ハイエナ
(ダイヤモンドの花? 頭の中、お花畑?)
ダイヤモンドを加工して花に見立てるのだって、それくらい大きなダイヤモンドを見つけなければならない。
「この国の最大の資源っつったら、ダイヤモンドだろ。 採掘場に行ってダイヤモンド見つけんぞ」
意気揚々とそう語り、何故か私の連れてきたラクダの方へと進むサク。
私は声を張り上げた。
「ちょっと! それ、私のラク……」
「ぎょわあああーっ」
素っ頓狂な声を上げ、尻餅をつくサク。
私も声を上げた。
「えっ、な、何よ、コレ!」
「ギャア、ギャア」
私のラクダが黒い何かに覆われている。
慌てて近づいて追い払うと、そこには骨だけになったラクダ。
そう、この砂漠にはハイエナが生息しているのだ。
「ハイエナカラス…… しまった……」
ハイエナカラスは、今見たく群れからはぐれた子供のラクダなどを襲う。
マズいことになったわ……
額に汗が伝う。
「サク、だっけ。 悪いんだけど、あなたのラクダに乗せて貰えないかしら?」
正直、この男に借りを作るのはシャクだったけど、仕方がない。
するとサクは、呆然と立ち尽くして言い放った。
「ねぇよ。 んなもん」
「……は? ちょ、嘘でしょ!」
この男はどうやってここまでやって来たのか。
照り返す日差しが、ジリジリと私の肌を焦がす。
このままだと、マズい。
「どうすんのよ! あなた、とにかく携帯で助け呼びなさいよ! パパでも召使いでも連絡したら来てくれるでしょ」
「出来るか、みっともねぇっ」
「アンタバカなの!? 意地を取って死ぬ気!? とにかく携帯貸しなさいっ」
しかし、サクの力はことのほか強く、逆に私が弾き飛ばされてしまう。
「はあ、はあ…… バカ、バカッ」
「一々助けなんて呼ばなくても、こーすりゃいんだよ」
サクは徐に自分のパンツを脱ぎ捨てた。
そして、それをパラソルの先端に括り付けると、思い切りそれを振り回し始めた。
「おおーい、誰かー」
(バカだこいつ、正真正銘のバカだっ)
確かに、砂漠を闇雲に歩き回れば余計死ぬ確率は高くなる。
それはこの国では常識だが、ああやってフルチンで旗を振る位なら私は自害する。
その時だった。
黒い影が私たちの頭上に落ちた。