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獣はヒトの夢を見る  作者:
倫子
14/53

代償

解散した一同だったが、無理やりに食べる昼食は味は全くしなかった。

倫子から見ると自分は村人で、だから怪しまれることなど深く考えてみもしなかったが、しかし他の人々から見ると自分はグレーで、何かあれば怪しまれるのは当然のことだった。

よく考えてみると、倫子は誰にも占われていないばかりか、村に有益な情報も落としていない。

占い先の投票の時、同じように入口を指した中には杏子しか、いなかった。杏子は全くのグレーではなく、杏子は結に、白を出されて若干白かった。

つまりは、この中で一番怪しまれるのは倫子、ということだった。

悪いことに、今日の投票で指定されているのは美沙、杏子、倫子、大悟、靖、純。

この中で怪しまれるとしたら、恐らく倫子が一番になってしまうのではないか。

吊られるかも、と思った瞬間、倫子はさっき感じたあの、去ることのない重苦しい恐怖が、じわじわと迫って来るのを感じた。

このままではいけない。

倫子は、急いで食器を片付けると、回りを見た。誰かに話を聞いてもらいたい…でも、言い訳だと思われるんじゃないか。確かに、自分は自分の潔白を証明できるようなことはして来なかった。でも、間違いなく村人なのに。

洋子が、黙って立ち上がるのを見た倫子は、すがるような気持ちで洋子に歩み寄り、小声で言った。

「洋子…あの、さっきの占い先の投票のことなんだけど。」

洋子は、こちらを見もせずに言った。

「ああ…別に。何の役職を引いてても、ここでは不可抗力だから仕方がないと思うわ。倫子は上手く潜伏してたと思うわよ。でも、あんなボロを出したんじゃね。」

倫子は、首を振った。

「違うの!私は村人。だからぼうっとしてて、別にどっちでもいいやって指しただけだったのよ。洋子は信じてくれてたじゃない。」

洋子は、ちらと倫子を見た。

「…信じてたわ。要よりね。だから霊能者だって打ち明けたのに、あなた全く庇ってもくれなかったじゃない。あそこで口を出したら、自分まで疑われるとか、計算が働いたんでしょう。あんな年上の男の人に対抗されたんじゃ、勢いで押されて私一人じゃどうにもならなかったわ。お陰で、私は今狂人扱い。それとも狂人だと思った?あなたが狐だったら、狂人を庇って疑われるいわれはないもんね。」

倫子は、そんな風に思っていたのかと絶句した。確かに、あの瞬間心が揺れた。もしかして満が本物なのだろうかと疑った。確かな考えもないのに、口を出して矛先が自分へ来るのを恐れて黙ってしまった…。

「私が庇ったら、余計に怪しいかと思ったの。だって何の考察も言えないのに、ただ友達だからって庇っても。二人まとめて人外陣営だって思われるのがオチだろうって。」

洋子は、嘲るように微かに笑った。

「もう、いいわよ。どちらにしても、関係ないわ。私達は違う陣営だったんだから。こうして二人で話してても、お互いにとっていいことはないわよ?二人とも疑われてるんだから。じゃあね。」

洋子は、さっさと歩き去って行った。

「洋子!」

倫子は、必死に呼び止めたが、洋子が振り返ることはない。倫子は本当に後悔していた…何も、考えていなかった。考察も要や政孝に任せきりだった。それが、いけなかったのだ。これは、陣営同士の勝負とは言っても、お互いの陣営が分からない以上、個人の勝負だったのだ。個々人がしっかりと考えて行かないと、陣営の勝利は導けない。村人は勝利出来ない。あと、吊縄は、6つ…。

縄を無駄にするわけにはいかない。

倫子は、強くそう思った。今日自分に投票する中に、必ず人外が混じっているはず。村人を吊って縄を消費させようとする人たちが…。

キッチンには、もう人は残っていなかった。

倫子は、急いで要の部屋へと向かった。


ドアをノックする。しかし、何の応答もない。

誰も居ないのかと思ったが、部屋へと籠ることを提案したのは政孝だ。要が、唯一信じられる政孝の指示を守らないはずはなかった。

なので、聞こえないのかと思い、カードキーを通す場所に着いている、インターフォンを押してみた。すると、要の声が応えた。

『はい?』

倫子は、表情を引き締めて、言った。

「要、私よ。入っていい?」

しばらく、間があった。だが、声は言った。

『いいよ。入って。』

ドアを開いて中へと入ると、そこには政孝と美沙も居た。要だけだと思っていた倫子は少しためらったが、それでも意を決して奥へと進んだ。

要は、ベッドの方を指しながら言った。

「来客が多くてね。そっちに座ってくれたらいいよ。」

倫子は頷いて、慎重にベッドへと腰を下ろす。要は、苦笑して言った。

「それで、弁解しに来たの?」

倫子は、頷いた。

「ええ。私、馬鹿なことをしたんだってやっと気付いたから。占い先なんてどっちでもいいとか思ってしまったの…それで、指しやすかった入口を指しただけ。」

美沙が、呆れたように政孝を見た。政孝が、息をついた。

「今、その可能性を要に言われて聞いてたところだ。あんまりにも何も考えてないような行動だから、本当に何も考えてないんだろうってさ。美沙さんはそれなりに何か考えがあるかもしれないから、理由を聞こうと言いに来たんだよ。このままじゃ、完全グレーで怪しい行動をした君が吊られるからとね。吊縄を、無駄にしたくないからだそうだ。」

美沙が、頷いて倫子を見た。

「私から見て、倫子ちゃんはとても白いから、このまま吊られるのは困ると思ったのよ。もし何かあるなら、言って欲しいって。でも、本当に何もないのね。困ったわ…。」

政孝は、頷いた。

「いや、これで美沙さんが倫子が怪しいと思うなら、投票するのを止めない。実はオレにも分からなくなってるから…杏子ちゃんも最初から投票先が他とずれたりしてるから、何かを庇おうとしてるのかなとか思えるし、倫子ちゃんはこんな感じだし。」

要が、身を乗り出した。

「頼むよ、政孝さん。倫子はいつもこんな感じなんだ。バカでしょうがないんだよ。確かに村でもこんなバカは要らないかもしれない。吊った方がノイズが無くていいのかもしれないけど、今は縄が大事なんだ。オレは倫子を信じるよ。姉ちゃんは信じられないし…。」

倫子は、いつも馬鹿にされてばかりで口喧嘩ばっかりの要が、こうやって必死に庇ってくれるのが嬉しかった。言葉はちょっとアレだけど。

「そういえばさっき…洋子に分かってもらおうと思って、話したけど相手にしてもらえなかったの。実はキッチンで、話し合いの前に私を信じて霊能者だって教えてくれてたんだけど、私、満さんの勢いに押されて、全く洋子を庇えなかったから、それをなじられて。洋子を真霊能だと思っていたけど、話を聞いていたら、揺れてしまって。洋子は、本当に狂人なんでしょうか。」

政孝と美沙が、顔を見合わせた。そして、政孝が言った。

「狂人の可能性が高いと思っている。人狼だとして、あのタイミングで出るだろうかって。ただ、まだ真霊能の可能性はあるよ。満の方が、前日からしっかり考えた騙りの可能性があるからね。でも吊られるかもしれないような状況で、あの落ち着きは出せない気がするんだ…一日目の満だけどね。京介があれだけ乱れたのに、満は落ち着いてた。人狼になると、考えることが多くて心に余裕がなくなるからね。満には、その余裕があったんだよなー…。」

美沙が、困ったように顔をしかめた。

「まだ占い結果も一度だけだし、確かな情報がないから。」と、立ち上がって、倫子を見た。「倫子ちゃんも、しっかり考えるようにね。杏子ちゃんが結構最初から動きが怪しいなって意見が多かったし、今の時点では倫子ちゃんは確定ではないと思うけど、でも結構怪しまれてたよ。今夜は二人で票が割れる気がする。私もよく考えるけど…今の話を聞いて、揺れてるのは確か。村人なら、もっとしっかり人狼とか狐を探さなきゃ。」

美沙はそう言い置くと、政孝と要に会釈して、そこを出て行った。

要が、言った。

「今日は厳しいことになる。共有者の間でも意見が分かれてるぐらいだから、他はもっとだろう。でも、人狼は票を合わせて来るはずだ。ちゃんとした意見がない限り、今夜は倫子が吊られるぞ。夜までにまともな弁明を考えておくんだ。」

そして、要はふいと横を向いた。これ以上は、話したくないようだ。政孝も、じっとだんまりを貫いていて、しばらくそこに呆然と立っていた倫子だったが、仕方なく踵を返した。

自分のために頑張れるのは、自分しか居ないのだ。

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