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「知り合いみっけ」

 話しかけられ、私は待合席から立ち上がった。

 小学生の頃から、地毛なのか茶色がかった髪色はそのまま、少しウェーブした癖っ毛もそのまま、特徴的である。襟にかからないくらいの長さで、清潔感を保っている。

 一目でわかった。伊坂駆、その人だ。

 小学生の頃と違うところは、背の高さと、高校の黒いの学ラン姿。そして、昔は終始柔らかだった表情は、今は少し固かった。

 あと、身長差のせいか、首元に目線が行ってしまい、少し首が伸びた? なんて。そこに覗く喉仏に、男性らしさを感じた。

 プラットホームの雑踏が、遠く離れていく。私たち二人だけ、いいや、私と小学生の伊坂君だけを残して、静かな傍観者と化した。

 隣の席で柔らかな笑顔で話しかけてくれる彼がいた。体育館のコートを走り回る彼がいた。

 伊坂君は、私の初恋の人だ。高校2年の春、私は初恋と再会した。

「電車の時間、変えたの?」

 私は素っ気ない風に言う。心臓はバクバクと脈打っていた。

 高校1年の時はプラットホームで会うことは1度もなかった。それが、2年の4月に突然のことだった。

 思い返してみると、中学の卒業式以来の再会ということになる。

「そう、時間変えたんだ。朝練がなくなったからね。あの、部活やめたからさ」

 自分の頬が一気に上気するのがわかった。そのことを気付かれないように、マフラーに顔をうずめた。マフラーに入れない髪が、たわんだ。

「じゃあ、これからは一緒だね」と、私はマフラー越しに言った。初恋の人と、これから毎日一緒に登校するのだ。

 伊坂君は何かを吹っ切ったように、少し固かった表情から一転させて、笑顔を見せた。

「おう、よろしく!」

 二人で乗る、急行電車が到着した。

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