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「伊坂君、ゴールデンウィークはまだ予定ないって」と、楢崎に教えた。

「じゃあ、遊びに行こう!」

 小学校の同窓会は流石に諦めたらしい楢崎が提案した。

「私も行って良い……?」と、朋美ちゃんにしては珍しく、ためらいがちに言った。

 ためらうのももっともだ。伊坂君とは初対面なのだから。

 しかし、なんとなく、そこに対する緊張とは違うものを感じた。なにかしらの、決意のようなものを感じた。

 朋美ちゃんのポニーテールは、楢崎がいる方向の真逆を向いて、震えているようにも見えた。

「オッケー、四人で行こう」と、楢崎は応えた。


 その日の夜、朋美ちゃんからメールが届いた。

[沙世ちゃんって、伊坂君のことが好きなんだね]

 流石朋美ちゃん。はっきりとものを言う。

 私自身ですら、今朝まで気づいてなかったんだけど……。

[だって沙世ちゃん鈍感だもん]

 どうかな? 自覚はなかった。

[私が楢崎君を好きだってことにも気づいてないでしょ]

 ええええ! 驚きすぎて、数分間フリーズしてしまった。

[ゴールデンウィーク楽しみだね。ダブルデートってことになるのかな。おやすみなさい]

 頭が混乱して、その日は全然眠れなかった……。


 ダブルデート前夜も、全然眠れなかった。

 ここ数日、私の生活サイクルはむちゃくちゃだ。

 そして朝。やばい、遅刻だ、寝坊した!

 騒ぎ続ける胸の中とは裏腹に、朝の家はとても静かだった。不思議なくらいに。

 その静寂に、気持ちが落ち着かなくて「行ってきます」と言いそうになった。反抗期中だから言わない。危なかった。

 いつも通り黙って家を出る。その時、微かに、母の「行ってらっしゃい」が聞こえた。

 平常心、平常心……。

 とりあえず、みんな、遅刻ごめんなさい。

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