目的
「……あなた、貴族って言うくらいだから、お金持ちでしょ? 召使いとか、そういうのに頼めばいいじゃない」
何で、わざわざ私に頼むのだろうか。
そんな風に相手に伝えると、目の前の華奢な男、サクはため息混じりに呟いた。
「あれは親父のモンでよ。 私用で好きに連れ回せねんだわ」
「だからって私を使うの? ハァ…… 私も忙しいんだけど」
「報酬は出す。 ウーバーより稼げるって」
ウーバーイーツは1回で報酬500円。
距離は関係ない為、今回みたく砂漠越えをやらされても500円だ。
(最低でも今月の家賃3万は稼がないと、この灼熱の大地に野ざらしになるわ。 報酬次第ではむしろチャンスかしら)
私は考えを改め、サクに言った。
「分かった。 前金で3万頂けるなら、相談に乗るわ」
「3万か。 あったかな」
サクはパンツの中からシャネルの財布を抜き取り、いくら入っているかを確認。
そして、諭吉3枚を抜くと、私に差し出してきた。
「あったよ、丁度3万」
「どうも。 貴族も現金持ち歩くのね」
契約が成立すると、サクは立ち上がって説明を始めた。
「改めて、目的はこの国で一番キレイな花を探すことだ。 つっても、こんな砂漠の国には花なんてロクに咲いてねー」
「う~ん……」
私は腕を組んで考えてみた。
確かに、花はおろか植物だって珍しいかも。
あるのはサボテン位で、運良くオアシスを見つけられれば、その周辺には何らかの花が咲いてるかも知れない。
と、言うことは……
「オアシスを見つける気?」
「いや、何でオアシス?」
アテが外れた。
でも、それ以外に良い案があるのだろうか。
妙案を思いつけないでいると、サクは意地の悪い笑みを口に浮かべる。
「ま、ドのつく一般人のおめーにゃ閃かねーわな。 ダイヤモンドの花を作るんだよ」
「は、ダイヤモンド?」