表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Books  作者: バフマフ
1/6

霧雨の夜は魔が出る1

魔道書。

閉じ込められた欲望、残された念の詰まった書物。


ーーーー


書物をめくり、叫ぶ。

「オーヴェルニュよ!!力を!!」

()()()()()()()、敵に向かい射出。


(俺は、何をやってんだ………)

と、思わず心で漏らす弱音と一緒に頭に浮かんだのは、2人の人物の顔だった。


そうだ、あいつらのしょうもないイタズラがそもそもの始まりだったんだ。


「ククッ、随分必死だな、アストロンの新主人(ニューマスター)


虚空に浮かぶ魔法陣。

ズッと現れた爪が魔法陣の端を掴み、こちらの世界へ足を踏みいれようとしていた。


(ああ………あいつら、今何してんだろ………)


完全に姿を現した異界生物はその顎を開いた。



ーーーーーー


ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ


「うあ………朝か………」


呟き、見た夢を反芻する。


随分ヒロイックな夢だった。空中に浮かんだ自分が、魔術師(マジシャン)と戦い、あと少しで召喚獣に呑まれかける夢。


「なんかを思い出そうとしてたみたいだが、思い出せないな………。………まあ夢だしいいか。っと、時間は…………」


午前6時20分。


「うん、大丈夫。試合には間に合う」


今日は人生2度目のインターハイ予選。

万が一にも遅れないように、と昨夜時間帯をズラして5つ目覚まし時計を仕掛けたのだが、3つ目でようやく目が覚めたようだ。


「ま、俺はケガで出られないんだけどね………」


ひとりごちながら、俺はカーテンを開ける。


()()()()()()()()()()


「!?」


慌てて部屋を出て、リビングの時計を確認する。


午前8時ジャスト。


最もやってはいけない寝坊に俺は膝から崩れ落ちた。


ーーーーーーー


「あんな、今日がどれだけ大事な日か分かってるやろ?なんで寝坊できんねんな」


「すみません………」


小声だが、とんでもなく怒りのこもった声に、俺はただ謝るしか出来ない。


「なんで寝坊したんや。理由は?」


「目覚まし時計の時間が狂ってました………」


「直しとけや!!」


目が覚め、膝から崩れ落ちたのが8時。


そこらにあった食べ物を取り敢えずカバンに詰め、道着を入れて家を飛び出たのが8時5分。


試合会場最寄りの地下鉄の駅に着いたのが8時50分。


ちなみに事前に通告されていた集合時間は6時50分。


大大遅刻である。


そして今、9時5分。


開会式をしている横で正座させられ、魔神という通り名を持つ外部コーチの先生に叱責を受けている。


ーーーーー


魔神に叱責される事15分。開会式も終わる頃、やっと正座を解く事ができた。


「まったく………お前が出場しないのが不幸中の幸いやな」


「ホントだよ………。2時間遅刻なんて聞いたこともない」


「すみません………」


心底呆れた声を出したのは同期の草地。俺の相方だ。


「その上、いいところ見せようと思って張り切ってケガするってお前、ダメ男のルート全部辿ってるぞ」


「うるせえよ、ステップ」


「てめえ、そのあだ名出すってことは反省してないな?」


そんなことを話していると、開会式に出ていた部員が戻ってきた。


「やっと来たのね!!随分心配したのよ!?腰は大丈夫?」


「ああ、ハハ、大丈夫です。痛み止めは打ちましたから………」


「ならいいけど、どうして遅刻したの?」


矢継ぎ早に質問を浴びせてくるのは部長、大井先輩。


歴代の部長は全員美形で、この人もその例に漏れずモデルのような顔立ちである。


また、大遅刻した後輩にもこうして話しかけてくれるあたり、とても優しい人だ。


だが、


「なるほど、目覚まし時計が………ね」


「は、はい………」


ジリジリと交代する俺の頭に、


ゴッッッッ


と先輩の拳が突き刺さった。


ポカをやった人間に対しては力一杯のグーパンチを頭にお見舞いしてくる、根本が筋肉な先輩だ。


そんな先輩のフルスイングパンチを受け、


「うげえ………」


という声を残して俺の意識は飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ