ちんちん小学校
ちーんコーンかーんコーン。
爽やかな初夏の朝、どこかからチャイムの音が聞こえてきた。
ちんちん小学校の朝は、どちらかというと圧倒的に早い。
「いっけね! 遅刻遅刻ゥー!」
ちんちん小学校卒業生の皮余俊介は、聖なる通学路をのたうちまわりながらはい回っていた。
そこへ風雲急を告げるか告げないか微妙な感じの少年が、腹式呼吸に失敗したような表情で俊介に駆け寄る。
「兄貴ー! 兄貴大変だー!」
「どうしたサブ!」
俊介は発作をおこしたコメツキバッタのように跳ね上がり、サブ(本名山田二郎)を暖かく迎えた。
「縮れ毛先輩がチャックの野郎に巻き込まれて大怪我したそうです!」
「なんだって……許せねえ、許せねえよ……! おいサブ! チャックの野郎はどこだ!」
「そういうだろうと思って連れて来てあります!」
「ファファファ、オハヨウゴザイマス」
生まれたての子馬のように怒りに震える俊介の前に、縮れ毛をいっぱい巻き込んだチャック(ジーパンとかの)が悠然と現れた。
「テメエ……いい度胸だな」
「恐縮デス」
「言い残す事があるなら聞いておくぜ」
「行政書士ニ預ケテイマス」
「なら死ねやあああああ!」
「死ンデクダサイ、ノ方ガイイト思イマス」
怒りのとろ火に身を焦がす俊介の拳がぐるぐると円を描きチャックに迫る!
宿命はここにいたり運命となって激突した!
「ぎゃああああ!」
「兄貴ぃー!」
「モシモシ警察デスカ」
俊介の余った皮は縮れ毛と共にチャックに巻き込まれてちょっとだけ変色。
「ハイ……ハイ……デハソチラニ参リマス」
二重の意味でグッタリしている俊介はチャックに巻き込まれたまま何処かへと去っていくのであった。