日記執筆マラソン選手権物語
ドーム内に観客の熱気が渦巻いている。
ここは第六回日記マラソン選手権の会場。
全国から選ばれた日記書きが己の日記パワーをフルに発揮して鎬を削っている。
選手の一人、田中はノートパソコンの画面を眺めながら両手をせわしなく動かしている。
地元で日記四天王と呼ばれたりする実力者だ。
そんな田中の目には今日の出来事をつづった画面が映し出されている。
今日の日記はこれでいいか……やや満足げに田中はキーボードから手を離した。
「甘いですね。田中君」
「何ッ?」
挑発的な声に振り向くと、地元で日記四天王と陰口をたたかれている山本が、眼鏡をクイッと左手の中指で押し上げている。
「ノートパソコンなど、電気がなくなればタダの置物……後世に残す日記とはこうやるのです!」
山本は鑿を振り上げ、足元の石板に打ち付けた。
「レギュレーション違反です」
山本は係員に連れ去られた。
「山本ぉー!」
「……ふっ、馬鹿な奴だ」
冷静な声に振り向くと、そこには地元で日記四天王と悪口を言われている佐藤が、長い前髪をかきあげている。
「この大会は日記帳、つまり紙に書くのがルールだ。確認もせず参加するとは愚の骨頂……!」
「えっ?」
田中は自分のノートパソコンを前におろおろしだした。
「そうだ、日記は紙に書くものだ……見るがいい! 我が紙が産まれるところを!」
そう言って佐藤は、持ち込んだ器具で紙を漉きだした。
「レギュレーション違反です」
佐藤は係員に連れ去られた。
「佐藤ー!」
「アイツバカだぜ!」
威勢のいい声に振り向くと、日記四天王筆頭と誹謗されている鈴木が、日記帳を手に笑っている。
「持ち込みできるのは筆記具だけだってのによ! これでライバルはいなくなった! 俺の熟女相手に孫プレイ日記が優勝だ!」
「レギュレーション違反です」
鈴木は係員に連れ去られた。
「鈴木―!」
田中の叫びはドームに吸い込まれて消えていき、R18はダメだった。
あと田中の日記は印刷したら大丈夫だった。




