。


〈なるほど、それがお前さんの本音か〉


「あ、いえごめんなさい。

なんだか急にまくしたてしまって」


〈いや、それで良い。

自分の本音と向き合うのは、大事だからな。

それをやっておかねえと、後で後悔することにもなりかねねえ。

…このオレみたいにな。〉


「それはそうかもしれませんが…でも、さっきの私の言葉は…あんまりにもまとまりがなくてワガママで…何が最善かとか、そういったことも全然考えてなくて…」


そんなふうに愚痴ぐちっぽくなってしまった私を、彼は優しくたしなめる。


〈良いんだよ、そんなこたぁ。

商売トリヒキにしろ、政治よりあいにしろ、まず最初に、関わるヤツら全員が本音をぶち撒けちまわねえと、結局は話がまとまらねえんだから。

そういやお嬢ちゃんは、結果が分かっている話はつまらないから聞きたくないとか、言ってたが…どうだ?

人間の腹ん中なんて、案外ぶち撒けてみなけりゃ分からねえもんだろ?

結局、実際に生きてみなけりゃ、自分てめえが何を感じてどう思うか、なんて分かんねえもんなんだよ。

なぁ?〉


「それは…そうかもしれませんが…

でも、実現性や論理が無い意見なんて…そんなの、ただのワガママです。

他人ヒトの事情、特に運命や名誉などの話を、そんな“ただ嫌だと思ったから”なんて感情のゴリ押しで拒否するなんて…それじゃあまるで、泣きわめく子供じゃないですか」


〈やっぱり、自分が子供ガキだっていうのは、嫌なことか?〉


「嫌です。

だって、子どものままじゃ、『正しい』選択が出来ないじゃないですか……

感情のまま進んでも、それが間違っていたら、ただ傷ついてみんなに迷惑をかけるだけで終わってしまいます。

それはまあ…私の『里』みたいに…いいえ、昔の『里』がそうだったように『正しい』選択があらかじめ用意されているような場合の方が、珍しいのでしょう。

それぐらいは分かります。

けれど、それでも…それでも、私は『正しさ』を求めることをやめられないのです。

母が求めた『正しい』選択、『正しい』道…それを証明すること、それだけが…彼女に報いることが出来る唯一の方法のように思えて…ならなくて。

たとえその『正しさ』こそが、母を追いつめ死に追いやったのだとしても……」



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