何もなく
日が経つのは、遅いようで早いような気がした。
彼と別れてからの私は、この春休みをバイトの日々に使っていた。地元にある有名なチェーン店の喫茶店である。
個人的に飲食業は向いていないと思っている。
皆はカフェのバイトと言うと、羨ましいとか言われるが、別に私はカフェで働くことに憧れていたわけではない。
ただ、部活に入らないのなら、バイトをしなさいと言う親の言葉に、渋々従い色々なところに面接を受けてたまたま受かったのがあの喫茶店なだけなのだ。
でも、働いてる人は嫌いな人は居ないし、もう一年くらいは続けているのだから、そこそこ頑張っていたりもするのだ
そんなこんなで、バイトの日々を終えて今日から学校が始まる。
制服に着替えて、朝食を食べて、家を出て、歩いて駅に向かう。
電車に乗って三駅進んで、そこで降りる。
同じ学校の制服を来た生徒が何人もいて、同じ道を歩く
信号を渡り、坂をを上って、下って右に曲がれば、私の通う高校が見えてくる。
すると後ろからドンッと背中を押され
「うわっ!」
と驚き、後ろを振り向くと、にんまりと笑う友達の田所麻美が居た。
「おはよ!もう!ちょー久々じゃん!会いたかったんだからね!!」
「おはよー、ごめんごめん」
抱きついてくる麻美の、頭を優しく撫でる。
「彼と別れたって聞いてから、本当はもっと早く会いたかったのに、こういう時、全然早希の力になれてないもん。」
彼女はシュンと肩を落として悔しそうに言った。
「その気持ちだけで嬉しいよ。ありがとう。でも、もう全然平気だからさ、早かれ遅かれだったんだよ。」
だから気にしないで、と私は笑って彼女に言うと、彼女は顔を上げて、本当?とでも言うような目で見てくる
私はそれに、苦笑いで答えるしかなかった。
新学期が始まりクラス替えの発表を見て私と麻美は違うクラスだった。
彼女は案の定とても悲しそうに新しい教室に入っていき私も自分の教室へと入る。
新しい担任の先生は若い女の人だった。
短めのホームルームが始まり、自己紹介やら委員会決めやら
今後の予定やら、そして、いくつかのプリントを、渡されて
ホームルームが終わった。