プロローグ
ここは砂漠の国。
私ことナオミ(25)、身長155センチ、体重8○キロは、今、砂漠を縦断中だ。
目的は2つ。
一つはダイエット。
そしてもう一つは、ウーバーイーツでかき氷を食べたいと注文してきた客の所へと向かう為だ。
どちらかと言えば、こちらがメインの要件となる。
「てか、これで報酬500円とか、割に合わないでしょ……」
携帯の地図を頼りに、ラクダに跨がりながら強い日差しを進む。
町から離れて1時間が経過しようとした時だった。
何やら遠くの方に、パラソルと緑の植物が見て取れた。
「……あれだ!」
客は目印にカラフルなパラソルと緑の植物こと、サボテンを指定してきた。
私はラクダの尻に鞭を打ち、急げ急げとその目的を目指した。
「お待たせしましたっ!」
ラクダから飛び降りると、パラソルの突き立ててある場所へと駆ける。
しかし、そこにはパラソルとサボテンしかない。
肝心の依頼した客が見当たらなかった。
「え…… 嘘、騙された?」
「こっちだよ」
……え?
私は辺りを見回し、一体どこから声が出たのかと目線を動かした。
そこに、一匹のエリマキトカゲを発見。
私は背を低くして、そのトカゲに尋ねた。
「もしかして、あなた?」
エリマキトカゲは首を傾げてそのまま走り去って行った。
「どーこみてんだ、すっとこどっこい 」
背後から声がして、慌てて振り返ると、そこにはさっきの位置から移動したサボテン。
否、それはサボテンの着ぐるみを着た男だった。
「あーっつ。 マジ、無理だわ」
男はサボテンを脱ぎ捨てて、自分の体を晒した。
細身の体に、パンツ一枚。
腰に、サーベルの様な剣を携えている。
(何でわざわざあんな暑苦しい格好してたのかしら…… まあ、理由はどうでもいいわ。 さっさとかき氷を渡して、お金貰いましょう)
私は、背中の四角いリュックを外して中身を差し出した。
「えー、ご注文の抹茶のかき氷……」
しかし、あるのは器のみ。
かき氷は姿を消していた。
男はさも当たり前のように言ってのけた。
「そりゃ、溶けるわな」
(こいつ、分かってて注文したのか……)
私の中で、フツフツと怒りが沸き起こる。
男は突然、かき氷の件は仕方ないから、代わりに一つ話を聞いてくれ、と言った。
「……何ですか?」
「実は俺、とある花を探してるんだわ」
男は自分のことをこう名乗った。
男の名前はサク。
ミラージュ・パレスに住まう4大貴族の1人で、跡取りの生まれなかった王様の娘の結婚相手の候補だと。
「王様がこの砂漠の国で一番の花を献上してきた人間に、自分の娘をやるって言ってきたんだ。 アンタ、かき氷を台無しにしたんだから、代わりに手伝ってくれ」
「……はああ!?」