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SABAKI 第二部 変革  作者: 吉幸 晶
15/21

スカウト


       スカウト



 津田沼――。千葉県の北部、習志野市の入口に当る。駅の南側には近代的建造物をした大学があり、その横には公園とショッピングセンターが、住宅街を背負った形で建っている。北側には大きなショッピングモールも有るが、それ以外は住宅が軒を連ねている。

 三月も終わりを迎え、暖冬の所為か、東京の桜の開花は三月十九日と平年を四日ほど早まっていた。その後も暖かく穏やかな日が続いた事もあり、すでに駅前の大学の桜は、八分咲きになっていた。

行き交う人も満開も近いと冬の殻を脱ぎ去り、春闌(はるた)く短い時を、外へ出て謳歌している。

 多治見もその恩恵を受けようとしてか、大学の庭を賑わせている桜を眺めながら、津田沼駅周辺の散策をしていた。


 あれは三日前の晩の事――。


「私だ。今、大丈夫か?」

 『(はぶり)』の奉行で、警視総監でもある、岩本からの電話であった。

「はい。移動の為に、家に持ち帰りました私物を整理していたところです。」

「そうか。来週には警視庁(こっち)へ来るのだな。」

「お世話になります。」

 住み慣れた新宿南署を出るのは、定年を迎える時だと思っていたが、奉行の企み――計らいなのだろうが――により、四月から警視庁生活安全部総務課生活安全対策第三係へ係長としての移動が決まっていた。

 この一週間は、その準備や引継ぎに追われていた。やっと一息付けると思った矢先の、岩本からの電話であった。

「移動の準備で忙しいところ悪いが、三日後の二十八日の十四時に、津田沼へ行って欲しいのだが。」

「津田沼……ですか?千葉の?」

「そうだ。年明けに電話で話した、ニューフェイスの件だよ。」

 あの時、斐山(ひやま)の仕置きと警部昇進の宴の最中で、斐山が片付いてから後日改めて聞く。と岩本の電話を切った事を思い出した。

「そうでした。正直、忘れていました。」

「恐らくそのような事だと思っていたが。彼には、二ヶ月も待ってもらった。もうこれ以上、待たせる訳にはいかない。」

「申し訳ありません。」

「最初は、私と彼と君の三人でと思ったが、この次期では、私の都合が付かない。なので君だけで彼に会って、本当に『葬』に適しているかを、君なりに判断して欲しい。」

「お奉行が選ばれたのですから、敢て私が面接する必要は無いかと」

「君の部下になるのだよ。容姿に惑わされる事無く、自分の目と心で見定める義務が君には有る。」

「確かに、お奉行のおっしゃる通りです。」

「では、忙しいところすまないが、頼むよ。詳細はメールする。では本庁で。」

 通話は一方的に切れた。その後間も無く、一本のメールが届いた。


中道(なかみち)圭吾(けいご) 三十三歳 飲食店経営者

津田沼駅北口のショッピングモール内。

西側階段四階踊り場にある休憩所に十四時待ち合わせ。

ライトグレーのスーツが目印。

以上。よろしく頼む。》


 多治見は私用では、待ち合わせ先へ一時間は早く着くように動く。早目に行きその地を散策するのが、自分を開放できる時間であった。


 大学からショッピングセンターの前を行き、駅前の公園内のベンチに腰を下ろす。春の陽を全身に受け、暖かさを心身で感じて休む。

(花見をするには良いところだな。この陽気も一杯をそそられる)


「ベンチ空いてないね」

 子供の声がした。目を開けると、よちよち歩きの妹の手を取り、五、六歳のお兄ちゃんが歩いてくる。その後を、両親が二人の子供を見ながら付いていた。

「ここに座るかい?」

 多治見はお兄ちゃんへ声を掛け立った。

「いいの?」

「良いよ。」

「お休みのところをすみません。ありがとうございます。」

 多治見は家族へにこやかに手を振ると、その場を離れそのまま駅へ向かって歩き出した。


 新学期直前で、天気にも恵まれたショッピングモールは大盛況で、人でごった返していた。

 うなぎの寝床の様に細長い建物の中は、中央部分が吹き抜けになっていて、所々に左右へ渡れる橋があり、その橋の途中に、休憩用のソファが置かれている。

 四階へ行って橋の上から吹き抜けを覗く。通路や店舗、休憩所にも多くの人がいるのが判る。

 腕時計を見ると、約束の時間まで五分程であった。少し急ぎ足で西側へ移動し約束の場所に近付く。

 今まで見ていた盛況の風景とは変わり、閑散として静かで、照明も少しダウンした感じの、落ち着いた場所であった。

 階段の脇には男女のトイレがある。雰囲気が変わっている理由がわかり、設置されたシートを見る。すでに数人が腰を掛けている。恐らく連れが、トイレから出てくるのを待っているのであろう。

 数人の中に、ライトグレーのスーツ姿は二人いた。一人は三十代後半の痩せた男で、初デートなのか、ガイドブックを忙しく捲り、次へ行く店を探しているように見えた。もう一人は女性で、顔は帽子でよく見えないが、卒業シーズンを過ぎて、入園入学シーズンが近く試着でもしているのか、胸に黄色い薔薇のコサージュを着けていた。

 多治見は二人の中間辺りの空いている所に座り、壁に(もた)れた。目を閉じ待つ。

 トイレから人が出てくると、シートに座っていた人が立ち、一緒に賑やかな売り場へと消えて行く。人の気配が消えたのを感じ取り目を開ける。先程の婦人一人が残っていた。

「あのぅ。多治見さんですか?」

 婦人も辺りに人が居なくなるのを待っていた様で、多治見が目をあけると、俯いたまま消えそうな小さな声で訊いてきた。

 多治見は驚きで目を見開き、暫し声を失った。

「多治見さんですよね。」

 声は出ないが、小さく数回頷き返事をした。

「私、中道です。」

 婦人が多治見へ顔を向けた。綺麗に化粧はされているが、骨太で男化が濃く野太い声であった。

「は。初めまして。た、多治見です。」

「当然……。驚かれますよね。これですもの……」

「しょ、正直。いいえ。普段は仕事がら慣れてはいますが……」

 新宿南署の管轄内には、俗に言う『オカマバー』は沢山ある。仕事柄、風俗での取り締まりで、店へ行き彼女達と会って話しをし、免疫力は高い方だと思ってはいた。が、流石に自分の部下――。それも裏の仕事の、殺し屋としてでは些か捕らえ方が違う。

 多治見は戸惑った。

「やっぱり駄目……ですか?」

「いや、見た目で――」

 多治見は岩本が言った。『容姿に惑わされる事無く、自分の目と心で見定める義務が有る』の意味を理解した。

「できたらもっと静かな所で、落ち着いて話しをしたいのですが」

「私の店でもよろしければ」

「場所を。住所を教えてください。一緒では目立つので、別々に移動しましょう」

「そうよね。私と並んで歩くのは。目立ち過ぎるわよね。」

 中道はバッグから、メモ用紙とペンを出すと、地図を書いて多治見へ渡した。

「先に行って、ドアを開けてお待ちしています」

 すっと立つ中道の身長は、優に百八十は超している。隣で座っていた時は然程気にならなかったが、かなりの大女だった。

「わかりました。少ししたら追いかけます。」

 やっとの思いで答えた。

 中道はクルリときびすを返し、エレベータへ向かってモンローウォークで歩き出した。


《第一印象は『無し』です。

仕置きには、目立ち過ぎる存在と思います。》


 多治見は奉行へメールを送ると、中道の後を追うようにエレベータへ向かった。


 外へ出ると貰った地図を見ること無く、先を行く中道の帽子が視界に入った。多治見は帽子の尾行を始めた。


 帽子は総武線津田沼駅北口の大通りを北へ進む。大きな交差点を渡り、先にある路地を曲がると、多治見の視界から消えた。しかし慌てず歩き、同じように路地に入る。突き当たりに有る雑居ビルへ、帽子が入って行くのが辛うじて見えた。

 このビルには、スナックやバー、居酒屋などの飲み屋が何件か入っているようで、入口には色とりどりの華やかな看板が、見事に客引きをしていた。さすがにどの店かは判らず、貰った地図を取り出して見る。メモには『(いぶ)し銀』と書かれてある。看板を探すと三階となっていた。多治見は正面の階段を登り始めた。


 三階に着くと開いたままのドアが見えた。

「ドアを開けて――か。有言実行タイプか」

 多治見はドアをノックして店へ入ると、ドアを閉めた。

「何にします?」

「えっ?」

「飲みながら話した方がお互い良いと思って……」

「酔っ払ったら、話しは聞けませんよ。」

「それもそうね。じゃ、コーヒーを淹れるから、お好きな所に掛けてお待ちになって。」

 中道は奥へ入っていった。多治見はカウンターの真ん中を選んで座った。

「綺麗にしていますね。」

 奥へ向かって言うと、「褒めて貰えて、嬉しいわ」とご機嫌な声で返事をした。コーヒーの香りが漂い始める。

「ドリップですか?」

「お判りになるの?多治見さんはコーヒー通?」

「『通』という訳では無いですが、インスタントよりは好きですよ。」

「私と一緒。」何故か背中に悪寒が走った。

「お客さんにも、ドリップして出すのですか?」

「あらやだ。ここはお酒を飲んで、楽しんでいただくお店よ。コーヒーなんて出しません。」

 トレイにコーヒーをふたつ載せて中道が現れた。

「カウンターを選ぶなんて。遊び慣れた方なのね。」

「遊びは慣れていません。強いて言うのであれば、職業柄ですかね」

「ご職業は、何を?」

「まだ言えません。」

「そうよね。まだ私を受け入れて頂けるか、判りませんものね」

 上目使いで多治見を見る。二度目の悪寒が走った。

「それもありますが。今は、普通にお話しをしていただきたいからですよ。」

「何からお話しをすれば良いかしら?」

「僕は貴方の名前と歳しか知りません。取り敢えず、どうして岩本の話しに乗ったのか。」

「そうよね。そこが肝心よね。その前にコーヒーをどうぞ」

 多治見は礼を言ってカップを口元へ運び香りを楽しむ。

「良い香りだ」

「ありがとう。多治見さんは私の好みと一緒だわ。意外と気が合うかも」と微笑んだ。三度目の悪寒が走った。


「では、岩本さんのお話しの事だけど」と前置きをして、中道は話し始めた。

「私はね、今はこんなだけど、三年前までは、陸上自衛隊で弾薬関係の班で班長をしていたの。結構偉かったのよ。」

「そうですか。男の中にいたのですね。」

「そうよ。今なら、花園と思えるけど、その頃は地獄だったわ。男所帯で。野外演習が始まると、朝から晩まで、何日も会わす顔は同じ、食べるのも寝るのも、トイレも、何もかも同じなのよ。その中で私は弾薬の管理をしていたわ。朝と昼と夜の三回、毎日実弾の数を数えて、どの部隊の誰に、どの出庫書類で渡したか、授受のサインに漏れは無いか、毎日、毎日。何日も続くの。それが辛いとか面倒だとかは、全然思わなかったのよ。弾薬を扱う危険と背中合わせも、それなりに緊張感があって、充実していた。」

 中道はコーヒーを一口飲み、喉を潤す。多治見はじっと聞き手に回っていた。

「それが三年前。あの晩の恐ろしい、忌まわしい出来事が、それまでの私の人生全てを否定した。」

 遠くを見ながら、その時の事を見ているのかもしれない。そう多治見は思った。

「野外だった。テントで寝ていると、『弾薬の実数と記帳数が違う』と言って、上長がテントに入ってきた。私は慌てて起きて、弾薬庫へ飛んで行った。そして弾薬庫で調べ始めた時、上長が私に手錠を嵌めたの――。」

 中道の頬に涙が伝った。

「何が起きたか判らなかった。上長は無くした実弾を誤魔化す代わりに、『やらせろ』と言って、私のズボンと下着を脱がせた。下半身だけが(あらわ)になって、(あらが)ったけど、手錠よりも、実弾が足りない事の方が私の動きを止めたわ。それから、数日に一度、上長に呼ばれ、弾薬庫で上長の玩具にされた。お構いなく私の体内に、上長の体液は流し込まれたわ。」

「それは惨いな。」

「それから暫くして、弾薬庫で抱かれている所を、仕官に見付かったの。二人して即、首よ。除隊ね。社会に放り出されて、行き場が無くて、私は上長の所へ行った。こんな事になったのは、全て上長の責任だから、私は上長に受け入れられると思った。でも実際は違っていたわ。」

 中道はカウンターから出ると、多治見が座っている椅子を一つ空けて座った。そしてコーヒーを一口飲み、カップの口元を指で拭いた。

「上長は両党使いで、女は線が細く小柄、男は自分より大きくがっちりしているのが好みで、行き着けの店には、決まったホステスやホストがいた。私は野営での玩具に過ぎなかったわ。」

 俯いていた中道が、多治見を直視した。

「もう過去は忘れて、自分の人生をやり直そうと思って、男に目覚めたついでに、この店を出したの。」

「それは良い判断ですね。」

「そう思っていたのは、昨年の十一月まで――。店の準備をしている所に、上長がやってきた。随分と借金を作った様で、当時の勇姿は微塵も無くて、着ている服もみすぼらしい物で、とても客として迎える事は出来なかった。でも一度だけなら、昔の(よしみ)でと、ビールとおつまみを出してあげた。」

 中道は首を横に振った。

「それなのに、『お前がこの店で成功したのは、俺がいたからだ。この店の半分は俺の物だ』なんて言い出した挙句。『半分譲らなければ、弾薬の横流しを警察へ言うぞ』。そう言って私を脅した。」

 多治見は黙々と中道の観察をしていた。

「冗談じゃない。そんなこじ付けに応じる気など無い!って即答して、力ずくで追い出した。それで諦めたと思っていたの。」

 中道の顔に始めて、『憤怒』の感情が見えた。

「半月程経って、師走の書入れ時にあいつは、出勤前のうちの()を路地へ連れ込んで、殴る蹴るの暴行に走ったわ。可愛そうに、その娘は、顔の――、頬骨や鼻骨などを折った上に、何針も縫って、見るも無残な形相になった。当然、この業界にも居れず、クリスマスイブに自殺を選んだの。」

「それは立派な犯罪ですよ。警察には届けたのですか?」

「勿論よ。でも上長がした証拠が無いと、傷害事件として捜査すると言ったきり、今日まで音沙汰無し。」

「それは酷い話しですね。もう一度、警察へ行った方が良い。」

 多治見は正直、地元警察の対応に憤慨していた。

「ありがとう。多治見さんって、優しいのね。」

 何度目か、背中に悪寒を感じた。

(無事にこの店から出られるかな?まさか襲われはしないよな……)

「私は地元警察では当てにならないと、どうせ駄目だと思ったけど、警視総監へ手紙を書いたの。『警察が当てにならないなら、自分の手で、うち娘の敵を取らせてもらいます』って。でも当然よね。返事なんか来なかった。だから、先月の終わりに――」

「まさか」

「えぇ。この手で始末してあげたわ。」

「殺したのですか?」

「あの娘の悲観と無念を晴らす為、甚振(いたぶ)って、じわじわと死の恐怖を教えてあげた。最後は燃やしてやったわ。どうせ家族からも見放されて、荼毘になど付すことなどないだろうから。」

「貴方は殺人者ですか?」

「綺麗な花には毒がある。まさにそれ?」

 多治見はカウンターに肘を着いて頭を抱えた。

「それで?」

「死体は――、骨しか残らなかったから、運ぶのは楽だったわ。黒いビニールの袋へ入れて、市川の海へ散骨した。それが彼の――、上長の最後よ。」

「後悔は?」

「していない。と言うと嘘に成るわね。敵討ちとはいえ、人を殺してしまったのですもの。半殺し程度にしておけば良かったかも知れない。でも治ったら、またうちの娘達に手出しするかも。そんな事を考えていたら、殺してけりを付けた方が良い。そう答えが出たわ。」

「自首は?」

「どうしようか迷っていたわ。その時だった。岩本さんが店に――、ここへ御忍びでいらっしゃったのよ。もう、驚いたわ。始めはただの客としか思っていなくて――」


 岩本が来店すると、数個あるボックスの一つに通された。

「始めまして、ママのケイです。」

「ほう。君がママですか」

「見た目より、ずっと女らしいのよ。ビールで良ろしくて?」

「あぁ。良いよ。それとママだけをキープしたいのだが」

「えっ。始めてのお客様から、ご指名をいただけるなんて、凄く嬉しいわ。ありがとうございます。」

 ビールとつまみが運ばれてきて、「後は私がするから、呼ぶまで近付かないで」と伝え二人は乾杯をした。

「本当に自分の手で始末したのかね。」

 岩本はいきなり本題に入った。

「えっ?もしかして警察の人?」

「手紙を貰ったが。手続き上、私の手元に届くまで、時間が掛かってしまった。拝読して調査させたが、既に行方が掴めない。寄って貴方が始末したと判断したのだが」

「自首は遅かったのね。逮捕(つかまえ)に来られたの?」

「今日はママの話しを聞きたくて、一人で来た。」

「どうして?」

「本当に自首する気だったのかね」

 岩本はその問いには答えずに問い返した。

「迷っていたわ。この娘達だけで、このお店を喧嘩無くやって行ければ、直ぐに自首できたけど、まだ頼り無いし、かといって見捨ててしまう事は、あいつと変わらない様にも思えたわ。」

「なるほど。殺人に抵抗は無かったかね?」

「そんな。無い人なんている訳が無いじゃない。痛めつけて済むようなら簡単だったけど、私の目の届かない所で、うちの娘に何をするか判らない。正直、報復の方が怖かった。」

「だから殺した――」

「えぇ。この娘達、色々な事があって、私の店に来たの。私には守ってあげなければならない責任が有る。余所へ行っても幸せになれるなら良いけど。こればかりは、移ってみないと判らない。出て行って駄目なら、戻って来られる所が無くては。」

「判った。」岩本は席を立とうとした。

「お願い。自首はします。でも、もう少し、せめてチーママが、皆の面倒を見られる様になるまで。時間をください。」

「多治見という男を寄越します。彼に相談してみなさい。」

「えっ?どういう事ですか?」

「今日の私は、客ですよ。常連にはなれそうもないがね。今日の事は誰にも言わない様に。言えば――」

「判りました。お慈悲をいただけて。ありがとうございます。多治見様をお待ちしています。」


「そう言う事ですか。」

 今度は腕を組み、大きな溜息を吐いた。

「もう少し時間が欲しいの。一年……、いいえ半年でも良いわ。お願いです。」

「実をいうと、僕は殺し屋なのです。今日はスカウトに来ました。」

 中道が身を退いて、多治見へ怪訝な顔を向けた。

「ご冗談――よね。」

 多治見はしっかりと中道の目を見て、「本当です」と答えた。




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