ぬいぐるみ
「あっ、ほんとだね。なんのぬいぐるみ?」
後から麻美が近寄ってジロジロと見て言う。
それは、ウサギのような形のしたぬいぐるみだった。手作りで作られたのだろうか?目は左右とも違う種類のボタンで作られて、生地は何かの切れ端を縫い合わせて作らるている。
どれくらい長く愛用していたのか、所々何かの食べ溢しの後が付いていて、右腕がとれかけているため、綿が出てきてしまっている。
「これ、直さないんですか?」
「俺は、裁縫が苦手なんだ。」
店主はそういうとまた新聞を読み始める。
じいっとそれを見ていると、何だか可愛そうに思えてきた。
いくらぬいぐるみとはいえ、このままだといつかは右腕がとれてしまいそう。けれど、今も平然と新聞を読んでいる店主は、これからもこのままにして置きそうだし。
「そんなに、そいつが気に入ったならくれてやるぞ?」
「…えっ?いや、でも…」
「そいつは、誰かが忘れていったものだ。何年もずっとそこにあるんだ。どうせ今さら持ち主が来たりせんだろ。俺もそいつには未練はないしな。」
「早希、そんなにそれがほしかったの?」
「いや、別にそういうわけではないけど。」
もう一度、そのぬいぐるみを両手で顔まで持ってきてよく見てみる。
「可愛くないし。」
「じゃ、置いとけばよかったのに!」
可笑しく笑う麻美。
結局私はそれを、もって帰ってきてしまった。
それから駅に着くと麻美と別れて私は電車に乗り、自分の家へと帰る。
「ただいま。」
私の声が虚しく響き、返ってくる声もないまま消えた。
今日も両親は仕事で家にいない。別にずっと昔からそうなのだから今更寂しいとは思わい。
私はそのまま二階へ上がり、自分の部屋に入る。人形を机の上に置き、私は裁縫箱を探しに下に戻る。