時を止める能力とかいうありがちで最強すぎる能力の対処法
「ククク...よくきたなあ。俺はあの中で最強だ」
そいつはそういいながら自慢の緑の髪を撫で下ろしした。この男はとある組織のメンバーだ。そして他にメンバーが何人かいたのだが、全員やられてしまった。そしてそのメンバー全員を倒したのは緑髪の男の目の前にいる勇者の少年。
この勇者の少年は組織の目的を邪魔するべくこの緑髪以外を全員倒したのだが、今、組織の中でも最強の死刺客とも言える緑髪の男が立ちはだかっていた。
「後はおまえだけだ!!他のやつのように...」
「そううまくいくかな?」
そう言いながら緑髪の男は歩きだした。ただ歩いて勇者の少年の元に向かっていくだけで無防備とも言える状態だったが、その男は指を一度パチンと鳴らすと、勇者は動かなくなった。
「ククク...」
そう笑みを浮かべながら止まっている勇者の横を悠々と通過してもう一度指を鳴らした。すると勇者は動き出したのだが目の前にいたはずの敵が居なくなっていることに気づき困惑する。そして後ろを向いてその敵を確認するとさらに首を傾げた。
「はっ!?お前どうしてそこに!?」
「さあ?何だろうな当ててみろよ」
「くっならもう一度やるまでだ!!」
もう一度勇者は襲いかかってくる。だがその男が指を鳴らすたびに勇者の動きは止まってしまうのだ。
「くくく...お前は一生勝てない。この時を止める力の前では無力なのだ」
この男のその力は時を止める。バトルものにおいて最強とも言えるような能力だ。一度指を鳴らせば時が止まり、もう一度ならせば戻る。これによってあらゆる攻撃を全て避けることができるしこちらの攻撃は避けることができない。最強とも言える力だ。
「この力に勝てるものは誰もいない」
「何!?」
時を戻して勇者にそう言う。もちろん勇者の方は何が起こっているのかわからないため時が止まっているなどとは夢にも思わないだろう。
「クソ!ここやろう!!」
何度も勇者は攻撃を仕掛けるが何度も時を止めると全くと言っていいほど攻撃が当たらない。
「もういいか?」
そう言い反撃を一撃。勇者というだけあって主人公なのでここで倒してしまうと話が終わってしまうためなるべく死なないような攻撃をする。よくある一度負けて修行するという流れになるだろう。「それまで暇だな」と男は呟いた。
「よお」
そこからしばらくして、物語が進み、男は再び主人公に相対する。その再びあった主人公の姿は前とは違うものだった。顔つきは凛々しくなり、男前という感じだ。これなら互角以上で戦えるという嬉しさに男は笑みを浮かべる。
男はまたパチンと指を鳴らして動きを止める。やはりというべきか主人公は全く動かず静止したままだ。
「なんだ、同じじゃないか...ん?」
一瞬、主人公が動いたような気がする。少し様子を伺い眺めてみるが、気のせいだったようだ。気のせいだとわかり後ろを向いたその瞬間だった。何かの一撃が男を襲う。それを放ったのは他でもない主人公だった。
それを見て嬉しそうに男は剣を交える。激しい攻防の末、ついに男は倒された。主人公の凄まじいパワーで時止めを無力にするという力技に敵わなかった。少し強引だがこの手のチートすぎる能力にはそのぐらいないと対抗できない。
「くくく、良い戦いだった」
男は負けながらも嬉しそうだった。自分を打ち負かした相手がいたのだから当然だ。
「物語は進む。あいつに負けようが俺のこの最強の能力は後から出てきたキャラに負けるはずがない。クハハ...どんなやつと戦えるか楽しみだ」
そういいながら男は高笑いをしていた。
「あーこいつどうしようかな」
とある作品の作者は困っていた。自分で作り上げたキャラクターの扱いに困っているのだ。それは時を止めるというよくありがちだが最強の力。何とか強引に主人公に勝たせたが、扱いがどうしようもないのだ。そして作者は一つの案を思いつく。
「そうだ、なかったことにしよう。もう出さないでいいや」