009_アリステリオ殿下との出会いと洗礼
あれから半年経った。
ミヤコは優雅に紅茶を飲みながら、頑丈なログハウスでくつろいでいた。
魔法とプログラミングを組み合わせられるなんて、便利よね。
生活のほとんどを自動化できるようになったわ。
血を吐くような苦労が必要だったけれど。
そろそろ、誰かに会いたいわね。
脳内パソコンと無限インターネットのスキルで、
*この世界がアブという名前であること
*今いる森が世界の1/3を占めていて、人が住めない未開の地だとされていること
*最寄りの街が、ここから300kmほど離れた距離にあること
を知ったミヤコは、
空飛ぶ車エアカーを無詠唱で作り出すと、街に向かって飛んでいった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
街外れにエアカーを下ろしたミヤコは、誰かに会えることを期待して、出会い補助チケットを使った。
(半年の試行錯誤によって、出会いの対象を異性限定ではなく、人族であれば同性にも出会えるように、プログラミングのpythonによって改変していた。)
少し経つと、近くで人の息遣いが聞こえた。
誰かいるのかしら?
ミヤコがじっと音がする方を見つめると、そこには横たわった若い男性がいた。
大怪我をしているじゃない!これは急がないと危ないわ。
まずは消毒をして、治癒術をっと。
ミヤコは、手早くログハウスを設置し、治療した男性を看病することにした。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
拾った男性は、おそろしく綺麗な顔立ちをしていた。透けるような白い肌。スッとした鼻筋。薄い唇。金色の髪に180cm以上はありそうな身長。鍛え抜かれた筋肉。
ただ、身体中に残る無数の傷跡と腕に青い輪のようなアザがあった。
何か事情があるのかもしれないわね。
早く治るように、少しでも傷が薄くなるように、最善を尽くしましょう。
毎日、丁寧に看病し続け、1週間すると、男性が意識を取り戻した。
「んっ。。。ここは?」
「気がつきましたか?ここはイトカールの街のすぐそばの森です。あなたが倒れていたので、勝手に治療しました。お加減は大丈夫でしょうか?」
「そうだった!私は毒を盛られて森に捨てられたところを、ジャイアントベアーに襲われて。。はっ、あの時の傷や毒が消えている???
キミは見たところ、10歳くらいかな?ご両親が私を保護して治療してくれたのかな?」
ミヤコは、親は亡くなっていていないことやずっと前から森に住んでいたことを説明した。すると、男性は哀しそうな顔をしてこう言った。
「私と一緒に来ないか?キミさえ良ければ、うちの屋敷で保護したい。まずは自己紹介だね。私の名前は、アリステリオ・フォン・レオナータス。レオナータス国の第2皇子だ。キミの名前は?」
「ミヤコ・ハルウミです。ずっと森に住んでいました。なので、街の情報をほとんど知りません。もし無礼があったらお許しください。」
「そんなこと気にしなくて大丈夫。ミヤコは命の恩人だからね。
ところで、我が国では、ミヤコというのは男の名前なんだ。
その名はおそらく異国のご両親がつけたものだろう。洗礼は受けたのか?」
どうやらこの世界では、幼少期の名前は親がつけ、真名は神にもらうものらしい。10歳になると皆が洗礼式を受けて、真名をもつそうだ。
アリステリオ殿下に連れられ、ミヤコは教会を訪れ、洗礼を受けた。
「あなたには、ジュリアンヌ・ミヤコ・ハミルトンの名を与えましょう。日々の鍛錬、今後も頑張って下さいね。」と無事に真名をもらうことができた。
ミヤコは名をジュリアンヌと改め、アリステリオ殿下の自宅、レオナータス国の王宮に行くことになったのであった。
(続く)