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EP10.痛みの感じ方

「君の痛みを知りたい」


僕は唐突に彼女にそう言った。


「どうしたの?頭でも打った?」


彼女はいつもの様に僕を貶す様な言い方をしたが、僕の目を見て、


「ごめんごめん、そういうつもりじゃないのよ?急にそういう事言うから」

「僕は昨日思ったんだ。君にも痛みがあるって」

「そら、人間は誰しも痛みはあるでしょうよ」

「君の痛みはまたちょっと違うと思う」

「どこにそんな確証があるの?」


僕は彼女に言われて、確証がない事に気付いた。

この頃の僕はまだまだ幼かった。少し悲しい顔を見たくらいで彼女がそういう思いをしていると勝手に思ったのだ。


「か、確証…」

「確証が無いのに、言ったのね」

「ご、ごめん」


僕は素直に彼女に謝った。これで嫌われるかなと思った。


「人の痛みの感じ方って色々あるのよ?」

「え?」


彼女がいきなり何かを言い出したが、僕はこの時はまだ理解出来なかった。

理解出来たのは教師になってから、そう客観的に人を見る様になってからだ。


「人の痛みは、怪我した時に痛む時、悲しい事辛い事があった時に心が痛む時、そして私みたいに両方の痛みを一度に味わった際の痛みと大きく3つに分かれるわ」

「どういう意味?」

「それはいつか君にも解るよ」


同じ年なのに、言ってる事が1つも2つも先に行ってた彼女が一瞬遠く感じた。


「じゃあ、やっぱり痛みはあるんだ…」

「ふふ、ちょっとからかっただけだよ」

「橋本さんらしいね」


彼女はいつも考えが大人っぽかった。

当時の僕から見ても、今の僕から見ても、彼女は16歳になる女の子とは思えなかった。


「寺川君は私の痛みを背負う覚悟でいたの?」

「え?」


急に言われて反応に困ったが、


「もし何かあるのだったら、何でも良いから助けてあげたいなと」

「助けたいか…」


彼女は僕ではない遠くの景色を見ながらそう言った。


「ごめん、軽く見すぎだよね?」

「確かに軽いね」

「うっ…」

「ごめんごめん、正直過ぎて」

「うっ…」

「大丈夫?」

「大丈夫じゃない。僕が心痛めかも」

「あらら、助けてあげる側が助けられる側になってるよ」

「ごめんなさい」


さっきまで重い空気が少しあったけど、やっぱり彼女の行動がそれを消す力があるのだなと改めて思った。

でも、彼女はその行動すらも自分の努力で身に着けた物だと後から知るんだけどね。

彼女は努力家だ。

いつも周りの事を思って、何かをしたいと願う女の子だった。

それが結果として出てるから、僕はずっと羨ましかったけどね。


「今何を思っていた?」

「え?」

「私は君に羨ましがられる存在じゃないよ?」

「どうして今またそう思ってるって解ったの?」

「まぁ、こないだも言われたし、今も言った時みたいな顔してたから」

「ごめん」

「謝らないでよ」

「いや、本当に」

「でもね?」

「ん?」

「いつか背負ってくれると嬉しいな。私の痛みを」


その時の彼女はとても美しく見えた。


to be continued…

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