ロシアの赤い桃太郎
むかーしむかしの20世紀初頭、ロシアはサンクトペテルブルクに来るべき革命の日へ向けて若い血潮を燃やすおじいさんとおばあさんが住んでおりました。
おじいさんは社会主義議論サークルへ、おばあさんは労働者階級開放闘争同盟決起会へ。
おばあさんが決起会でオサ!オサ!していると、ネヴァ川の上流のほうから、スパシーバ~スパシーバ~と大きなマトリョーシカが流れてきました。
驚いたお婆さんは決断的にマトリョーシカを家に持って帰りトマホーク一閃。
すると中から一回り小さいマトリョーシカが飛び出してきたではありませんか。
驚いてスパシーバしたおばあさんは、トマホーク一閃。
すると中からこれまた一回り小さいマトリョーシカが飛び出してきたではありませんか。
これにはさすがの元KGBおばあさんも驚き、今度はトカレフで発砲してみました。
すると中から更に小さなマトリョーシカが飛び出してきたではありませんか。
おばあさんはおじいさんと相談して、この元気いっぱいのマトリョーシカに“スミペ”と名付けてたいそう可愛がりました。
やがて立派に成長したスミペは筋金入りの愛国者に成長し、拝金主義のブタどもを根絶やしにして真に平等で誰もが幸せになれる世界の実現の為に、鬼ヶ島へ資本主義退治に出かけました。
道中、哀れに肥え太った資本主義の犬に出会いました。
「わん、わん、マトリョーシカさん、お腰に付けた白物家電を一つ私にくださいな。お供いたしましょう」
スミペは30年もののヴィンテージ冷蔵庫と西側諸国から闇ルートで仕入れた型落ちの洗濯機を資本主義の犬に配給しました。
犬を国営農場で働かせながらずんずん進むと、次は私腹を肥やし人民から搾取する成金サルに出会いました。
「キャッ、キャッ、マトリョーシカさん、どうして無料で品物を配給しているのですか? なぜ愚かな民衆どもから搾取して幸せに暮らさないのですか?」
これに怒ったスミペはサルから私財を巻き上げてコルホーズ送りにし、サルに洗剤とトイレットペーパーと安物のシャツを配給して総括しました。
身ぐるみ剝がされて真の平和の実現に目覚めたサルを連れてずんずん進むと、次は丸々と肥え太ったキジに出会いました。時すでに鬼ヶ島との戦時下にあり、穀物の強制徴発で飢えていた国民を救いたい一心で、スミペはキジを捌いて配給しました。
一方そのころ、鬼ヶ島では徹底的な資本主義体制が敷かれており鬼たちは自由競争社会の中で次々と技術的革新を引き起こし、かぐや姫をロケットへ載せて月へ飛ばしたり、亀の原子力潜水艦を開発して竜宮城へ探検に出かけたりしておりました。
「おのれ金の亡者どもめ! 真の平和な社会の実現のため、死を配給してやる!」
スミペは正義の心を燃やし、折しも革命政権が樹立したばかりの竜宮城に秘密裏にロケット基地を建設、ここで強力なミサイル“スパシーバ・ボンバ”を配備し鬼ヶ島を虎視眈々と狙います。
これには拝金主義の悪魔たる鬼達も危機感を募らせ、金の力で海上を封鎖しスミペにミサイル基地の撤廃を求めてきます。
一触即発。まさにストラトヴィーチェな状況になったスミペと鬼ヶ島でしたが、犬とサルが疲弊して餓死し、スミペはさすがにこれ以上の継戦は困難と判断し、渋々鬼ヶ島の奪取を諦めてパカパカーしました。
そして祖国へ帰投したスミペは体制反対派を粛正したり、時には国営農場で綿花の収穫を手伝ったりしながら余生を平和に暮らしました、とさ。
おしまいおしまい。
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そうすれば私は君たちがたとえ便所に隠れていても必ず見つけ出し、スパシーバしてやる!