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雨は透き通った空の水
雨が降ると、昔のことを思い出す。
赤い傘を思いだす。
雨の日にはいつも君は赤い傘。
あの日、遠くにたたずむ君を見た。
雨に鈍く霞む風景の中、傘の赤が切り抜かれたように浮かび上がっている。
僕は少しだけ足を速める。地面の水が音を立てて跳ねた。
そばまで来ると、赤い傘の下、彼女は顔を上げている。
幕のような雨が、僕たちの間に降り続ける。
僕に気づいた彼女がこちらを向いて口を開いた。
「ねえ見て、この雨、神様のおしっこみたい」
なんでやねん。
彼女は雨を受け止める赤い傘を見上げて微笑む。
「ほら、ここだけ血尿」
なんでやねん。




