EP12.頂きにある物
僕達は休憩後再び山を登り始めた。
「今日って何で山に登ってるの?」
唐突に質問すると彼女は、
「今更聞くの?」
と呆れられた。
「ある物を取りに行くの。ずっと前に頂上に置いてきちゃったから」
「物?」
「それは掘り返してみてのお楽しみ」
「掘り返すって…(笑)場所分かる?」
「目印はあるから」
一瞬掘り返す為に僕が呼ばれたと思った。
男の僕なら早く出来ると思って連れて来たんだろうと。
でも、その予想は外れた。
「もしかして僕って掘る役を任されたの?」
「ん?違うよ?」
「じゃあ、何で?」
「野外活動に行く前に、寺川君にどうしても伝えておく事項があるの」
「え?」
これはもしや。と当時の僕は青春を一瞬感じてしまった。
今でも振り返って分からなくもない。高校生の男女で2人で出掛けていたら。
「でも、少し心の準備をしておいてね」
彼女の顔は少し悲しそうだった。
その時、さっき思っていた気持ちは一瞬にして無くなったのだ。
何か重要な事かもしれないと。
1時間後、ようやく頂上に着いた。
「ふぅ~疲れた」
「お疲れ様。でもまだ仕事が残ってるよ」
「やっぱり掘るんですか?」
「私もするからそんなに大変ではないよ」
その言葉の通り、そんなに大変ではなかった。
穴の中から出てきたのは、大きな缶だった。
缶と言うと色々あるから分かり難いが、分かり易く言うとクッキーがたくさん入る缶だ。
やっぱり例えが下手か。
「この中に何が入っているの?」
「それを今から見るの」
そう言って缶を開けた。
中には1冊のノートがあった。
「これは?」
「私の5年前の日記」
5年前というと、11歳の頃になる。
その頃の日記が何故ここにあるのか気になった。
「何でこんな所にあるの?」
僕がそう言うと暫く何も言わなくなった。
質問ばかりだったから怒らせたかな?と思った。
でも、怒っているのとは違った。
ノートをペラペラと捲りながら彼女は話し始めた。
「これは私が11歳の頃、病院でずっと書いていたものなの」
「病院?入院していたとか?」
「そう、暇だったからずっと書いていたの。ここには私が当時感じていた事全てが書かれている。でも退院と同時にここに来て埋めたの」
「どうして?」
「暫く忘れたかったから」
確かに入院の記憶はあまり良いものではないけど、それなら捨てた方がと思った。
「寺川君は今、捨てたほうが良いと思ったでしょ?」
「君は心を読む能力でもあるのかい?」
「大体人の目を見れば解るよ。本当の事なのか、嘘なのかも」
「どういう事?」
「周りの人は私に嘘を吐いているって事」
「クラスの皆はそんな」
「クラスの皆じゃない。周りの大人の話」
「大人?」
「私ね」
彼女はノートから視線を逸らし、僕の目をじっと見ながら、
「死ぬの」
to be continued…




