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6  女子会はどきどきとわくわくです(下)

当日は、冬晴れの気持ちのいい日だった。美里は、いつもより少し早く花菜を保育園に送っていったあと、猛ダッシュで家に駆け込む。ワードローブから、一昨日買ったオフホワイトの、少し袖が膨らんだニットとミドル丈のネイビーの巻きスカートを出して、手早く着替えた。化粧は、いましても夕方までには崩れるからいつも通り、ベースメイクと眉くらいでいい。


出社し、いつも通り仕事をこなす。西方(にしかた)にだけは、「あれ、今日お洒落してます?」と聞かれた。女子はなかなか鋭い。


それにしても、こんなにわくわくと、他人との約束(デート)を楽しみにするのはいつぶりだろう、と、我ながら可笑しくなる。壮介と一緒に暮らしはじめてからも、デートと言えば心踊ったし、ちゃんと頑張ってお洒落もした。やはり、花菜が産まれてからかもしれない。デートと家族でお出掛けはやっぱり何か違う。欧米人はシッターなどに預けて夫婦でデートするというが、夜にそれは花菜に悪い気もする。でも、こんなに心の張りになるなら、保育園に行っている間に壮介とランチデート、というのもいいかもしれない。


退社時間の30分ほど前に、そっとポーチを片手にトイレに行き、少し時間をかけてメイクをした。だいぶカンが鈍っていて、チークの位置を間違え、いったんティッシュオフする。そういえば、メイクもずいぶん長いことカウンターに行っていない。一応興味はあるので、ネットのコラムなどを拾い読みしたりはするが、そういうので見るNGとOKとか、フェミニンとクールの差が分からなくなってきている。そんなに違うかな?と思ってしまうのだ。


***

定時より少しあと。山本と美里は、社内SNSで打ち合わせてエレベーターホールで落ち合った。


「お疲れ様です。」

「お疲れ様ー。あれ、ちょっとお洒落してくれた?」

「久しぶりの女子会なんで。ママは少しの間お休みです。」


そういって笑うと、山本もくすっと笑う。


「じゃ、行こっか。串揚げワインもいいけど、最近ちょっとはまってる居酒屋もあって、どれがいい?」


聞けば、居酒屋のほうは候補は二つあって、一つは大通りから少し離れた日本酒メインの居酒屋で、ちょっとしたツマミが気が利いているという。もう一つは繁華街の中心からかなり離れているが、がぶ飲みワインで売っているワイン居酒屋。料理は一般的な無国籍系ビストロ風だが、これまたどれを頼んでも外れがないそうな。


「えー。どうしよう。」


行けるところはせいぜい二軒、そのうちメインは一軒だけ、と考えると、迷いしか出ない。山本の店選びに外れがないのは熟知しているから、ほんとはこの機会に全部回りたいくらいだ。飲み会は月二回くらいに抑えているし、そのうち半分以上は社内や取引先との付き合い会合で、人数や予算のこともあり、味にこだわった店にはならない。ちゃんとシェフが仕事をしている店に行くのは貴重な機会なのだ。


「ふふふ、とりあえず方向一緒だから繁華街に向けて歩くよー。」

「はーい。少し悩ませてください。」


雑談しながら、オフィス街から繁華街に抜ける路地裏の道を歩く。山本より少し先輩で、美里の直属の上司でもある加藤の話。美里のデキる後輩、里中の仕事ぶり。山本の抱えている案件の進捗。


「結局、サブは付けれたんですか?」

「いやー、これがなかなかね。変な人いれると、私の仕事増えるだけだし。」

「難しいですよね。」


(うーん。)


実は、その件について考えていることは少しある。ただ、道端でする話でもないから、少しアルコールが回ってきてから相談すべきか。


そうこうしているうちに、繁華街の端っこにたどり着く。喋っている間もつらつら考えていたが、あまりこれという決め手はない。なので、美里は気分のままに選択することにした。


「お店、ですけども。」

「うん。」

「どれも魅力的すぎて迷ってます。」

「あはは。正直でよろしい。」

「山本さんはどれがいいとかあります?」

「うーん、3つならどれでもいいなぁ。」


まぁ、予想のついていた答えだった。山本なら、そうじゃなきゃこちらに選ばせまい。とっとと自分の行きたい店に行くだろう。


「じゃ、今日は寒すぎなくていい天気なので、少し歩きましょう。」

「がぶ飲み行っとく?」

「はい!」


すっかり日が暮れた繁華街は、イルミネーションもあって歩くのも楽しかった。冷えた身体にあつあつのグラタンなんかもいいだろう。そう思うと、もう少し歩いてもいいんじゃないかな、と思ったのだ。


***

合計20分ちょっと歩いて、そろそろ身体の芯まで寒さが近寄り始めたところで店につく。店を決めてすぐに電話して確保していた席に通され、温かなおしぼりを渡されるとほっとした。


「お飲み物のご注文は……」

「「スパークリング!」」


期せずして声が重なる。併せて、生ハムの盛り合わせ、レバーパテ、バーニャカウダを注文した。


ツキダシらしい、エスプレッソカップに入ったミニスープと共に、細長いグラスに入ったスパークリングが運ばれてくる。スープの横には小さくカットされたパン。


乾杯、と軽くグラスを合わせ、白のスパークリングワインを口に含むと、ふわっとフローラルな香りが広がった。銘柄も知らないハウスワインだが、口当たりは悪くない。


昔読んだ本で、中世ヨーロッパだったか、領主の器は祭りの時に出すワインで分かる、と書いてあったのを思い出す。領民に振る舞う酒が、安かろう悪かろうのものだったり、ひどいときは水で割ったりしてあるのはダメ領主。高級品なのは経営感覚のないバカ領主。ちゃんとした人は、安くて美味いワインを出す、と。


ハウスワインも同じことで、これが粗悪品なら最悪だし、一方で高級品である必要は微塵もない。むしろ、入り口で高いお金を取るのは、こういったワイン居酒屋では禁じ手だ。気軽に払える価格、具体的には生中と張り合えるくらいの価格で、いかに美味いと思わせられるかが勝負である。


「ん、スープ美味しい。」

「いいですね。」


カボチャのポタージュスープは、パンを浸してつまみとして食べることを想定しているのだろう。粒の残った濃いめの味付けだった。丁寧につぶしてあるが、裏ごしと違い食感は残っている。スープだけを口に含むと、とろっとしたクリームが温かさを主張する。


待つまでもなく、生ハムの盛り合わせとレバーパテが運ばれてくる。白のハウスワインのデキャンタを追加注文してから、美里は皿に目を向け、その量に少し驚いた。


「どっちかでもよかったくらいですね。」

「ここ、気前いいのよー。」


どちらも、値段から推測していた量の1.5倍くらい。パテに添えられているバゲットも結構な量だ。一人で飲みに来たら、これでけっこうおなか一杯になりそうな気配である。


「ん、美味しい。」

「でしょ?」


山本が嬉しそうに笑う。パテは、市販品より味もうまみも上だし、滑らかな口当たりがシルクのよう。いくらでも食べられそうだ。生ハムも切りたてのフレッシュな香りで、厚みもあって食べごたえ十分である。


「さすが山本さんですね。」

「趣味・食べ歩きだからねー。」

「ここは、ご主人と?」


昨年、周囲に驚かれながら年下の男性と電撃結婚した山本の恋バナ、美里はあまり夜出られなくてちゃんとは聞いていない。ランチで少し聞いたくらいだ。


「そうね、それが多いかな。あとは、一人で来たりもするし。」


カウンター席があるため、一人客も違和感はないらしい。わりと遅くまでやっているので、残業の後に来てさらっと1,2杯飲んで、軽く食べて帰ることもあるそうな。


「そうなんですねー。……ご主人とは、どこで知り合われたんでしたっけ?」

「友達の弟なの。遅くなったときとか、たまに迎えに来たりして、そのあたりから。あとから聞いたら、弟と合いそうだなって、くっつける意図もあったみたい。」

「なるほどねー。」


にやにやする。人の恋バナはいい。


「うちは、普通に職場恋愛ですからねぇ。いいなぁ、うらやましい。」

「まぁ、歳もトシだから、本当にいいの?って何回も確認したり、いろいろあったけどね。子供だって作る気ないし。」

「ないんですか。」


微妙な年ごろでもあり、聞いちゃまずいかなぁと話題に出さずにいた。40代前半。芸能人でも産んでいる人はいるけれど、一般的に妊娠は厳しくなった年代である。仮に欲しいのであれば、早期に不妊治療を検討する必要があるだろう。


「うーん、仕事仕事でここまで来たでしょう?今もすごく面白いし。失速するのは悔しい。それに、自分に子供がいるってイメージできない。もし、事故で授かっちゃったら産むだろうけど、積極的に欲しいとは思えないんだ。」

「なるほどですね。……ご主人の方は協力望めないんですか?」

「半分以上はやってくれると思うよ。私の仕事へのスタンスは分かってるし。でも、専業主夫になりたい、ってタイプでもないな。そうすると一切私が何もやらないってわけにはいかないでしょ?産休だって取らなきゃいけないんだし。」


女が仕事をするのは選択の連続だ。総合職か、一般職か。結婚するか、しないか。どんな相手と結婚するか。仕事は続けるのか、やめるのか。特に、妊娠、出産、授乳は女性しかできない。授乳はミルクでも問題ないが、出産前後は経過によっては長期の休業となることもあり得る。現に、昨年出産した先輩の青木は、39歳の初産で切迫早産の診断を受け、5か月目くらいから休みがちになり、7か月目からは管理入院となった。


「高齢出産になるとなんかいろいろリスクも上がるっていうし、そこまでしてほしいとは思わない。もちろん、辻橋とか、青木さんとか、両立を頑張ってる人もすごいなって思うけど。」

「まぁ、私なんかはマミートラックですしね。」

「あとは坂部さんタイプ?」


坂部は美里のすぐ下の後輩に当たる。20代のころに2児を産み、二世帯住宅を建てて夫の両親と一緒に住んで、家事・育児面の全面的なバックアップを受けて今ではバリバリ働いている。突然の残業から出張まで何でもござれ。海外とのやり取りで勤務時間が深夜に及ぼうが早朝から会議があろうが、ぱりっとスーツを着こなして生き生き働くスーパーウーマンである。


「まぁ、坂部さんにもいろいろと悩みはあるようですが……」


ママ会的なところで何回か話したことはある。やはり、自分の親ではないので遠慮はあるし、子供に思うように構えないジレンマもあるようだ。しかし。


「あれは稀にみる運のいい事例ですからね。」

「そうなんだよねぇ、ウチなんて親に面倒を見てもらうどころか、そろそろ介護が目前だもん。」


そうなのだ。親世代に子守をしてもらうためには、母子ともに健康、というのも必要だが、親がフルタイムの仕事をしていない、近居または同居、子世代を全面的にバックアップするだけの気力と体力、そして覚悟とやる気があって、子世帯と良好な関係である、という条件がフルでそろっていなければ到底無理。牧野家も、壮介の親は地方だし、美里の親も関東圏内ではあっても東京まで引っ越す気も、娘のフォローのためにしょっちゅう出てくる気も体力もない。たまに遊びにきてくれる分には歓迎するけどね、帰っていったらホッとするわ、というスタンスである。片道二時間半は伊達じゃないのだ。


「高齢者ともなると、風邪をひいてる子供に接触させたら共倒れですし。」

「あー、そういう問題もあるのか。猶更無理だわ。辻橋は、よく思い切ったね?」

「そうですねー。うちの場合は夫がやる気だったというのが大きいですが……。」


坂部の例を見て、子供を産んでも親に頼ればいいや、と安易に考えていたこともある。親も応援するよ、とは言ってくれていたのだ。応援、の内容が美里の考えていたものとは大幅に違っていた、というだけで。


それに、壮介は花菜が産まれる前に仕事を立ち上げていた。忙しくはあったが、


「美里が仕事をしたいなら、産んでフルで仕事をしてもらっていい。俺が育休を取るし、メインで育てることに何の問題もない。」


と言い切っていた。それならまぁ、と産んでみたら案外可愛かったし、当時の上司から「今少し仕事をセーブすることは、将来的に何のマイナスにもならない。牧野も辻橋も身体を壊さないでチーム牧野家をいかに回していくかを構築すべき時期じゃないのか」と説得されたこともあり、結果的にしばらくマミートラックに甘んじる覚悟をした。それでも、熱を出したときなどのお迎えもほぼ折半だし、花菜がしっかりしてくるにつれて最近はお迎えも週2回くらいは壮介が引き受けてくれるようになっており、前よりは美里も仕事に比重をかけられるようになってきた。


「だから、最初から仕事をセーブするつもりで産んだわけじゃないんですよ。結果としてそうなっちゃっただけで。後悔はしてませんけど。」

「なるほどねぇ。」


山本が少し考える顔をして、グラスに注いだ白ワインを飲んだ。辛口だが、口当たりは軽い。がぶ飲み、の名にふさわしく、くいくい飲めてしまうやつである。


「それで、ですね。山本さん、忘年会のときにおっしゃってたサブマネージャーのお話、まだ適任者がいないのであれば前向きに検討したいんですけど、どうですか。」

「え?」


思い切って言ってみる。驚いてこちらを見つめてくる山本を、美里はしっかりした目で見つめ返した。


「繁忙期は壮介に任せられますし、子供が熱を出すことはこの冬だいぶ減りました。有給は暦年で計算するので、まだ全然減ってないです。この前お話をいただいたときは、私なんか条件悪いし、って思ってしり込みしたんですけど。」


壮介に話したら、それはチャンスなんじゃないか、と言われたのだ。少しでもやりたい気持ちがあるなら、受け入れてもらえるかどうかは別にして、手を挙げるくらいはしてもいいんじゃないのか、と。


「ただ、原則として週に2,3回は5時で帰る、というのは譲れません。あとの条件は、納期が今年の7月という話ですので、そこまでの間は子供を作らない、というのは選択としてありうるかなと。もし、それでいいなら考えていただけないでしょうか。」


壮介に話したのは、やはり、山本に「あんな小口の仕事で満足しているのか」とはっぱをかけられたからだと思う。諦めていたなら、気にもならなかったはずだ。山本に誘われたとき、何かの縁だと思った。壮介に相談して、話す内容を決めた。


「なるほどねぇ。」


山本は短時間で驚きを収めると、少し悩む顔をした。山本本人も含め、メンバーが連日残業している中で、週の半ば以上を定時1時間前に帰る、というサブマネージャーが成立しうるのか、考えているのだろう。


美里は言いたいことを言ってしまって、少し落ち着いてあたりを見回した。使い込まれた木のテーブル。あそこに貼られているのはヨーロッパの古地図か。本日のおすすめはカウンター上の看板に手書きで。カウンターの端には、生ハムのブロックが3つほど、ラップのかけられた切り口を上にして並んでいる。


ここなら普段の格好でも場違いを感じるほどオシャレ、というわけでもないな、とぼんやり思いながら、美里はなんとなく本日のおすすめを眺めた。ポテトグラタン、カモのコンフィ、牡蠣のアヒージョ、魚介のパエリア、ビーフストロガノフ。ヨーロッパ一周なんでもござれ、というところらしい。


「サブマネとしては厳しい条件なのは分かってる?」


こちらに視線を戻した山本は、仲良しの先輩の顔ではなく、上司の顔になっていた。きちんと目を合わせて、返事をする。


「はい。反発もあるとは思います。ただ、時間内で仕事を終わらせるテクニックはだいぶ身についたかと。逆に、そういった面でお手伝いできることもあるかと思います。」


無限定に仕事をしていたときは、翌日朝までにやれば「当日中」だと思っていた。時間に制限ができてからは、優先順位をつけ、効率的にこなすことが最優先となった。最初は自分でも戸惑ったが、自分も周囲も「辻橋さんは5時にはいない人」ということを受け入れると、割と人に頼らずにどうにかできるものだ、ということを知った。そうと分かれば、取引先を含め、皆定時内に報・連・相してくれるもので、それで困ったことはほとんどない。どうしても、というときは壮介がお迎えを代わってくれた。


「もっとできることはあると思うんです。それに、今後男女を問わず私のような働き方をする若手は間違いなく増えます。だから、会社としてもいつかは取り組まねばならない話だと思います。」

「確かに、ね。」


共働き世帯は専業主婦・夫のいる世帯の二倍いる、と言われて久しい。男性も、壮介のようにこれからは家事・育児に比重がかかる人が増えるだろう。使えるものは何とかして使っていかないと、成長はない。


「まぁ、実際これから納期に向けてちょっとどうしようかなぁと思っていたところではあるのよ。相変わらずメンバーはアレだしね。部長に相談してみるわ。ありがとね。」


山本は、少し固い顔ながらも頷き、そう約束した。美里はふう、と思わず息を吐く。


「なに、何か今日は固いなぁと思ってたら、こんな地雷を抱えてたから?」


山本がにやっと笑ってそう言った。話が終わったからか、先輩の顔に戻っている。


「そうですね、いつ切り出そうかなって。飲みすぎちゃうと記憶なくなったら困りますし。」

「こんなこと、記憶なくさないよ。大丈夫。何食べる?」

「んー、ポテトグラタンは外せません。」

「ジャガイモ好きよねー。私コンフィ食べたい!」

「頼みましょう頼みましょう。〆はパエリアですかね?」

「じゃ、ワインは白のままだね。銘柄替える?」

「ちょっと高いの頼んでみましょうか。」

「いいね。」


固い話はここまで。追加注文を終えた二人は、もう一度グラスを合わせ、目を合わせて微笑むのだった。


***

「はぁ、おなか一杯!」

「美味しかったですね。」


10時過ぎ。あれこれと堪能した二人は、ふわふわとした酔い心地で店を後にした。三時間ちょっといた計算になる。結局、最初のスパークリングのグラスのほかに、デキャンタを白2本赤1本の計3本。これでも、明日に響きそうで控えた方だ。冷たい空気が、アルコールで火照った頬を冷やしていく。


「コンフィが美味しかったです。」

「あとパエリア。自分で作ったりもするけど、全然別ものよね。」


そうなのだ。外で食べるパエリアは、ご飯というよりツマミの一種である。


「これからどうする?」


ちょっとすみません、と携帯を確認する美里に、山本が声をかける。いきなり熱が出た、事故が起きたという可能性はゼロではないので、失礼を承知でちょいちょい覗いていた。なので、一応リアルタイムで状況は把握しているが、返信までする余裕はなく、「一次会おわりー」とだけとりあえず告げる。花菜は何事もなくご飯を食べて寝たようだ。


「……すみません、一言だけ連絡を。あ、今日は二次会行けますよ。おなか一杯ですけど。」


明日は眠くて使い物にならないかもしれないが、たまにはいいだろう。電車では帰りたいが。


「じゃ、軽く一杯、バーに行こうか。これまた、最近はまってるところがあって。」

「いいですね。最近、地元の緩いところしか行ってないので、都心のオシャレなバーは久しぶりです。」

「せっかくお洒落してきてくれたし。」

「楽しかったですよ。シンデレラみたいですけど。」


借り物の、というわけではないけれど、いつもと違うおめかしは心躍る。


「ま、少し余裕も出てきたみたいだし、これからもたまに飲みに行こうよ。」

「ええ、お願いします。」


話しながら繁華街の中心へと歩く。とあるビルの前で、山本は足を止めた。木の小さな看板が、スポットライトに照らされている。


「ここの地下。足元気を付けてね。」


そういうと、山本は酔っ払い特有のふわふわした、しかし危なげない足取りで狭い階段を下りていく。


「はーい。」


美里も返事をして、念のため手すりにつかまりながら、階段を一歩一歩下りていった。

お読みいただきありがとうございました。


山本さんとの飲み会の後編でした。美里さん、そんなこと志願しちゃって大丈夫でしょうか。。。

がぶのみワインは久しく行けておりません。(この前、行けるはずだったのに急遽仕事が!!)

料理がおいしいお店は正義だと思います。


ストックはここまでとなります。来週からは、毎週水曜18時に更新できるようがんばります!



応援、評価、感想、ブクマなどいただけますと、作者が狂喜乱舞します(*^^*)

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