デブと美少女
土曜の朝、太郎坊と二人で朝一で映画を観に来ている。
公開初日ということもあり受付が開始する三十分前に来たが既に列が出来ている。
スマホをいじり時間を潰し、受付を済まし劇場へと向かう。
公開一週目の得点は原作者書下ろしポストカード。
太郎坊は早速封を切っていたが僕はそのままリュックにしまう。
「あれ俊介開けないの?」
「特典系はもったいなくて開けられないんだ」
「確かに一瞬開けるのためらうけど俺すぐ開けちゃうは」
ポストカードのイラストは全4種、主人公、ヒロイン、かませ犬キャラ、全員集合のイラストで太郎坊は一番欲しがっていたヒロインイラストを当てていた。
自分も気になるめっちゃ気になるが開けない。
「なぁ太郎坊二週目が小冊子だったけど行くらぁ」
「も論一緒に行くか」
お金が心配だが好きな作品に出し惜しみしてられない、一回観ただけじゃあ理解できない部分が多いから大丈夫。
何が大丈夫かはさておき映画は始まった。
「あのシーン、BGMも作画もやばいほんとやばい」
普段では考えられないほど饒舌に語る自分に太郎坊はなぜかよそよそしくしている。
「う、うんPV通り、ぬるぬる動いたね」
「ほんとそうだろ。原作に忠実で…」
エレベーターを下りながらなお語る語る。
一階エントランスに降り次はどうしようか。
「この後ひ「たぁーちゃんなに映画見てるの」」
いきなり同い年ぐらいの整った容姿の女が太郎坊に攻めよって来る。
「今日は友達と映画を見に行く約束を前からしてて」
冬場で寒いにも関わらず汗を流し弁解をしている。
女の方が圧倒的優勢でどんどん太郎坊が小っちゃくなっていく。
蚊帳の外で二人の関係がオーラから理解しだしここは一つ友そして助けてやるかと声を掛ける。
「太郎の彼女さん?でいいのかな、えぇっと今日は無理言って太郎に付いて来てもらったからあんま悪く言わないでくれるかな」
必死に紡いだ言葉はおかしなところはないだろう。
ただ返礼は汚物を見るような厳しい視線だった。
「もう解散するから二人で楽しんでよ...そういえば前に太郎がかわいいだなんだって自慢してたのは君の事だったのかうん、うん」
太郎坊に目配せし言い返される前に逃げ出した。
彼女さんは顔を真っ赤に染めぽかぽか弱く彼氏さんの胸を叩いている。
二人からは幸せオーラが漂い、困った彼氏も恥ずかしがる彼女もリア充そのものだった。
デブに美女と不釣り合いでも幸せならOKですだろう。
『俊介:彼女と楽しめよ』
ラインを飛ばしておく。
『太郎:m(__)m、ありがと』
苦笑を漏らしてしまう。
実際太郎坊は前彼女は可愛い過ぎると語って来たが何処かの作品のキャラだと思っていたら実在するガチ彼女だとは。
自分勝手に距離を感じてしまう。
大人にならないといけない。
これからの予定も消え無駄に金も使いたくないから帰って寝た。
一週間後、彼女とどうしても外せない約束があるみたいで一人二週目を観た。
改めて観ると気付くことが多くて来てほんとうによかった。
太郎は今頃リア充してる頃だろう。
別に彼女を優先するのはいい事だと思うし、友としてこのまま上手くいって欲しいと思う。
今日もすぐ帰って寝た。
補足:帰ってすぐ寝たのは休日なのに朝が早いため単純に眠たかったのもあります