ちんちん小学校無敵
ちーん……こーん……
か細い鳴き声のようなチャイムが、夜に呑まれる空に吸い込まれていく。
西暦1234無量大数5678不可思議9123那由多4567阿僧祇8912恒河沙3456極7891載2345正6789澗1234溝5678穣9123秭4567垓8912京3456兆7891億2345万6千7百89年、ちんちん小学校は廃校の時を迎えようとしていた。
いくつもの新入生を受け入れ、数多の卒業生を送りだし、生徒達の喜怒哀楽を眺めてきた校舎。時の侵食に曝され風化し続けた建物は、風景との境界が限りなく希薄となり……もはや存在そのものがあやふやな物になっていた。
だが……
人類は滅んでいなかった!(ババーン!)
「遅刻……か」
ちんちん小学校と同じ次元に存在する皮余俊介は、おそらく最後になるであろう夕日を、かすれかけた通学路に立ち眺めている。
「どいつもこいつも先にいきやがって……」
目を細めて落日を見る俊介の脳裏に、郷愁のような何かがふっと通りすぎた。
「縮れ毛先輩、チャック、サブ……」
知らず知らず出ていた声は、どこにも届かないまま消えていく。
遥かな過去の情景が、いくつもの通りすぎた昨日が、どこか遠い所でこだまする。
「兄貴ぃー、兄貴大変だー!」
思い出の中の声はいつも懐かしい。俊介は届かない過去に向かってつぶやいた。
「どうした、サブ……」
「縮れ毛先輩がチャックの野郎に丸裸にされちまった!」
月日が経とうとも色あせない記憶。
俊介は昔のように返事をする。
「そいつは……許せない、な……」
許せること、許せないこと。
思い出したいこと、思い出したくないこと。
それは覚めない夢に、どこか似ていた。
「そうだろうと思って連れてきました!」
「ファファファ、コンニチハ」
思い出の中のサブとチャックは、膨大な日々に塗りつぶされた記憶の割にシャープな輪郭と具体的な存在感を放っていた。
「見てくださいよ兄貴! 縮れ毛先輩の縮れ毛がこんなに!」
「ファファファ、ゴメンナサイ」
在りし日の喧騒を思い出させるようなやりとり……俊介の胸にかすかな痛みがはしる。それは悔恨か、それとも遠い日の回顧か。
思い出の中のチャックに巻き込まれた縮れ毛は、妙なリアリティをもって俊介に迫ってきた。
「兄貴ぃー!」
「ファファファ、ウッカリ」
胸の痛みは股間にまで到達し、なんかおかしいなと思ってよく見たらブリーフからはみ出した毛と皮がチャックに巻き込まれてた。
「これが……バーチャル・リアリティ……!」
「兄貴変色してるゥー!」
そこへバーチャル美容師が現れて、俊介の背後にぬるりと回り込んで治療を目的としたDNA注入運動。これにて一件落着。




