矢戦要の日記
CODEシリーズの日記物です。外伝ですが、今までより能力色の濃いものであります。
僕は夜道を夜食を買いに大通りを歩いていた。すると、高層ビルに飛び上がる人影を見ました。その禍々しい雰囲気に、すぐに危機感を感じて路地に入りました。
僕はSNOWCODEの血を受け継ぐ者で、特殊な力を持っていました。救世主と呼ばれる者ほど濃い血を引いていないので、そこまでのアストラルコードを使えませんが、それでも、ある程度強力な力を施行できました。
知り合いの我神棗。彼は救世主であり、彼ほどの救世主はいないだろう。ビルとビルの間を壁を蹴りながら上部に上がっていき屋上に出ました。そこには、コートを着た人間のような存在が歩く後姿がありました。すぐに追いかけようとすると、それを止める者がいました。
振り返ると、友人で同じくSNOWCODEの血を引く槐和馬が、僕の肩に手を置いていた。
「止めておけ、あいつは俺達の手に負える相手じゃない」
「僕らでも、上界の者だって全力でぶつかれば何とかなる」
「お前にアストラルコードを教えたのは俺だ。
お前はまだまだだな。アストラルコードを研ぎ澄ませ。どう感知しても、あいつは上界の者じゃない」
「上界の者じゃない?!じゃあ、あれは?」
「おそらく、絶界と呼ばれる世界の使者だ。俺も噂でしか絶界については聞いたことはないがな。上界の者の何者もが畏怖する存在で、かなり強力だそうだ」
その言葉に僕は身震いをした。その存在をビルの屋上でとりあえず今は見送ることにした。僕は絶界の存在が何故、ここに姿を見せたのか、何故、邪気を発していたのかが気になった。
そこで、和馬と話し合った。
「絶界は位相の違うし次元が高いと聞く。ここに干渉しようとは思わないはずだぜ」
「それなら、上界より神格の上の世界のはずだし、善悪の概念も存在しないはず」
「でも、実態があったのが疑問だな」
結局、結論は出ない。そこで、棗に相談しようと思った。
次の日、彼の家に行ったが、長期で外国に行っているらしい。仕方なく、同じSNOWCODEの血を引く蔓独人に会いに行った。彼はバンド活動をしていて、すでにインディーズからメジャーデビューしていた。なかなか掴まらなかったが、ライブ後の控え室でやっと捕まえることができた。彼に相談すると、孤独を心に抱え、無口で冷静な彼はうむと考え込んだ。
「これは、絶界に接触した奴がこの世界にいるんじゃないか?そいつに会うことが先決だ。同じSNOWCODEの血をお前らは感知できるだろう」
そこで、僕は多忙な彼に無謀を覚悟で言った。
「一緒に来てくれないか?」
「悪いが、忙しいのでな」
予測どおり、彼は断った。和馬と顔を見合わせて、とりあえず、絶界に接触した人物を探すことにした。
そんな大それたことができるのは、おそらく救世主か、もしかしたら、SNOWCODEの血を引く者だろう。
和馬はすぐに嗅ぎつけました。上界の者が狙っているという存在がいることをラフェルの僕を捕まえて聞いたそうだ。どうも、絶界の者2柱と契約を結び、その力を行使できるそうだ。僕は和馬とともにその人物に会った。
彼の名は翡翠翔という人物でした。ドラゴンを飼っていて、法術という異界の術で憑依召還できるそうだ。しかも、SNOWCODEの血を継ぐ者で、ヴィジョンの能力も持っているそうだ。何かといわくつきの彼は、上界の者からの刺客を排除していました。その翔に会うために、彼の気配を辿りながら都会をさ迷っていました。すると、そこに見慣れないローブを着た者が現れた。
「こいつは異世界の者だ」
鋭い感覚の和馬がそう叫んで戦闘態勢に入りました。
「そいつらは鬼術師だよ」
その声に振り返ると、ビルから飛び降りた者がいた。そのドラゴンの翼から、翔だということが分かった。
「法界と相反する世界、混沌界の術師だ」
そう言って、僕達に参戦してくれた。翔と和馬はさっと敵の背後に回ります。そこで、翔はドラゴン人間に変化して、空に舞い上がりました。
「それが法術か。下らん」
鬼術師がそう吐き捨てると、大きく腕を振り回した。すると、黒い炎の竜巻が彼の周りに発した。和馬は衝撃波を放ち、その炎の穴に飛び込む。炎が得意なドラゴンと憑依召還した翔は空から炎に飛び込んだ。
僕は正面から、精一杯の波動を放った。黒い炎の中で大爆発が起こった。翔が和馬を掴んで舞い上がる。僕の正面に鬼術師が駆け出した。僕は空気の刃を放った。しかし、簡単に弾かれた。明らかにレベルが違った。彼は僕などにかまわず、翔を恐れて次元の穴を開けてその中に逃げた。咄嗟にそれが閉まる前に僕は一緒にその穴に飛び込んでしまった。翔に捕まって、和馬は唖然としながら僕の安否を心配していた。
気づくと周りは凄まじい砂嵐の中にいた。すぐに口を袖で塞ぎ、視界の悪い中で見つけた小屋に飛び込んだ。中にあった砂避けのマントを壁から取ってまとった。ここが混沌界だろうか。次に奥の倉庫から缶詰を4つにスプリングウォーターの瓶を2本皮袋に入れて背負った。床に落ちていた長剣をベルトに挟んで少し休むことにした。すると、天井から大きな生物が落ちてきた。すぐに剣を構えてそれに向かった。
その動物は、2倍の大きさの熊に4本腕、3つ目の存在だった。剣にアストラルコードを込めて振り下ろした。しかし、エネルギー波の刃が放たれた。だが、すぐにはたかれてしまった。そこで、精神力を高めて無意識にあるエネルギーを高めた。この世界が僕に影響を与えたようだ。
もう1度、剣を振った。今度はアストラルコードではなく、別の力のエネルギー波が放たれた。今度は振り落とそうとした腕が切られて落ちた。熊のような化け物は多少、動揺した。
もう1度剣を思い切り振り下ろした。しかし、再度鬼術を発揮することはできなかった。それを見ると、熊の化け物は飛び掛ってきた。僕は咄嗟に剣を捨てて両手を前に出した。すると、両手から強烈な空間の歪みの渦が放たれた。それは熊の化け物を巻き込み、体を見るも無残にぐちゃぐちゃにした。
どうも、この力は無意識にしか出ないらしい。自分の意思で発生できるように修行しないと、ここでは生き残れないことに気づく。熊の化け物を剣で解体して、暖炉に火をつけて焼き始めた。普通の熊の倍以上なので、どんなに食べても半分も残っていた。そこに誰かがこの小屋に入ってきた。
「お前は誰だ?…外界者か」
そして、熊の化け物の死骸と僕の口元を見て目を見開いた。
「まさか、お前、砂熊を1人で倒したのか?」
そこで、目が鋭くなる。
「お前、鬼術師か?」
「らしいな」
「そうか」
彼はマントを脱ぐと、貴族のような姿であった。
「俺はこの砂嵐の国の皇太子レドルだ。賊に襲われ1人ここにたどり着いた。…しかし、倒した砂熊を食うか?普通」
「…食べる?」
僕が訊くと、彼はお腹を鳴らして小さく頷いた。2人の食事が始まった。
食事を済ませて、残りの砂熊を燻製にして保存食としてレドルが背負った。ここにいても仕方ないので、砂嵐が常に起こる砂の荒野を超えることにした。彼の王国に向かうことにした僕は、ボディガードになって進んだ。酷い嵐は5km過ぎるとなくなった。砂嵐の壁を見て不思議な自然を見つめていると、背後に気配を感じた。気づくと、隣のレドルは剣を抜いて遠くを睨んでいる。僕も剣を構えて前を見た。
おそらく、レドル率いるセカンドール護衛隊を撃破した盗賊だろう。¥皆、不思議な武器、鞭にナイフがついているゲントを持っていた。黒いローブを着ているところを見ると、彼らは鬼術師盗賊だろう。
気が引き締まる。向こうは20人はいるだろう。すぐに、彼らは駆け出してこちらに迫ってきた。僕は何も考えずに思い切り叫んで剣を振り下ろした。すると、偶然なのか鬼術が発生した。剣から巨大な影のドラゴンが伸びていった。砂の大地に地割れを起こしながら、彼らに迫る。2人は砂の壁の鬼術を作ってバリアを張るが、地割れに吸い込まれて落ちていった。3人は影のドラゴンに雷を起こして攻撃するが、実態がないために意味なく体を貫かれた。影に貫かれた賊は魂が抜けて倒れていった。すぐに彼らは逃げ出した。
僕達は顔を見合わせて唖然としていた。影のドラゴンは賊を追ってそのまま去っていった。
しばらく進むと、野生の馬のような動物、オルクが群れで通りかかった。レドルは器用にその中から無作為に2頭を捕まえた。格好は水かきが7つのオットセイのようなもので、水かきは足のように長くなっていた。肌はぬめりはなく、短い毛が全身を覆っている。尻尾は3本で鞭のようだ。レドルは無言で乗った。
僕は初めてなので、乗ろうとするとオルクが暴れて落ちた。3回目に何とか短い首に掴まって乗ることが出来た。ところが、突然走り出す。必死で捕まっていると、レドルのオルクが先導して僕のオルクはそれに従った。彼の先導で何とか僕は王国に向かうことはできた。オルクは足が速く、特に砂での移動は得意であった。しばらく行くと、鉛の湖が広がっていた。その上をオルクは走る。どうも、粘体のようで弾力のあるゼリーかスライムの上のようであった。肌触りは粘りはないが、つるつるでもない。今まで感じたことのない不思議な感覚であった。その先には砂の国の城下町が広がっていた。
沈まぬ湖を進んでいると、そこに魚のような巨大食人生物が現れた。僕は剣を抜いてレドルに先に行かせた。魚は全部で5匹。剣を思い切り粘体の湖に刺した。すると、無意識に心の底に力が発生した。途端に湖の魚に湖面から発生した大きな手が迫った。5匹が掴まれてそのまま沈んでいった。
レドルを追って急ぐが、そこに今度はドラゴンが湖から現れた。僕は剣を構えて思い切り振り下ろした。しかし、真空波はドラゴンの皮膚に傷1つつけることはできなかった。オルクは僕を振り落として逃げていってしまった。沈まなくても、ゼリーのような柔らかすぎるトランポリンというか、とにかく足場の悪い場所なので立って踏ん張ることはできなかった。バランスを保つのだけで精一杯である。ドラゴンは泥を吐き出した。それを避けると、泥のかかった湖面が煙を吐いた。今が最大の危機だということを思い知らされた。それでも僕は希望を忘れずにドラゴンを睨みつけた。
本来、ドラゴンという種族はこの世界にはいないはず。マッドドラゴンはここの自然生物の一種であり、
ドラゴンとは違う存在であろう。いわば、ドラゴンの形に似た別の生物だ。ドラゴンでなければ、それほどの力もない。僕は剣を振り払った。バランスを崩して倒れるが、それでも衝撃波は放たれた。マッドドラゴンは泥を吐いてそれを相殺する。と同時に、僕は勝手に体が動き剣を振り払った。
再び、影のドラゴンが発生した。ゼリー状の湖を割りながら、それは同じ形をするマッドドラゴンの胸を貫いた。ドラゴンは魂を抜かれてそのまま湖に沈んだ。影はそのまま天に去っていった。すぐに駆け出して城下町を目指した。湖を越えた頃にはすでに真っ暗になっていた。城下町は真っ暗ですでに住人は寝静まっているようだ。勿論、レドルの姿もなかった。
宿屋に行っても、ここの金銭は持っていない。僕は仕方なく町外れの岩場の洞窟に身を潜めた。
早朝、起きて町を見て歩くと衛兵が慌しく行きかっている。どうも敵襲があるらしい。街には外出禁止令がかかっているようだ。住人は誰も外に出ない。そこで、僕は傭兵部隊に紛れ込んで敵の様子を見に行くことにした。城下町の外には重装騎兵がすでに守りを固めていた。僕達傭兵隊は別行動で西口から大回りで敵の後ろから攻める作戦のようだ。城下町を囲んだ城壁は門を固く閉められ、兵士達で固められる。城壁の上には石弓や長弓隊が矢を構えている。西の裏門から岩場を越えて敵隊の背後に来たところで、岩場から敵が見えた。それは黒ローブの団体であった。
レドルを襲った賊の鬼術師もただの盗賊じゃないかもしれない。黒のローブは鬼術師の証拠。その集団が何故、レドルの砂の国を狙うのだろうか。彼らが城壁前の騎兵隊にたどり着く前に、傭兵隊は裏から攻め始めた。奇襲攻撃のはずだが、すぐに彼らは僕達の方に向かって炎を放った。彼らはすぐに体制を崩して後ろに下がり始める。勇気のある、或いは無謀な者達は青銅の盾で炎を防ぎながら進む。僕はその中を猛スピードで前に進み、剣を抜いて精神を研ぎ澄ませた。無心になって傭兵の中を飛び出して剣を振った。すると、空気の歪みが発生して彼らに迫った。3人の鬼術師は結界を張ってそれを防いだ。敵側に鬼術師がいると想定していなかったので、泡を食っているようだ。その隙を突いてさらに攻撃をしようとした。
すると、嫌な気配が近づいてきたので、すぐに傭兵隊に向かって撤退した。と同時に鬼術師軍団に僕が前に放った影のドラゴンが迫ってきた。結界を破り3人の命を吸った。次に攻撃と守備の術を行使するが、ドラゴンは彼らを全滅させて消滅した。考えられるのは、あの賊の中の何人かはあの中にいたのだ。
影のドラゴンから逃げ切ったのだが、今になって追いつかれたのだと思う。自分の力に流石に恐ろしくなった。
傭兵隊も王国兵団も僕が鬼術で、強力な鬼術師軍団を一瞬で倒したことに畏怖した。そして、すぐに捕らえられ、玉座の前につれてこられた。レドル皇太子はすぐに僕と気づき弁護を申し出るが、その強力な鬼術の為、そして、外界人の為に信用されなかった。全員の大臣の意見一致により、地下の牢に幽閉された。
石で詰まれた部屋には、3m上にある鉄格子以外に光はない。汚い木のベッドにバケツが1つだけ転がっている。僕は精神を集中させて、無心のままで拳に力を込めて壁に放った。すると、凄まじい爆発とともに壁に穴が開いた。その先には下水道があり、どうも下水道の横の壁まで貫いたようであった。そのまま駆け出して下水道の脇の歩道を必死に走った。
下水設備は城の中だけしか整備されていないようで、そとの川に続いていた。錆びた梯子を降りて川のそばに下りると、城下町の道であった。川は町中を通り城壁の外まで続いている。僕はもう1度、無心になって思い切り手に力を放った。すると、川の水が細く割れて道ができた。飛び込みその道を通り、川から城壁の外に脱出できた。その後、川を元に戻して当てのない旅に出ることにした。囚人服のままで。
とりあえず、あの僕の世界に攻めてきて僕をここに連れてきた鬼術師の集団を見つけて倒すことにした。
ヒントは僕が気づいたあの砂嵐の大地。あそこに僕がいたということは、彼らもそこに出たと言える。
すると、あの近くに彼らのアジトがあると推測できる。しかし、あの過酷な場所にそんなところはなかった。きっと、結界で目隠ししているのかもしれない。
僕はもう1度あの砂嵐の中に入ることにした。水も食料も砂避けのマントも武器もない。だが、この世界にいつまでもいる訳にも、あの賊に僕の世界を攻撃させる訳にもいかなかった。砂嵐の大地まで移動するために鬼術を使うことにした。
まだ、コントロールできないが、両手を地に突いて無心になった。5分後、突如、圧縮空気が放たれて僕は鉛色の湖も平原も越えて、あの砂嵐の中に放り込まれた。砂がクッションになったので怪我なく着地した。何とかこの中から彼らの基地を探そうとさ迷うと、ある砂地獄に足を取られ、そのまま砂に吸い込まれていってしまった。
気づくと、地底の空間にいた。天からは砂が流れ落ちてきていた。地下にある空洞を探索した。しかし、鬼術師の痕跡はなかった。敵もプロ。そのくらいのことは当然だろう。それでも、人がくれば痕跡は残る。
僕は鬼術に慣れてきていたので、無意識に指を振っていた。すると、足跡がついていた。それを追って奥に向かっていく。石階段があり、その上は洞窟であった。どうも結界で目隠しした入り口の方に来てしまったようだ。きびすを返して逆の賊のアジトに向かって歩き始めた。そこで、僕が普通に近づけば相手にも気づかれる。とにかく、気配を消す術を使った。気づけば無心になれば、術をコントロールできるようになっていた。もしかしたら、この空間は鬼術に有効なのかもしれない。奥には岩の扉があり、トラップが張ってあった。しかも、その前には結界があり、忍び込むという行為さえ困難であった。
トラップや結界を鬼術で無効にすると、通路の奥に岩の扉があった。とても1人では開けられない重さだろうが、その前に立っている人がいた。雰囲気から敵の一味ではないようだが、とても、常人ではないと感じられた。あのトラップも結界も無効にすることなくここまできたのだから、鬼術は僕よりも桁違いだろう。
「貴方は?」
すると、彼女はレイピアを僕の喉元に突き出した。
「足手まといは失せろ」
何も話さなくても、すでに僕の状況を把握しているのだろう。
「同じ敵だ。協力しないか?」
「だから…、少しは力になりそうね。貴方、ブラックドラゴンの使い手ね」
「ブラックドラゴン?」
すると、軽蔑の目で見た。
「そんなのも知らずに使っていたのね。鬼力の潜在能力は桁違いのようだし」
とりあえず、ブラックドラゴンについて訊くことにした。敵のアジトの前だが…。
ブラックドラゴンとは、彼女の話では鬼術の中でも最強の術だそうだ。まず、法術と違い、鬼術はアンチネーチャー系、ダークマター系、ディメンション系、召還系、複合系が基本だ。その中の召還系の中で最大の奥義がダークドラゴンだそうだ。物質に触れることなく人の魂を食らう、しかも、1回ターゲットをロックオンすると追尾し続けるのだ。そのターゲットも目視すれば複数セットできるのだそうだ。それが使えるのは、鬼力にかなりの余裕がある者であること、次に資格を持つ者だそうだ。
そして、召還する相手が認めて向こうから契約を結ばないと不可能だそうだ。だから、僕はかなり特殊なケースと言える。とにかく、アジトの岩のドアを開けると、中にいるローブ姿の者達は身構えた。刹那、僕達は攻撃態勢に入った。
6人の賊は明らかに今まで会った鬼術師の中で桁違いの力を持っていることは、能力を使わずとも肌で分かった。女性戦士のことは無視して、僕をこの世界に連れてきた頭領の鬼術師に向かっていった。すぐに無心になって剣を振った。
すると、ダークドラゴンが現れる。しかし、彼は姿を消した。おそらく、空気の屈折率を変化させて僕の視界から逃れたのだろう。ダークドラゴンは視界に入らないとターゲットに出来ない。それを知っていたのだろう。気づくと、2人の敵は倒されている。彼女はかなりのてだれのようだ。僕は空気をゆがめた。
すると、屈折率を変化させることができた。僕は空気を変化させることもでき、召還系とアンチネーチャー系のエアロ種が得意らしい。姿が見えたところで、ダークドラゴンはすぐに賊の頭領の命を奪った。
振り返ると、彼女は残りの賊を倒していた。
「やはり、戦力になったか。あの頭領はなかなかの曲者だったんだよ」
「でも、元の世界に帰れなくなった」
「そうか、では私が次元を開いてやろう」
彼女は手を岩の壁につけると穴が開いた。その中に僕は躊躇いながら入っていった。気づくと、真夜中のビルの屋上にいた。
久々の家なのに、混沌界の時間の流れと違う為、家の人は2日間の外泊だと思っていたようだった。それにしても、あの絶界の者は何故この世界にいたのだろう。鬼術師の一件でうやもやになったが、そもそも絶界の者が来た理由が気になった。今日、1日は休んで明日、和馬とともに探ることにした。10時間は寝ただろうか。ふと起きると上界の存在が立っていた。
「我は美還。絶界の者がこの次元の位相に侵蝕し始めた。お前達、人間の中で特殊な能力を持つ者で何とかしてほしい」
「僕達だけでは、太刀打ちできないさ」
「いいや、我々も手助けをする」
「それでも、無理だ。上界の四天王がこぞってもな」
「しかし、防がねばならん」
「まずは相手の動向や目的を探るべきだ」
「よし、ではそれは任せる。いざとなったら、世界の天秤の秩序の為、戦いになることは否めん」
彼はそう言って去っていった。
今日はあの絶界の存在を探した。しかし、なかなか見つかるものでもない。さらに、事件や事象を起こしている訳でもないので、手がかりさえなく、どこを探していいかさえ分からない。鬼術を行使してみた。
空気中に通常にはない次元の要素を感知する。すると、かすかに異様な雰囲気を感じた。すぐに走っていくと冥王ラフェルであった。上界の存在なので、勿論、通常にない次元の要素を感じるはずだ。
「混沌界の術を使うのはお前か」
その答えに戸惑っていると、答えを待たずにすぐに彼は話し出した。
「その力を貸してくれぬか?絶界の者はこの世界の核を狙っている。その核に何をしようとしているかは知らぬが」
上界の者の意図は分からないし、核の意味も分からないが、目的も一緒なので、頷くことにした。そうすると、ラフェルはある場所に導いた。僕はおずおずとついて行った。
僕はラフェルに訊いた。
「この世界の核とは?」
「この世界には数々の次元の要素が重なって存在している。でも、それは偶然でも自然に接しているのでもない。『核』と言われる力の結晶で結ばれているのだ。それが破壊されると、この世界の次元は分解して破壊される。勿論、密接に関係している上界も影響を免れぬ」
すると、ラフェルと絶界の者を探していると、ある人物が姿を現した。彼の使者であるフェイクという者らしい。彼いわく、絶界の者は近くにいるらしい。すぐに駆けつけると、そこにはマントを羽織った者がいた。彼は手を僕達に向ける。そこで、僕は叫んだ。
「何故、こんなことをするんだ!」
すると、意外にも彼はあっさりと答えた。
「別に核などを破壊しようとは思わん」
その言葉に僕はラフェルを睨みつけた。上界の者の方が何かを企んでいるのだと直感で感じた。それに絶界の者の彼がここに来た理由があるのだと推測した。
「私はスウィン。絶界を拒む上界の者のしそうなことだ」
僕はどちらを信じればいいのか分からなくなった。でも、絶界の者と契約してこの世界の人間に力を貸してくれる者もいる。善悪という概念はないだろうが、人間のいうところの悪、ではないだろう。ラフェルが単に上界の代表として、スウィンを排除しにきたのか。じゃあ、僕は何の為にここへ?
「スウィン。ここに来た目的は?」
すると、手をかざす。七色の光が天に伸びた。
「私は光を司る者。ここの光を少し分けてもらおうと思ってきた」
「ここの光を分けてもらう?その光が核なのだ。少しでも核を削ると、ここの秩序は崩れる」
「大丈夫だ。ほんの少しだけだから」
スウィンの言葉とラフェルの言葉。どちらにしても、僕達下界の人間には理解は不可能であった。勿論、スウィンと戦う気も失せた。しばらく、この対峙する双方の様子を見ていることにした。
ラフェルとスウィンは戦いを始めた。最初はラフェルが一方的に攻撃していて、スウィンがそれをかわしている形だったが、すぐにスウィンは光のバリアで結界を作った。僕はこの無益な戦いを止める為に鬼術で割って入ることにした。ラフェルは身構えてすぐに距離を取った。スウィンと僕の両方が相手では分が悪いと、彼はそのまま上界に戻っていった。
「上界の者はこの世界には魂の存在だから、実存できないはずなんだけど」
すると、スウィンは言う。
「中には仮初の肉体を自ら一時的に作ることが出来る者もいる。次元を超えるためには、それができないと不可能だからだ」
その答えは僕の概念の範疇を逸脱していた。
「ラフェルをあのままにしていいのか?」
「ああ。私相手に何もできんさ」
彼はそういうと、この世界の核の欠片、光を取りに向かった。僕はそれについていくことにした。
スウィンは東京タワーの頂上に上がり、周囲を眺めている。きっと、この世界の核を探しているのだろう。しかし、一向に見つけることが出来ない。
「光が結界に隠されているようだ」
そう呟くとスウィンは首を横に振った。
「上界の者の仕業だね」
僕の言葉に彼は無言で頷いた。そして、近くにいる上界の者を探した。すぐに飛び降りてビルの屋上を飛びながら、ラフェルの下僕のフェイクを捕まえた。彼は光のありかを話そうとしない。僕の勘では、彼は使者なので核のありかを知らないのではと思った。それでもスウィンは手がかりのない限り、彼を問い詰める。しかし、埒が明かないので、上界に向かうことにした。次元の穴を開けて、彼は上界に向かう。僕もそれについていくことにした。
何故か、この出来事のいく末を見守らないといけない気がしたからだ。
上界に近い存在にもかかわらず、この次元を超えるという行為には違和感があった。そんなに次元を超える人間がいる訳でないので、自分が訳の分からないことを言っていることは分かっているが。そもそも、次元を超えるという事象自体がありえないことであるのだ。少なくとも、この世界の物理現象では。ここよりも上の次元の力を使えば、それも可能になる。タイムスリップも次元移行の一種である。特殊な事例ではあるが。上界に初めてきたが、あまり下界と変らなかった。否、こちらのイメージで決まるのだ。ここはスウィンいわく、上界の最下層と言われる場所で、正確には上界と下界の狭間のような場所だそうだ。最も下界に近い場所。そこで、上界の者の誰かを探して光の場所を探すことになった。しかし、目の前の森から巨大なドラゴンが突如群集となって襲ってきた。
スウィンが光の波動を放った。ドラゴン達はすぐに動きを止めて空中で止まった。
「無駄な戦いはせずに行こう」
僕達は上に向かう道を探した。モンスターベルトと呼ばれる魔物が多い森の先にある城に向かった。魔物はスウィンが光の結界で一切寄せ付けなかった。どんなに強そうな者でも、彼には蚊のようなものなのだろう。森を抜けて城に向かうと、そこにはエイシェントドラゴンがいた。
「ここから立ち去れ」
バリトンの効いた声でゆっくりドラゴンが言った。
「ノガードか。私は絶界の光を司るスウィンだ。光の欠片を少し分けてほしい」
「核を少しでも欠くことが、どれほど不安定を与えることか分からんのか」
「この次元の下界の人間に、絶界から力を分けている者がいる。そのせいで絶界とこの次元の下界の力の量のバランスが崩れている。すでに次元を超えて、次元の天秤がバランスを崩しているのだ」
それを聞いてノガードはうむと唸った。
そこに上界の死を司る冷酷のデスが現れた。デスサイズという巨大な鎌を構えて黒いローブをなびかせて近づいてきた。
「まさか、この僕が?」
彼は善悪に関わらず、年齢に関わらず死の期限に来れば迎えに来るのだ。僕が、まさか。しかし、彼のターゲットはスウィンのようだった。すぐに鎌を振りかざしてノガードの隙から飛び出した。僕はダークドラゴンで無意識にスウィンを守った。さすがのデスも、魂を消滅させるそのドラゴンにひるんだ。
「人間、何故そんな者を守る?」
「この戦いは無意味だ。絶界と上界が何故、いがみ合わないといけない?」
「世界の天秤のバランスを保つ為だ」
「否、絶界の力を使う人間がいる限り、次元の天秤のバランスが崩れる」
そこで、僕が叫ぶ。
「どちらにしても、どちらのバランスも崩れるんでしょ。争っている場合じゃないだろう。別の方法を上界、絶界の者で協力して考えて実行しよう」
デスとスウィンは互いに顔を見合わせて僕を見た。天秤のバランスを守るために、絶界のエネルギーが下界に来るのをまた絶界に戻す方法を考えた。そこでエネルギー変換の能力を持つ存在を探すことにした。
スウィンとデス、そして僕はスウィンの次元を超える能力で、天秤を守る為にその人物を求める旅に出ることになった。
最初に来た世界は、僕達の世界の位相と違う関連性のない場所であった。存在するものは魂のみの為、僕も不思議な実存に変化している。緑の光が辺りを包み、半固形の地面の上を歩いているが、
崖まで来ると空に浮かんで進んだ。周りは真空の中の水分のように丸い水が浮かんでいる。下は底が見えない。まるで、夢の中の世界のように思えた。気分も睡眠薬を飲んだ時のように頭がぼうっとしている。
スウィンとデスはさすがで、変らずに前に向かっている。まるで、目標を知っているかのように。やがて、城のような丸い粘土と氷の混ぜたような建物が見えてきた。それは丸い水の浮く海の先の半固形の島に揺れていた。城に行こうとしたが、そこから大勢の鳥人間が現れた。コンドルと人間の融合したような姿の存在である。勿論、彼らも魂のみの存在なので、あの姿は仮初の姿である。実存はない。彼らは戦い意思があるようだ。
ジャベリンを構えて徐々に近づく。スウィンは手を前に出す。すると、彼らは凄まじい光の渦に巻き込まれて城に飛ばされた。デスは何もする気はない。彼は死すべき者しか殺さないし、戦う気もないのだ。例え、自分の存在が危険になっても。心が氷で出来ているようだ。僕はとにかく鬼術を使って結界を張った。
これで彼らは1km以上は僕らに近づくことはできない。スウィンはそれを感じ取って、視線だけ僕に送り前に進んだ。彼らの中にエネルギー移行能力を持つ者がいるとは思えなかったが。
スウィンが光線を放った。城は城門が破壊されて中から翼を持つ兵士が出てくる。デスは無関心に遠くでデスサイズを肩に置いて、高みの見物をしている。僕は彼らの闘争心をなくすために、鬼術で波動を放った。すると、彼らの中から1人が僕の前にやってきた。僕は冷静に彼に尋ねた。
「何故、僕達を襲う?」
しかし、彼の嘴から発する言葉は理解できなかった。僕は黒術を使って空気の変換を行い、言葉を通訳させた。再び、僕は同じことを訊く。
「羽根のない者が空を飛び、ここに来る。これ以外に理由はないだろう」
「自分達と違うというだけで?」
「羽根がないからだ」
「たったそれだけで?」
「価値観、概念の違いだ。俺達にはそれで十分なんだ」
僕は呆れて言葉も出なかった。
「僕達は強い。自負だと思うけど、君達が何千人掛かってきても、僕とスウィンだけで指一本触れずに死ぬことになる。勿論、僕達は戦う気もないし、殺生はしたくない」
そこで、彼は考え込んでしまった。
彼らは羽根のない僕達を受け入れざる負えないと思い始めた。僕達3人を城の門前に待たせて、審議議会会議が行われた。その間、僕はスウィンに言った。
「ここには、僕達の求めているものや人はいないだろうね」
「でも、会議を待って彼らの解答を待ってからでも遅くないだろう」
デスは無言で少し離れてこちらを見ている。すると、遠くから大きな虎の化け物が大勢攻めてきました。
明らかに知能は低い野生の生物のようだ。しかし、会議に夢中で鳥人間達は気づかないようだ。僕はスウィンと退治することにした。スウィンは光弾を放つ。僕は波動を放った。虎達はすぐに距離をとり、城の周りで徘徊をしながら様子を見始めた。
「どうする?殺すには忍びないし」
「今の私達は魂のみ。殺されることはないが、ダメージは負う」
デスは会いかわらず人事のように眺めていた。
会議が終わり、代表者が現れた。周りに猛獣がいて、それをスウィンが光の結界を張っているにも関わらず、彼は何もないかのように議会の結果を伝える。それは攻撃はしないが、交渉にも応じない。
速やかにこの世界から出て行くことであった。しかたなく、僕達はスウィンの開いた次元の穴に入っていった。
次の世界は水の世界であった。全てが海で陸もなくとりあえず生物のいる水中に入った。ここでは実体がある状態なので水に濡れるし、空気も必要。僕は鬼術でその両方をカバーした。水中には魚はいるが、知的生命はいない。魂の存在もみることができない。とにかく、海底を目指して潜っていった。
海の底にはクリスタルの珊瑚礁が広がっていた。クリスタルでできた珊瑚は生きているようだ。その中を進んでいく。僕の鬼術はネーチャー系の空気を操作する能力と召還能力で助かった。おかげで海の中でも水中の空気を濃縮して呼吸をすることができる。
クリスタルの中を進んでいくと、やがて沈没船が沈んでいた。それは全体にゴムでできているみたいだ。
でも、豪華客船の形をしている。中を覗いてみると、全てがどろどろに溶けていた。もしかしたら、この世界の生物は海水で溶けるのかもしれない。そして、気象状況の変化により海水だらけになって、生物が全部、水没して溶けてしまったのかもしれない。スウィンに視線をやる。彼はさらに先を目指した。デスもそれに続く。本当に生物がいるのだろうか。僕もそれを追っていった。
「お前は、空気系だけでなく召還系の鬼術を使えるのだろう。さっさと前に進むために何かを召還してくれ」
スウィンが言うが、自分でもダークドラゴン以外召還したことはなかった。混乱しながらも、両手を前に出して思い切り力を放った。すると、黒い炎をまとった大きな鳥が放たれた。それは水を消滅させて重力も消して空気のある空間のトンネルを作った。そのまま、どんどん先に向かっていった。
「ダークフェニックスか。つくづく強力な技ばかり使う者だな」
どうも、それもダークドラゴン並の強いもので、複数の特定のものを消去する能力があるようだ。この空気のみのトンネルのメカニズムは分からず、物理の法則を考えるとパラドックスであるので、あえて考えないようにした。僕達はそのトンネルを倍以上のスピードで進んでいくと、やがて、海底にクリスタルタワーが見えてきた。
そこから人魚が続々と三又の槍を持って大勢現われて、僕達は前回の二の舞かと顔を見合わせた。
人魚は空気の空間には入れずに、トンネルの周りでこちらを見ていた。構えて交戦的にこちらを見ている。どう考えても交渉の余地はなかった。
「ここにエネルギー移行の存在はあると思うかい?」
僕がスウィンに訊いて見た。彼は首を横に振る。
「ここは水だけの世界。ないだろうな。それどころか、高エネルギーさえ感じることができない」
すると、高みの見物のデスがやっと口を開いた。
「では、次の次元に行こう」
しかし、スウィンはなおも先に進んでいた。
「次元を超えるには、かなりの力が必要だ。絶界の者にとっては容易いのだが、私は次元移行が苦手でな。1度に3回までが限度だ。後はある程度力が溜まらないと次元の扉を開くことはできない」
その言葉に唖然とした。
とりあえず、スウィンが力を溜めるまで、あのダークフェニックスの後を追うことにした。僕達の後を人魚も臨戦態勢でついてくる。しかし、空気のトンネルがバリアになって、攻撃をしてくることはなかった。魔力も非物理的能力も発揮する気配もない。そのまま進んでいくと、巨大な蛸が現れた。途端に人魚は消えてしまった。化け蛸はすぐに攻撃を始めた。僕は鬼術で波動を放つ。それは8本の内2本の足で弾いてしまった。スウィンはさっと指を振った。光のカッターが放たれ、蛸の足が3本切断され、それはそのまま黒い墨を吐いて逃げていった。僕達は何気なくそれを追うことにした。
「お前は大きな術ばかり使うからバテるし、コントロールが利かないんだ。もっと、小さな技でコントロールをしろ」
スウィンがそう僕に言った。僕は自力で技を出しているつもりではなく、偶然、技を出せている感じである。無意識の意識とそれをスウィンは言う。僕はなんとなく召還をしてみた。すると、黒いケンタウロスが現れた。彼に飛び乗ると、コントロールをしてみることにした。
「弓を引け、セブンエレキアロー」
すると、ダークケンタウロスの構える弓の周りに、弓とは別に6つの矢が電撃を帯びて現れた。
「ショット」
弓を引くと電気の矢が放たれた。と同時に周りの矢も一緒に放たれる。大蛸は電撃の矢を受けて動かなくなった。と同時にダークフェニックスの効果が消えて水が空気のトンネルに入り込んだ。きっと、1度に1種類しか召還できないのだろう。ダークドラゴンは2匹出せたので、2匹以上は出せるはずだから。今度は人魚達が襲ってきた。
「サウザンドエレキアロー」
すると、無数の矢が現れた。人魚達は悔しそうに逃げていった。
「まだ、力は回復しないか?」
僕の質問にスウィンは首を横に振った。とりあえず、海の奥にある古代遺跡が見えたので、そっちに向かうことにした。ここの古代遺跡には、エネルギー移行装置がある可能性があるからだ。デスは黙ってついてくる。そこで、僕はケンタウロスに命令した。
「あの遺跡にあるエネルギーをコントロールできるものがあるか示せ」
すると、彼は海中を駆け抜けて大きな入り口から入っていった。スウィンもデスも後に続く。エントランスから細い通路を通り、そのまま長く進んでいった。3つの部屋を越えていっただろうか。
地下へ続く階段を超えていくと、ある段階から空気に包まれた空間に出た。そして、大きなホールに出て奥には大きな扉が見える。しかし、ありがちながら、隣に立つ石像が4体動き出して門番を始めた。ケンタウロスはこの先に向かおうとするので、どうも、先にエネルギーをコントロールする装置があるようだ。
「サウザンズエレキアロー、シュート」
無数の矢が石像の門番に飛び掛った。しかし、全て弾かれてしまった。どうも、この矢は生物にしか効かないらしい。石像には物理攻撃がいいだろう。僕の鬼術では、ダークフェニックスが物理攻撃がある。他にもあるかもしれない。すぐに鬼が出るか蛇が出るか、何かを発してみた。すると、虎のような影が放たれて石像に飛び掛った。石像はそれに倒されて、首筋を噛み砕かれた。首を落とした石像は立ち上がり、残りの3体に攻撃を開始した。ダークタイガーは敵に攻撃をすると、それを操り味方にするようだ。しかも、物理攻撃が主であるらしい。
もう1体に飛び掛り、味方の石像と残りの石像で戦っている間に、僕達は門の中に入っていった。中には丸い石が中央に浮いていて、その前に巨人が立っていた。ダークタイガーを出したため、ケンタウロスは消えている。巨人と戦うにはスウィンの力が必要であった。そのとき、デスが言った。
「あの玉はエネルギー発生装置だ。移行はしない」
その言葉でここにいる理由も巨人と戦う理由もなくなった。逃げ道を探すが、どこにもなかった。僕達は後ろの扉に振り返った。行き先はその先にしかない。今頃、ダークタイガーが石像を倒しているだろう。扉を開けると、ダークタイガーは消えていて壊れた石像4体が迫ってきた。きっと、僕がこの部屋に入った時にダークタイガーは消えたのだろう。
巨人なら生きているから、ダークドラゴンが通じるだろう。デスは手を貸さない。スウィンも次元の穴を開けるパワーを溜めているので、攻撃、守備を一切しない。僕だけが何とかしないといけなかった。しかし、鬼力の許容量は自信があるが、結構、大きな技を使っているので、後2回が限度だと思われる。ダークドラゴンをとりあえず放った。巨人はそれを払おうとすぐが通り抜け、彼の魂は抜けて倒れてしまった。
次に召還したケンタウロスに乗って、動きの遅い石像の間を駆け抜けて逃げた。遺跡を出ると、そこでスウィンは次元の穴を開けた。
「やっと、力が溜まったんだ」
「ほら、行くぞ」
僕達は海の世界を後にした。
次の世界は普通の僕の世界と同じようなところであった。山の中腹のようだが、山道の右は崖、左は森がそびえている。とりあえず、人里を探して歩くことにした。しかし、1時間も歩くが全然生き物さえ出会わない。まさか、植物しかいないのだろうか。デスもスウィンも何もないように涼しい顔をしている。焦りが出た僕は、感知を始めた。
空気につながるものを感知する鬼術を始めるが、少なくとも半径5kmには生き物はいない。嫌な予感がした。スウィンはそんな僕に言った。
「別の世界にするか?生き物などいなくても、エネルギー移行できる存在があればいいのだよ」
その言葉もそのとおりだが、生物がいない世界には気になった。2時間して山頂に着くが、結局何も出会うことがなかった。気配すらない。僕はため息をついた。
山頂から下界を見るが、山腹の森以外は人家は見えない。その周りは湖が広がっていた。まるで、山が湖に浮かんでいる感じである。その先は何もない瓦礫が広がっていた。どうも、人間が最終戦争を起こし、恐ろしい兵器で全てを破壊してしまったようだ。残ったのは植物だけ。目に見えない生物も生き残っているかもしれない。その中で、生き残っているかもしれない者を探して、山を降りることにした。
召還したケンタウロスに乗り、湖を越えてその先の瓦礫を進む。近代文明の破壊された状況が辺りを埋め尽くしている。次の瞬間、シンプルなフォルムのロボットが軽い翼にジェットを出して僕達の前に下りて腕のバスターショットを向けた。僕は念のために空気の結界を張った。
「残ったのは機械だけか」
スウィンがそう呟いた。
僕はすぐに湖に向かって駆け出した。その人間型の機械も追ってくる。湖までくると、僕は言った。
「僕はネーチャー系の鬼術が使えるが、空気を扱うのが得意なだけで、他にも使えるんだ」
そう言って、湖の水をすくうとそれを投げた。と同時にロボットが拳を放とうとした。その拳は電子分解をして消えた。そう、水は0度で固体から液体。100度で液体から気体。10000度で気体からプラズマ。そのプラズマは金属やプラスチックを電子分解をする。さらに、湖に入った。
湖の水は僕をよけた。1m下の浅瀬に飛び降りると、こう言った。
「これは磁力だ。強い磁力は水分を弾く」
彼がここにこようとしたところで水を元に戻した。防水加工されてなく、ロボットは壊れてしまった。
この機械に滅ぼされた瓦礫だらけの世界だからこそ、機械のエネルギー移行装置があるかもしれない。ただし、僕達は機械に詳しくないのが気になるが。スウィンは北に顎をしゃくった。
そちらには、先ほどのようなシンプルな人型機械が沢山やってきた。試しにやった水と磁力、つまり電気のネーチャー系鬼術がうまくいったので、今度は火の鬼術を試すことにした。強大な炎を両手から出そうとした。すると、巨大な黒い火炎放射が放たれた。ロボットの5機は落ちた。しかし、ほとんどがやってくる。どうも、今度は前回の戦闘を衛星か何かで感知して、プロトタイプではないものがきたようだ。防水、耐火性能のもっと強力なもの達らしい。今度は2人の協力が必要なのかもしれない。
しかし、スウィンは次の次元移行のパワーを溜めている。次元移行はかなりの力を要する。デスは相変わらず我関せずである。僕はロボット軍団にダークタイガーをありったけ放った。
機械と影の虎の軍団の戦いが始まった。勿論、ダークタイガーはレーザーやミサイルの攻撃は効かない。さっと高く飛ぶと、彼らの配線を書き切り破壊する。羽根のブースターを爪で切り裂き落下させる。意外にも彼らは惨敗だった。僕の鬼術が続いている間は。鬼力が切れ始めると、虎は減少し始める。それでも、踏ん張りロボットは次々に破壊されていった。最後のダークダイガーが消えた頃には、ロボットは1体も残っていなかった。
「とりあえず、瓦礫の街の中心に行くか」
スウィンが言った。僕達はその言葉に従うことにした。街だった場所の中央には、タワーが建っていた。
そこを目指すことにした。
タワーにて休むことにした。近くの工場の瓦礫から缶詰を見つけて、水と食料をとっていると地下から物音がした。スウィンが様子を見に行く。その後、1時間経っても帰ってこない。食事を済ませた僕は、デスを見た。
「私は手助けはしない」
「…分かっている。でも、いいのか?今、死すべき人間を冥界に連れて行く仕事をしなくて」
すると、大鎌を僕に向ける。
「我々上界の者には、それぞれ使者がいる。その点は、彼らに任せてある」
仕方なく、重い腰を上げて僕は地下に向かう階段を探した。降りていくと、スウィンが10人の人間と戦っていた。まだ、生きていることが分かり、胸をなでおろした。彼らはロボットのようなオートアーマーを操縦していた。
「止めろ」
僕の怒鳴り声でスウィンと彼らは戦闘を止めた。僕は事情を話して侵略者でないことを説明した。
生き残りの人間と話をした。機械との戦いという小説でありきたりな状況であるそうだ。ただ、彼らのバッテリーは後20年あまりであるそうだ。そこまで待っていられない。僕達はエネルギー移行装置を、彼らは地上と自由を求めて、あのタワーに向かうことにした。現在、機械達はあのタワーを根城にしているそうだ。僕は先鋒隊に加わることにした。と言っても、まだ彼らは戦闘の準備が終わっていない。先に準備が終わっている先鋒隊だけで行くことにした。
彼らはオートアーマーを操縦して地上に出る。スウィンは基地で次元移行のパワーを溜めることにして留守番して戦闘準備する人達を眺めることにした。デスは興味本位でついてくるようだ。僕は鬼力がまだ完全に回復していなかったが、彼らの提供してくれた食事と睡眠で戦えるだけの力は回復していた。
先鋒隊はタワーに接近する。僕は隊とは別行動でちょっと離れた上空にいた。彼らの話では、あのタワーは首都にあり、破壊された首都は機械達の工場があり、それが基地になっているそうだ。デスは僕にべったりくっついて高みの見物をしている。何事にも一切手を出さないようだ。すぐに、我々の姿を見てAI搭載ロボットが沢山やってきた。
僕はしばらく人間組の戦いを見ることにした。彼らはレーザーライフルやロケットランチャーを放っている。しかし、彼らを1体破壊するのに複数発当てないといけなかった。一方、向こうは高性能プラズマレーザーを放ち、1発でオートアーマーは破壊されてしまった。僕はこの極端に不利な状況に危惧を感じて応戦することにした。新たな召還を試みると、影の龍の首の亀が現れた。ダークタートルは口から水を発した。それは敵に当たるとプラズマが発生して電子分解した。どうやら水を操る者らしい。複数のターゲットの設定も可能のようだ。次々にロボットを破壊していった。
何とか、僕のサポートでタワーまで至近距離になった。そこで第2班の準備が終わって瓦礫の基地から
人間の戦車隊が発進した。そこで、今度はドラゴン型ロボットが突如飛び出した。数は20匹くらいだろうか。ダークタートルはドラゴノイドにプラズマ砲を放つ。彼らは素早く空を舞ってうまく避けた。ダークドラゴンは魂のあるものしか効かない。ダークタイガーは物理攻撃できるが、空を飛べない。ダークケンタウロスはレベルの低い召還獣なので効かないだろう。ダークフェニックスを出すことにした。影の鳥は羽ばたいてドラゴノイドに体当たりした。あれはターゲットを消去する能力がある。空を飛ぶスピードは彼らとは比べ物にならなかった。すぐにドラゴノイドを次々に翼を消去して落としていった。
地面に落ちたドラゴノイドは戦車隊のソーラーバスター砲で倒していった。オートアーマー隊はすでにタワーに取り付いていた。
タワーになだれ込んだ人間の戦闘部隊に離れて、僕はエネルギー移行装置を探した。ケンタウロスを召還して探させるが、地下3階まで行って見つけたのは、巨大な蛸のようなロボットだった。
「これがエネルギー移行装置?」
ところが、その僕達が探していたそれは、自らを守るために襲ってきたのだ。もはや、利用することは不可能で倒すしかない。僕はダークタイガーを放った。彼らが戦っている間に、僕はエネルギー移行装置をどうにかして取り出せないか必死に考えた。そこで、あることを思いついた。あのロボットのエネルギーをなくすことで動きを止めて、その間にAIを破壊してしまうことである。バッテリーと思われる背中のポットに目をつけた。
突如、蛸マシーンは砲台を何台も開いて、一斉放火をした。僕は咄嗟に光のバリアを張った。それはアトミックボムだったが、完全に防ぐことができた。そこで、一斉放火が収まると同時に、刹那、僕はエレキボールを思い切り放ち破裂させた。それは背中のポットに辺り、ショートしてそれは動きを止めた。AIが回復する前に自律機構をダークタイガーで外して、後はシステムが回復するのを待った。しかし、エネルギー移行システムまでオーバーヒートしてしまったらしい。うまく直すには、彼らこの世界の人間の手が必要だろう。これを運び出すことにした。ダークタイガーを2体で担いでタワーから脱出した。外には第4部隊まで来ていて、それでも人間部隊が劣勢だった。とりあえず、基地に2匹で運ばせて、4体のダークタイガーを召還させた。僕は1体に跨り機械兵に戦いを挑んでいった。
ダークタイガーを使ってロボットの軍隊を倒していった。人間の軍隊は第5隊まですでにタワーに取り付いた。僕はタワーに侵入して、メインコンピューターのある地下5階に向かった。彼らは残った数少ない機械軍団を倒していく。いくら力で劣勢でも数ではかなりの優勢である。オートアーマー5体と僕、そして影の虎3匹は地下へのエレベーターでメインコンピューターに向かう。エレベーターの扉の先には、警護マシーンが20機、そして、感知だけで感じるとナノマシーンがメインコンピューターの周囲5mに無数に散っていることが分かった。そこで、近づくことなく全てを爆破することにした。空気のバリアを目の前のてきだけ包んだ。そして、その中で鬼術で爆破を起こした。ナノマシーンは全て破壊できた。
しかし、警護マシーンは9機、メインコンピューターは無事であった。次にサンダーボールを放つ。オートアーマーも発砲している。警護マシーンは全て消えた。オートマシーンも1機故障、2機破損した。残るはメインコンピューターだけだ。
メインコンピューターは電磁バリアが張ってあった。そこで、エレキボールを発して放った。メインコンピューターはショートして、自爆スイッチが入った。
「すぐに撤退だ」
誰かが叫んだ。僕は天井に向かってダークフェニックスを放った。空までのタワーの上に穴が空いた。それでダークタイガーが消えたが、すでに先に帰らせた2匹はエネルギー移行装置は基地に持って帰っている時間である。大丈夫だろう。オートアーマーと僕は上空に向かって飛んだ。タワーから脱出して10分後、タワーが大爆発した。とうとう、この世界は人間が取り戻したのだ。帰ると、スウィンが蛸のような装置を眺めていた。
「これがエネルギー移行装置か?」
「壊れているけどね」
「それでは、意味がないだろう」
「いや、直せばいい。誰か、治せる人はいますか?」
そこで、オートアーマーのメカニックが言った。
「これを直すには、アトミックハブインジケーターが必要だ」
「それはどこに?」
スウィンが訊くと、彼は首をひねった。
「もしかしたら、タワーの近くになら…」
あの爆発で部品があるのか気になった。
「それか、ジャンクの取引をしている隣の都市、デレストなら」
だが、その都市には機械の魔物を操る都市のボスがいるそうだ。それでも、僕とスウィンは行くことにした。スウィンは次元移行の力以上に、十分充電できたそうだ。
砂漠を進んでいると、スウィンがそっと囁いた。
「お客が沢山来ているぞ」
僕は辺りを見回した。すると、砂漠から馬の頭に耳がなく、額から角が1本出ているワームがこぞって現れた。大きさは直径だけで僕の背の高さだ。機械対戦で力を使ってしまったので、この化け物を倒すことはできない。そこで、スウィンを見た。彼は呆れ顔をして、手を顔に当てた。そこで、彼は指をぱちっと鳴らす。すると、周りの光は変化して彼らから僕らが見えなくなった。スウィンは光を操るのが得意であった。
「でも、どうしてあんな化け物が?」
「ここの世界では普通の動物なんじゃないか」
「あのテクノロジーがあるんだ。バイオテクノロジーが発達しているんじゃないか?」
「でも、あれを作るメリットはないぞ」
「実験じゃないか?」
「まあ、どうでもいいがな」
早足で僕らはホースワームの群れから離れていった。
しばらく行くと、砂に埋まったドームが見えてきた。その中に街があるのだろう。頂上に監視カメラがある。そこで、めあての部品を手に入れたいことを告げると、ロボット達が壊滅したことに彼らは驚いていた。そして、ドームの頂上にエレベーターが上がり、中から兵士が3人現れてこちらにライフルを向けた。
ひるまない僕達にまゆを寄せるが、エレベーターに乗せて地下街にいざなった。そこは驚くほどにぎやかであった。砂漠の地下とは思えない。その中にジャンク屋を見つける。そこでこの世界のお金がないことに気づいた。
「どうする?」
「盗めばいい」
「駄目だ」
「じゃあ、どうする?」
僕は考え込んだ。ジャンク屋に交渉した。
「金がねえ、でも、こいつも使い道が限られてっから売れねえしな」
「じゃあ、代わりに何かを持ってきましょう」
「よし、ミサイル装甲車を1台用意してくれ」
僕はすぐに飛び出していった。あの機械の瓦礫の中なら、装甲車の1台はあるだろう。とんぼ返りして粉々になったタワーに向かった。砂漠では、またワームが寄ってくる。スウィンが姿を消してくれたので、
無事に砂の大地を渡ることができた。
「その何とか装甲車っていうのは、当てはあるのか?」
彼の問いに答えられなかった。賭けであった。でも、全く無駄になるとは思っていなかった。その代わりになるもっとハイテクなロボットや機械があるだろうし。もっとも、あの爆発で無事なものがあれば、の話だが。
瓦礫の街に着くと、デスが待っていた。
「やっと来たか」
そこで、彼は大鎌で瓦礫を指した。大きな車両が転がっていた。それを僕は何かを召還して取り出そうとした。出てきたのは、ダークガーゴイルだった。それは人の2倍の大きさですぐに車両を元に戻して取り出した。羽根を広げると、そのままそれを持って飛び始める。これがミサイル装甲車のようだ。それを持って砂漠に向かった。慌てて僕もスウィンとガーゴイルを追いかけた。コントロールできない存在を召還するのは常なので、驚きはしなかったが、それでも今回は困惑した。
「お前は本当に中途半端だな」
スウィンの言葉に返すことができなかった。
砂漠の地下都市に帰ってきた。ガーゴイルはそれを見届けると消えた。
「あれは運び屋だな。戦闘には向いていない」
「コントロールできるようになれば、かなりの戦力になるさ。何しろ、こんな重いものを持ってここまで猛スピードで飛んできたんだからね」
ジャンク屋が顔を見せると、驚いた顔をして約束の機械をくれた。それを受け取ると、タワーの近くのあの基地に向かった。デスが待っていて、すぐにエンジニアに取り付けを依頼した。これでエネルギー移行装置が手に入った。
「これで文句はないだろう」
スウィンが首を横に振った。
「これはソーラーエネルギーで宇宙に上げれば、恒星がなくならない限り動き続ける」
「故障するかもな。だが、時間を回せば」
「どうすれば?」
「作動させ、同じ時間を永遠に回す」
そう言って、彼は次の次元の入り口を開いた。
時間を同じ同じ空間で同じ軸で回す『もの』を探す旅に出た。今回は糸だらけの空間だった。少なくても、時間軸、空間軸が同位の世界で今まで助かっている。しかし、この空間が異様なことには違いなかった。糸の草原は丈夫だが、おそらく60kg以上のものを支えることはできないだろう。スウィン、デスは体重という概念に無縁なので問題はない。僕は55kgだから、ぎりぎり大丈夫だ。トランポリンのようにしなった地面は歩きづらかった。どこから来るか分からぬ光源からの反射より、視界は保たれているが、暗いことには変らない。この草原を歩いていくと、糸の山が見えてきた。
「こんな糸しかない場所に何もないだろう」
僕がそう言うと、スウィンが澄まして指差す。
「そうでもないさ」
前に黒い糸の雲が迫ってきた。ちなみに糸と表現はしているが、これが何かは分からない。気体か固体かも不明である。
糸の雲を避けることなく、デスが鎌を振った。すると、雲が裂けて中から奇妙な空気が飛び出した。
具現的な世界に生きてきた僕は、初めてこの世界が抽象的世界であること気づいた。次元も同じ位相ではないこの世界に戸惑う。空気はスウィンの腕で途切れた。
「お前はこの世界の要素が捉えきれていないようだな。具現化して全てを表現するんだ」
僕は目を瞑って手を開く。すると、糸が草に変り、反射光は夕日、黒い雲は岩に変った。僕の知っている光景になる。僕はいわば高次元を3次元の自分の世界に変換したのだ。空気は狼に変化していた。
「どうなっている?」
「ここは今までと違う少し高い次元の世界なんだ」
スウィンはそう言って、目の前の宮殿に視線を送った。宮殿には誰もいない。この世界の勝手が分からぬまま、スウィンに任せることにした。
「でも、何故さっきは助けてくれたんだ?」
デスに訊くと、彼は首を横に傾げる。
「助ける?前方のテストからカラセアが出てきたら、上位の次元の者なら切るだろう」
そこで、救いの目をスウィンに向けると、彼はこう言った。
「お前は前から石が飛んできたら、どうする?」
「避けるか取る」
「それと同じだ」
ますます分からなくなった。早くこの世界から離れたかった。宮殿は最初に見た糸の山だろう。あそこに時を操る何かがあるのだろうか。宮殿の前に来ると、小さな薄い人型が沢山やってきた。彼らは生き物だろうか、意思を持っているのだろうか。彼らの出方を待った。
紙のような人間は攻めてきた。どうも、交渉の余地はないようだ。僕はすぐに鬼術の準備をした。彼らが生命体であることを祈り、ダークドラゴンを1匹召還した。しかし、彼らを通りすぎるが魂が昇華されることはなかった。やはり、生命体ではないのだ。
「何をやっている?彼らはメイフィスだ」
「生命体じゃないのか?」
「正確には意思のある存在だ。だが、魂はない」
意思があるが、魂はない。そもそも魂とは何だろう。とにかく、亀の召還で何とか防ぐことにした。
彼らの光線が亀の甲羅が盾になる。攻撃は亀のプラズマや水で対抗できるだろうか。紙ではないにしても、水やプラズマを放ってみせる。すると、彼らを倒すことができた。
紙の人が水に弱いのではなく、プラズマが彼らを組織している体を分解しているのだと分かった。
「ここに時間を操作するものがあると思うか?」
スウィンに訊いてみた。
「少なくとも、デスはそう思っているみたいだぜ」
彼の視線の先には、鎌を構えているデスが、宮殿の中を眺めていた。僕達は中に入る。すると、巨大なコブラが責めてきた。初めて会う生命体に近い存在である。僕は身構えると、スウィンは腕で制した。
「あれにはかなわん。死なないし、上界の者のように魂の転移もしない」
「じゃあ、どうするんだ?」
スウィンはデスに視線をやった。デスは次元の力を発揮した。鎌は次元を切り裂き、それを次元の彼方に葬った。そして、宮殿の先にどんどん進んでいった。今まで傍観者だった彼は、ここに何を感じたのだろうか。スウィンはすでに気づいているようだが、教えてくれなかった。僕も訊かなかった。
宮殿から異様なドアが目の前に現れた。土と石でできたいびつな7角形のドアである。それを開けると鏡が出てくる。その鏡にデスは手を差し込む。通り過ぎて中に入っていった。鏡の中にスウィンも入っていく。僕も中に入った。
すると、別次元にたどり着いた。あの鏡は次元のドアだったようだ。たどり着いた世界は、先ほどデスが蛇を移行させたところである。目の前に大蛇が現れる。周りの森に逃げ込んだ。不死の大蛇もついてくる。
「ここは法界という世界で、ここにいるヘンリルに大蛇を倒させると、時間を保つ道具、タイムを得ることができる」
「ヘンリル?デスは何故、そんなことを知っている?ヘンリルとは?」
「鏡を司る追放されし上界の者。彼はあの世界に別次元へのドアを作った。あの世界に来たときに、ヘンリルの気を感じて理解した。ここにいるヘンリルの持つオーバーコードは時間を操れる」
よく分からぬが、とにかく大蛇に追われながら、ヘンリルなる上界の者を探すことにした。しかし、そこにローブ姿の人間が7人現れた。
「混沌界の力を持つ者よ、すぐにこの世界から立ち去れ」
どうも、僕の持つ鬼術、つまり混沌術が、法界の者には気に入らないようだ。
後ろには大蛇、前方には法術師。どうしようもなくなった。そこで、デスは大蛇を誘導して先に行った。
ヘンリルのいる場所まで行くのだろう。スウィンは後ろで僕を見ている。僕は彼らと戦うことができず、鬼術で結界を張った。そのまま、スウィンと法術師の攻撃を無視しながら先に進んだ。
彼らは僕達よりも力がなかったので、全ての攻撃を防ぐことができた。元々、鬼術と法術は相反するもの。打ち消すことは性質上難しくなかった。前方に大蛇が見えると、法術師はすぐに去っていった。
一方、ヘンリルを見つけたデスは、彼と戦っている。そこに大蛇が両者を襲い始めた。スウィンは僕が助けに行こうとするのを止めた。
「デスは大蛇でヘンリルを倒すさ」
全てが終わるのをただ見守るしかなかった。
大蛇はヘンリルを飲み込んでそのまま動きを止めた。デスは結界を張って大蛇を封印した。ヘンリルのオーバーコードは傍に落ちていた。
「これで大丈夫だ」
スウィンはそう言った。彼は次元の切れ目を空けて下界に戻ってきた。そこで宇宙に行き、オーバーコードでエネルギー移行装置を時間軸から切り離した。その装置を作動させると、全てが終わった。この世界で使われる絶界の力も絶界に戻る。スウィンはデスと納得して帰っていった。僕はあっけなく取り残されたことに唖然とした。しかし、これで全てが丸く収まったのだ。
全てが終わったと思い、家に帰る。すると、時間移行装置のせいか、今までの次元旅行の時間はせいぜいこちらの1日程度であった。しばらくして、今までの旅の不具合が発生し始めた。突如、この世界に次元の穴が開くようになった。僕もその穴に落ちてしまった。着いた先はあの法界であった。すぐに憲兵隊が現れて、次元移行できない僕は、彼らに従うことにした。
クリスタルタワーに連れていかれると、鬼術の使える僕は裁判にかけられることになった。そこで、こう言った。
「僕が法術を使えたらいいですよね?」
「鬼術師が法術を使うことはできん」
裁判官が言う。
「相反する力だからですよね。でも、僕はアストラルコードが使えます」
僕は試しに感情を高めて、法術を発して見せた。すると、白い光が発せられた。それはエネルギー弾で、壁に穴を開けてしまった。全員は驚きを隠せずに、裁判はお開きとなり異例の鬼術師の解放となった。
すぐに、修行の要請が入った。どうも、鬼術師でありながら法術師であるという特例は、この世界の秩序を守るという役目が必要であるとのこと。とにかく、外である老人に法術を修行してもらった。彼は長老だそうだ。1ヶ月くらいは修行をしてあることが分かった。
自分は光のナチュラル系ではなく、放出系であることが分かった。そのエネルギーを放出せずに、自分の体にまとうことを何度も練習させられた。やっとのことで、光の角、爪、牙、足の爪、そして羽根を出すことができた。完全な光のドラゴンになることはできないが、光のドラゴンの力を多少なりとも得ることができた。
そこで、警護に回ることになった。この力とエネルギー放出、つまり、ドラゴンブレスだけで何とかなるだろうか。警護チームにはレンズ、バイクという2人がついた。ケンイという町に行くと、知性のある化け物が暴れていた。レンズとバイクは身構えて、まずは状況を見た。僕はすぐに飛び出した。
どこから現れたのか、その知性のある化け物は言った。
「我は蛇神により生まれた」
あの大蛇が結界から抜け出そうとしているのだ。力を発しつつあり、恐ろしい生物を誕生させたのだ。
完全に結界が破壊されたら、全てが終わりだ。その相手はガーゴイルの姿であった。彼は凄まじいスピードで後ろに回る。しかし、僕は光の尻尾を出して鞭のように叩いた。それは凄まじい勢いで地面に叩きつけられた。
翼で舞い上がった僕は、牙から発生するエネルギーを口に溜めて、ブレスを吐いた。それはガーゴイルを直撃したが、両腕で防いだ。剣を鞘から抜くと、それを振り下ろした。今度は光の爪でそれを受け止めて払った。手の甲から光の龍の爪、手の親指から龍の親指の爪が伸びている。足の甲、かかとから光の爪を出している。地に下りて空から来る敵を待ち伏せした。その足の爪で地を蹴ると、凄まじいスピードで剣を地に突き刺す敵をかわした。
「そうか、翼で空、牙でブレス、爪でナイフ、足の爪で脚力、そして、尻尾で鞭か」
長距離、短距離は彼には不利だと思わせることに成功した。
「しかし、中距離はブレスを溜める時間を与えず、短距離の爪も届かない」
剣を間合いを取って振った。しかし、僕は爪を伸ばして剣の形に変えて唾競り合いをした。そう、これが第2の罠であった。光は形を変えられる。
懐、中距離は爪、尻尾で抑えられる。そこでガーゴイルは長距離に出るだろう。しかも、僕がブレスを溜める隙をうかがえる時間を稼げるだけの。そこがチャンスだ。思惑通り、彼は距離を取った。そして、彼は思っただろう。この距離までくれば、攻撃は来ないだろうと。
その油断を待っていた。手の光の爪にだけ力を集める。翼、足の爪、尻尾、角を収めた。そして、右手の爪だけにして、それを最大に大きくして伸ばした。レーザーのように細長く伸びた光の爪は、
ガーゴイルの胸を貫いた。彼はそのまま動きを止めて倒れた。そこで、レンズとバイクは近づき言った。
「合格だ。だが、その前に完成系になれるように修行しろよ」
完成系。つまり、現在の姿は不完全なのだ。光のドラゴンの姿になれるのだろう。
警護の中で、ある森に恐ろしい状況が発生しているそうだ。そこにすぐに向かうことになった。森の蛇が封印されている場所に、
次元の穴がたまに開くことがあるそうだ。僕が落ちたのもそれだ。その中に時々下界の人間がいることもあり、それを戻すのが役目の役人の法術師がいた。しかし、結界が薄れている今、僕は何とかできないか2人に訊いて見た。彼らは顔を見合わせたが、すぐに答える。
「結界を強め続ければ、大丈夫だろう」
「その役目を負う者はいないだろうがな」
2人の言葉に僕は意を決して答える。
「僕がその役目を負う。力を強めて完全系のドラゴンになれる方法は?そうすれば、結界を張れて強めることもできると思うんだ」
「長老なら、あるいは」
すぐに僕はクリスタルタワーに向かうことにした。
クリスタルタワーに来ると、長老が待っていた。彼は塔の上にある修行の間に連れて行き、そこであることを言った。
「この中にある玉を5つ手に入れなさい」
それが試練らしいが、黙って頷いて部屋に入った。最初は目の前に池が広がっている。その中には玉を身につけた魚の化け物がいた。光のドラゴンの爪や翼を発して、水の中に入った。魚の化け物は口から光線を発した。僕はブレスを発して跳ね返す。鬼術を使えば一瞬で解決するのだが、法術の修行なのでそうもいかない。思い切り心に気を高める。すると、光のバリアが発生した。ひれの刃をそのバリアで防ぐが、攻撃の為に近づこうとすると、そのうろこが爪を防ぎ、傷1つつけることができなかった。
化け物の魚が再び刃のひれで攻撃を開始する。バリアを張ると、声が聞こえた。
「そのバリアは広いと広範囲を守れるが、威力は小さくなる」
その言葉は頭の中に響いた。そこであることに気づいた。バリアを小さくして皮膚にすると、それはドラゴンの皮膚となった。ひれを攻撃されても、腕を振るとドラゴンのうろこの皮膚で、そのひれは簡単に折れた。光のドラゴンの体を手に入れたのだ。力が湧いてくる。そこで、力を思い切り発揮した。すると、ドラゴンの鬣を逆立てて、それを放った。魚は針と化した鬣に串刺しになって、水底に貼り付けになった。
そこで爪を使って魚の宝玉を取り出した。すると、気づくと普通の何もない部屋にいた。第1ステージクリアのようだ。
第2ステージは空であった。急に部屋は空になった。宝玉をポケットに仕舞い、すぐに光の翼で落下を防いだ。目の前にドラゴンが現れた。完全に光のドラゴンの姿に変化したが、頭の中に声がした。
「完全ではない。目がまだ人間のままだ。ドラゴンの目を手に入れなさい」
ドラゴンはすぐにフレアブレスを吐いた。僕は目を覚醒する為に、目を凝らしながらブレスを避けた。急降下して上空を見上げるが、何も変化はない。ドラゴンの目の覚醒をどうすればいいのか分からなかった。
気づくと背後にドラゴンが来ていた。
とりあえず、宝玉を取ることに専念しようと思った。しかし、ドラゴンの体のどこにもそれが付いていなかった。今度はドラゴンの爪が襲ってくる。それを光の爪で受けながら、心眼を凝らす。すると、自分の瞳が金色になったのが、ドラゴンの鱗に写っていた。これがドラゴンの目なのだ。すぐに、心臓の位置に宝玉があることが見えた。
僕は光の爪をドラゴンに刺した。すると、ドラゴンはフレアを吐いた。僕はすぐに体内の宝玉を掴むと引き抜いて、両腕を前に構えてフレアを受けた。腕のドラゴンの鱗はそれを耐えた。次に思い切りバーストフレアを放つ。目の前のドラゴンは消え去った。宝玉を失って力をなくしたのだろう。
「これで第2ステージクリア。次は光の体を実体にできるようにな」
気づくと砂漠の中にいた。そこには巨大なワームが現れた。ドラゴンの目を凝らすと、ワームの体内には宝珠はなかった。そこで僕は思った。体が複数のパーツでできているのだと。とにかく、光の体を本物のドラゴンの体にどうすればいいのか。ワームの宝玉を捜して周りを見回した。
ワームは地中に残りの体を残していた。背後から鞭のような尻尾が飛び出した。僕は高く飛んで下を見た。ワームは3つの体でできていた。上半身、真ん中、尻尾。真ん中は砂の中で見えない。尻尾はさっきの空振りから鞭のように振り上がっていた。上半身は1匹のワームのようにこちらを見ている。3つの体は別々に動いているが、1本に並んでいる。真ん中に宝珠があるのだろう。僕は体を光のドラゴンから具現化したドラゴンになるために、思い切り力を入れた。しかし、なかなかうまくいかなかった。
とりあえず、砂の中に飛び込んだ。真ん中の体を守るために全身を取り出した。上半身の口の牙が襲ってくる。砂の中から出て、僕は思い切りフレアブレスを放った。上半身は半分消えるが、すぐに再生をした。
何も考えずに、わーと叫んだ。思い切り力を体中から発散して、頭の中を真っ白にして飛び込んだ。すると、体中からエネルギーがあふれ出した。法力が無限に出てくる感覚で、そのまま突っ込んだ。上半身は僕の体に当たって消滅した。気づくと、体の表面にドラゴンの鱗がまとわれていた。これが本物のドラゴンの体だ。光のオーラのドラゴンの体ではない。残った尻尾に指を向ける。すると、尻尾は燃え上がって砂の中に灰は舞った。残った胴体を爪で突くと、それは砂となって消えた。砂の上に残ったのは宝玉であった。
すると、頭の中にまた声が響く。
「レベル3の習得終了」
次は真っ暗な空間に浮かんでいた。そこには、人間形の悪魔のような戦士が立ちはだかった。
「次は、レベル4。現在の体を強化、ブレスや爪、目以外の、『真の能力』の覚醒を達成せよ」
相手が今までにない、上界のそれよりも強力で命にかかわるものだと、肌で感じることができた。
目の前の悪魔をどう倒すか。彼の宝珠は剣の柄にあるので、剣を奪うことに専念することにした。思い切りフレアブレスを吐くが、彼は剣を一振りであっさり消し去った。爪を伸ばして思い切り地面を蹴った。刹那の間合いを詰めたにもかかわらず、その動きについていき、僕の爪を軽く剣で受けた。
前を見たままで、しかも右腕しか動していない。格の違いを感じて背中に寒気を感じた。命の危険を感じたのは、間違いなかった。新しい能力を早く覚醒させないと、かなりの危ない状況である。思い切り後ろに跳んで距離を取って、両手を合わせて法力を溜めることにした。しかし、その間に悪魔は剣をかまえながら、突っ込んできた。思い切り法力を放出して、両手を悪魔に向けた。すると、大きな光が放たれた。
悪魔はさすがにそれを剣で受けて5m後ろに引きずられた。新しい能力の覚醒の兆しであることが確信できた。
エネルギー波をもう1度両手に溜めて、一気に放ってみる。すると、今度は10m悪魔を吹き飛ばすことができた。それでもダメージが大してないことに、がっかりせざるを得ない。剣を構えた彼はまた駆け出して、今度はオーラを込めて剣を振り下ろす。僕は咄嗟に一気に刹那、膨大なエネルギーを溜めることなく放った。そのメカニズムもどうやったかも無意識で分からない。その両手から放たれたバスターフレアは、
悪魔を包み込んで50m後方に吹き飛ばして、大爆発した。流石にダメージがあったようで、爆風が収まるとうなだれていた。どうやったか分からないが、最大の危機を感じて無意識に出したものだ。考えても仕方がない。無意識。それが鍵なのかもしれない。感情が法術の基本のはずだが…。無意識でとにかく無茶だが、突っ込んでいった。目標は1点。宝玉だけである。悪魔も剣を構え直した。
僕はドラゴンの力を無心で放った。すると、悪魔は剣を弾かれて空高く飛んだ。そこで、追い討ちをかけることなく剣に飛びついた。剣から宝玉を取り出すと、悪魔の姿は上空から消えた。最後に4つの宝玉を持ったままでいると、元の普通の殺風景の部屋に戻り、長老が目の前にいた。彼は手に5つ目の宝玉を持っている。
「最後は法術の極みを得るのだ」
そこで、すぐに僕は何を最後に望んでいるのか、なんとなく分かった。4つの宝玉を手で包み思い切り法力を放った。すると、それが徐々に小さくなり僕の手の中で消えた。
「そう、それは法力の潜在能力を引き出すもの。そして、この最後の宝玉を得れば、最高の力を手に入れられるだろう」
僕は彼からそれを奪い取りことが最後の試練だった。
突如、僕の胸が苦しくなる。潜在能力が開花した途端、僕の中で何かが覚醒したようだ。頭の中が真っ白になる。そして、もう1人の僕が表面に出た。
「爺。その玉を渡せ」
三白眼になった僕は、性格の冷たい意思が表に出ていた。
「お前は突然、大きな力を得たためにその体を補う意識を作り出したのだ。しかし、お前は肉体変化系でも、憑依召還系でも、変身変化系でもない。人間の体に具現化した法力をまとっているに過ぎない。光の体のときに変化させただろう。手だけに力を溜めただろう。それが証拠。体自体は普通の人間。強化されたのは、法術だけなんだ。強い意志を作り出す必要はない」
しかし、僕は新たなる意思を消すことはできなかった。僕は自分を制御できなくなっていたのだ。凄まじい力が暴走を始める。片手を長老に向けると、凄まじい波動を放った。彼はよけると、それはクリスタルタワーに巨大な穴を開けた。その先の山脈が光とともに消え去った。そこで気づく。自分の意思を取り戻すことが最後の試練なのだ。例え、大きな法術を手に入れても、精神が制御できなく暴走しては、意味がないのだから。
タワーでは警戒アラームが鳴り響いた。15人の法術師が僕の周りを取り囲んだ。彼らは明らかに強力なエキスパートだ。すぐに法術で結界で僕は自由を奪われた。その1秒で長老は最後の宝玉をブレスレッドにして、僕の腕につけた。すると、意識は元の僕の意思に戻った。
「これは、意識を保てるぎりぎりまで出せるリミッターだ。お前が意識を保てる限界の力が高まるように修行するのだ」
最後の修行は、このリミッターにより終わった。すぐに、大蛇の封印の解けそうな場所に急ぐことにした。そこでは、すでに結界が崩れかけていた。僕はドラゴノイド(ドラゴンの人型)に変化して、光の結界を張って強化して、それを続けることにした。
長老はそのサポートに3人の法術師をつけてくれた。これで、この世界は平和になるし、下界との次元の穴も発生しないだろう。すでに、生まれてしまった化け物については、結界を守る僕には、倒して回ることはできないので、タワーの他の法術師に頼るしかない。
クリスタルタワーでは、悪魔の姿から人間の姿に戻る。長老に向かって言った。
「あれでよかったのか?」
彼は法術師の評議会の1人、ルードであった。
「ああ、今はな」
「あの大蛇は死なないだけ。消滅はできる。細かく切り刻むか爆破、溶かすか。何でもいい」
「しかし、絶界のスウィンが倒せないほどの強さ。貴公でも無理だろう。勿論、あの若者でも」
「だから、下界の人間に結界を張らせ続けるのか?」
ルードはローブを掴んでまとうと、空間移動の法術を使った。タワーのエントランスに出ると、
僕のいる森に向かって移動を始めた。大蛇を倒すために。彼の乗る馬車はかなりの速さであった。
ルードが馬車で駆けつけると、僕は結界を守っているところで、集中している為に気付かなかった。
彼は僕に声をかける。
「結界はもういいんだ。2人であの大蛇を倒そう」
そこに僕のように下界から次元の穴から落ちた2人の人間がやってくる。それを止めていた僕の世話役の法術師は、2人の1人の法術で幻術にかかって巻かれていた。
「あれを倒すのは、生半可じゃない」
僕の言葉に人間の1人が言った。
「俺は都築涼。後ろのは途中で出会った科野京。俺は幸い法術の才能があったけど、あいつにはないらしい。とにかく、手伝うぜ」
彼の法術がかなりの力であることは空気で伝わって分かった。ルードと涼と、あの大蛇を倒すことにした。結界を張りながら、僕は2人を連れて森の中に入った。大蛇はこの先にいる。スウィンでも倒せない、死なない大蛇を倒せるのかが不安だった。
3人が向かった先に大蛇がいた。それは、上界の者を簡単に倒すほどの存在。気が張り詰めた雰囲気に包まれた。涼は大きな剣を出した。具現の法術が得意のようだ。それはかなりの重量に見えたが軽々と持ち、
それを振り上げて駆け出した。どうも、性格は無謀なようだ。大蛇は口を開き、牙をむきながらそれに向かった。剣で牙を受けた涼は、簡単に剣で大蛇を弾いた。大蛇は5m吹き飛ばされる。
「腕力強化の法術と具現化の法術を同時に使っているのか?」
僕が驚いていると、彼も言った。
「お前も、ドラゴノイドの変化、ドラゴンのオーラ、結界の3つを使っているだろう」
そう言われれば、3つの法術を一気に使い続けていたのに気付く。彼がいればあれに勝てる気がした。僕もエネルギーを両手に溜めて放った。大蛇はダメージを受けて逃げ出した。ルードは木々の檻を発生させてその行く手を阻んだ。
すぐに僕はドラゴンの右腕を大きくして、爪を伸ばした。そして、思い切り踏み込んで跳んだ。爪が大蛇の牙を受けて折った。続いて、涼が大剣を振る。大蛇は首を切り落とされた。そこで、ルードは指を鳴らした。炎の刃が大蛇の胴を焦がし始めた。そこで、僕はブレスで炎をさらに増やした。最後に涼が鮮やかに素早く切り刻んだ。塵となった大蛇は生死にかかわらず、もう、何も出来ないだろう。僕は全てが終わったので、ルードにより元の世界に帰してもらうことになった。
涼達にも一緒に帰るように誘ったが、彼らは、用があると言ってここに残ることにした。その用は気になったが、とにかく放って置くことにした。ルードは次元の穴を開ける。その中に僕は入っていった。
僕は普通の生活の中にいた。今までの戦いは嘘のようであった。ただ、気になるのは、法術で最大限に発揮した場合、もう1つの冷たい人格の覚醒を抑制する右腕のリミッターである。これを取ることは、今の僕ではできない。長老は取らずに僕をここに帰したのだ。修行して、最大限の力を発揮しても意思を維持できれば、このリミッターは取れると推測した僕は、毎夜に法術の修行を積んだ。最初は光のドラゴンのオーラをまとう。次にそれをドラゴンの皮膚にする。その後、本体をドラゴンの姿、ドラゴノイドに変化した。
ここからである。意思を保ちながら、法力を高めていった。膨大なエネルギーが夜空に打ち上げられていく。最大限の力を解き放つと、リミッターの宝玉が光った。意識の限界なのだろう。
しかし、今の状況を保ち続ける。この修行を1週間続けると、外のオーラを体から離すことができるようになっていた。ドラゴノイドの分身状態である。その分身を自由に動かせるようになった。1人で2人分の戦力になるということである。
僕はある日、町にある廃墟に悲鳴が聞こえたので、駆けつける。そこには、暴走族が1人の少年を囲んでいた。すぐに助けに入ると、彼らの標的は僕に向かった。僕は金属バットで背中を殴られて、少年も3人に思い切り足蹴りされた。そこで、湧き出す感情を抑えきれずに吐き出した。と同時に法術が発動してしまった。彼らのボスに近づくたびに変化を始める。1歩で光のオーラをまとい、2歩で光はドラゴンに変化した。
周りの少年達は驚愕のあまり、唖然として立ち尽くしていた。さらにドラゴノイドに変化してオーラのドラゴノイドを動かした。それに少年を助けさせて、さらに歩を進めた。法術は無と感情に反応するとはよく言ったものだ。憤怒の感情が僕の力をさらに覚醒させた。リミッターの宝玉が光り、体に吸収された。
ブレスレッドは外れて床に転がった。そこで、分身のオーラのドラゴノイドを体に吸収して、強大なパワーがみなぎった。爪をボスの少年に向けると、こう言った。
「次にお前らが暴力を振るったら、命を奪うぞ」
そして、廃墟の柱を軽く叩くとそれは崩れ落ちてしまった。彼らは漏らしながらも走って逃げていった。光、ドラゴン化、ドラゴノイド、ドラゴンオーラの操作、究極のドラゴノイドとレベル5に変化することができた。
修行から帰ってきた僕は、そのままベッドに倒れこんだ。すると、目の前の次元が歪んで、法界のルードが姿を現した。腕を見てリミッターのネックをクリアしたのを確かめた。
「やったみたいだな」
「偶然かもしれないけど。で、何かあったのか?」
「力を貸してほしい。大蛇の生み出した魔物は駆逐できた。しかし、なかなかこちらに落ちた下界の人間を救出するのに難航してな」
「そんなの、法術の感知を使えば、容易に可能だろう」
彼は首を横に振った。
「鬼術師の妨害に合っている。そこで、鬼術も法術も使える唯一の人物である君にお願いしたい」
そこで、溜息をついて頷いた。
「分かった。行こう」
早く、この両界の和解を進めたいところだ。ルードについて法界に再び向かうことにした。
鬼術師が邪魔をするということであったが、落ちた下界人を救う邪魔は、鬼術師にとってもあまり意味がない。何かあるのではないか。両者を和解させて、協力してこの事件を解決させることにした。まずは、鬼術師がいるという法界のある場所に向かった。そこは、釘の園と呼ばれる場所であった。金属の棘が生えている不思議な草原である。こんな場所にいるということは、法術師の攻撃を警戒している証拠である。光の羽根だけを出して飛んでいく。お供のルードと2人の法術師も追ってくる。そこで、釘の園の中に球体の氷の城が建っていた。近づくと、周りにバリアが発生する。
「交渉に来た」
その言葉を聴き、1人の鬼術師が姿を見せた。
鬼術師は見たことのない人物であった。僕が混沌界にいて、鬼術を使っていたことを知らないだろう。そこで、ダークタートルを出してそれに乗って針の上に降りた。
「お前、法術師なのに鬼術を使えるのか?」
「先に鬼術師だったんだけどね」
彼はすぐに打ち置けて話をする気になった。
「で、法術師の邪魔をするのを止めてほしい」
「俺達はそんなことはしていない。俺達は混沌界の遣いとして、和解をしに来たのだ。それを攻撃してここに追い込んだのは法術師の方じゃないか」
すると、ルードは叫ぶ。
「我々はそんなことをしていないぞ」
そこで、両者を争わせる活動をしている他の世界の第三者がいるのだろう。
「すると、両者以外の敵がいるということか」
僕はすぐに上界か絶界のことが頭に浮かんだ。上界ならともかく、絶界の者であれば、勝ち目はない。とにかく、鬼術師の遣い達とクリスタルタワーで法術師の評議会で、これからのことを会議することにした。
会議で鬼術師使節団、法術師評議会合同の第三者法界混乱者の捜索、対策が行われることになった。
勿論、僕もルードとともにその中に入る。別行動で、法術師の下界から落ちてきた者の救出活動は続けられる。ただ、闇雲に捜索するわけではない。法術師、鬼術師のセンス系能力者にそれぞれの術で、法界中を感知してもらうことになった。そこで、鉛の沼と呼ばれる場所に、法術でも鬼術でもないが、両方に近い能力を感じると分かった。僕達はそこに急行した。沼は重い液体で黒いものだった。
その水を鬼術師の1人が渦を巻きながら空中に舞い上げた。すると、湖底に巨大なドラゴノイドがいた。
どこの次元の存在なのか気になったが、すぐに近い力を感じたことを思い出した。絶界。スウィンの能力の感じに似ている。僕はすぐに叫んだ。
「あいつは絶界の存在だ。僕達が束になっても叶わないぞ」
全員はざわめいた。
「絶界の存在だとしても、敵。我々の和解交渉のためにも、法界、落ちた下界人のためにも倒すしかない」
長老がそう言った。僕も覚悟を決めた。全員は戦闘態勢に入った。
巨大ドラゴノイドはこうバリトンの声を響かせた。
「我はザイガス。次元の壁を崩壊させる事象の全てを止める為に来た」
「絶界の者の言うバランスの保護か」
ルードは吐き捨てるように言った。僕はレベル5に変化して爪を伸ばして、法界、混沌界連合軍と一斉に戦闘に入った。ザイガスはブレスを吐いた。一気に20人が負傷して落ちた。僕は背後に刹那、回りこんで爪を使った。しかし、傷1つつけることができない。エネルギー波は放つが、焦がすことさえできない。
この戦いはやはり無謀だと思った。ザイガスの腕が僕を捉えて湖底に叩きつけられた。10mめり込んで、そこで僕の意識が飛んだ。瞬間、あの冷たい意志が表に出た。すると、僕の姿は人間の姿に変化した。
しかし、能力はレベル5の比ではない。そのまま空を飛んで三白眼で睨む。
「皆、彼に力を注ぐんだ」
長老がそう叫ぶと、全員は僕に力を集めた。僕はレベル6になり、しかも大勢の力をもらった。エネルギー波を放つと、ザイガスは5m吹き飛んだ。これで少しは戦えるようになった。
現在の戦力でも、敵に勝てない。こちらの戦力増強に限界があるのなら、相手の戦力をそげばいい。
ザイガスの弱点をつくことにした。僕は手を前に出す。すると、次元の穴が開いて徐々にザイガスの力は減っていった。
「なんだ?」
「スウィンが用意していたんだよ。別次元に行く絶界のエネルギーを絶界に戻す機械をな」
次元の穴の先は、あのエネルギー移行装置であった。ザイガスの絶界のエネルギーは吸われて絶界に送られていく。これで彼の力は徐々に失われていった。そこで、こちらの力が有利になった。思い切りエネルギーを両手に溜めると、思い切り放った。力をすっかり吸われたザイガスは直撃してそのまま爆発して、光の粉となりエネルギー移行装置に吸われていった。
次元を閉じると振り返って、後は両者の和解条約をかわすだけになった。
元の意思である僕が表に出ようとしたが、冷たい意思は引っ込まなかった。そのまま、味方である術師達に視線を向ける。僕は心の中で抵抗するが、勝てなかった。暴走しそうになったとき、
長老が法術師の四天王とともに五芒星結界を張った。そして、この場に封印をされた。誰かが僕の意思を元に戻すことをただ、じっと待つしかなかった。その人物がすぐに現れることになる。
そう、あの下界から来た法術師である。
結界の中で留まる僕にあの涼が現れて、大きな剣を具現化して振るった。僕は傷1つつかなかったが、
空高く舞い上がった。結界のある中、レベル6の僕をここまで飛ばすとは、ただの怪力でもないだろう。
かなりの法力を持っているのだろう。空に上がった途端に、第二段が待っていた。
彼は剣を僕に向けて真空波を放った。そこで、僕は両腕で防いで、それを跳ね返した。さらに涼はそれを剣で打ち返す。もう1度防ごうとするが、法術師達の結界がもう1度発動して、僕は直撃して地面に激突した。
冷たい意思が気絶した内に、元の僕の意思は元に戻ろうとがんばった。表面に出ると、レベル6の状態が解除されて元の人間の姿になった。やはり、レベル6の姿は、あの意思でないと保てないらしい。彼らは僕を見て結界を解除した。
全てが終わったので、クリスタルタワーにて、鬼術師との和解会議が行われた。遣いの1人は鬼術師の王族の一族だった。ただ、かなり通り縁であり、貴族の端くれという感じである。遣いに出されるくらいなのだから。彼らの会議は数日も続けられた。僕はその間に、修行をしていた。クリスタルタワーの修行の間で、あの意思に支配されずにレベル6になれるように修行を始めた。しかし、ドラゴノイドまではなれるが、その後のさらに上の状態になることはできなかった。あの意思に支配されずに、どうやったらいいのか
コツが分からなかった。
会議が続く間に、あるコツを見出した。そう、ドラゴノイドから人間の姿でありながらドラゴノイドの
最上級の力を持つレベル6の姿になる方法。それは、危機的状況に追い込まれること。ダークドラゴンを放ち、そのターゲットを自分にした。これはかなり危険な賭けであった。魂を奪う影のドラゴンは僕に迫った。そこで、僕はレベル5の姿になる。いくらドラゴノイドになっても、鬼術のダークドラゴンにはかなわない。どうも、僕は法術より鬼術の方が強力で向いているらしい。ダークドラゴンは凄まじい速さで僕に迫った。
ダークドラゴンを倒すことは不可能。触ることはできず、ターゲットを滅するまで追ってくる。しかし、そのくらいの修行でないと、また、あの冷たい暴走した意思が表面に出てしまう。迫ってくるダークドラゴンに対して睨み、相反する力、法術のエネルギー波を放つ。一瞬、動きを止めることができたが、
すぐに追跡を開始した。プロミネンスブレスを吐くが、それも効かない。そこで、普通の攻撃では駄目だと悟った。次にこのドラゴンを吸収することを考えた。しかし、触ると魂が取られてしまう。
どうすれば、吸収すればいいか。法術でエネルギー吸収の力を使うしかない。しかし、ドラゴノイドでそのような能力はない。ドラゴノイドから進化した、あの姿になるしかない。あの意思を表に出さないように。ダークドラゴンが目の前に来たときに、その危機が僕を無意識にレベル6の姿にした。意識の戦いが始まった。
現在の状態は無意識。冷たい意思でも元の意思でもない。でも、ダークドラゴンを第6の姿で、両手を前にして吸収していった。すると、体中に力がみなぎり、僕の元の意思でもレベル6でも平気になった。これで僕は成長することができた。一方、クリスタルタワーでは、和解交渉はうまくいた。混沌界、法界の平和条約が制定された。僕は安心して下界に戻ることにした。
下界では、全ての神隠しの人々が戻ってきたそうだ。これも法界の評議会のおかげだろう。僕はこの能力を下界で使うことはなかった。しばらくの間だが。すぐに出番が来た。でも、それはまた次の話で。
続く
なかなか、リアリズムからかけ外れて日記物の中でも異質なものだと思います。
サイドストーリーというより、外伝という感じでしょうか。




