異世界バスツアー7
前回までのあらすじ
投獄された旧経営陣から後を託された新経営陣のもと生まれ変わった新生ツアー会社。輝かしい再出発となるはずだったが、心配のあまり脱獄してきた旧経営陣が、こんな企画ではお客様は満足しない! と新経営陣を追放して前衛的なツアー企画を実行したため、最終的に旧経営陣は塀の向こうに帰宅して新生ツアー会社は倒産した。
今回からのあらすじ
蚊帳の外に置かれていた新経営陣は、摘発を免れることができたので今度こそと新会社を立ち上げた。
お客様に新たな世界を体験していただく新生異世界バスツアー会社。
新経営陣がその理想を胸に新企画を立ち上げたところ、心配性の旧経営陣が獄中から生霊を飛ばして新会社を占拠したので素敵に台無し。
生霊とそれに引き寄せられた悪霊たちの手により前衛的な新企画が立ち上がるとともに、新生ツアー会社は心霊スポットとして有名になった。
「本日は当社のバスツアーにご参加いただき誠にありがとうございます」
座席がほぼ埋まったバスの前方で、笑顔のバスガイドがマイクに喋っている。
時々ガタゴトと振動するバス。
乗客は楽しそうにおしゃべりしたり、窓の外を眺めている。
「これより当バスは異世界転生をいたしまして、今までにない体験を皆様に経験していただきたいと思っております」
バスガイドの言葉に、少し騒がしかった乗客たちが静かになった。
顔を見合わせた乗客たちが呟き始める。
“異世界転生……?”
“転生……?”
“なんか悪い予感がするのう”
笑顔のバスガイドは乗客たちに向かって言葉を続けた。
「それではこれからのスケジュールをお伝えいたします。まず当社特製の転生トラックと当バスが正面衝突して」
乗客たちの強い抗議によってツアーはすんでのところで中止。
だいたいの元凶である悪霊の棲み家となったツアー会社は、霊能力者や退魔士の皆さんの活躍により倒産した。